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母父スペシャルウィークに起きた異変

  • 2013年09月27日(金) 12時00分
「母の父スペシャルウィーク」に異変が生じている。

 エピファネイアが昨年暮れのラジオNIKKEI杯2歳Sを勝ったのが、スペシャルウィークのブルードメアサイヤーとしての重賞初勝利だった。

 それまで中央では、2歳のオープン特別戦で3着に入った程度の馬しか出ておらず、地方でもジェネラルグラント(京浜盃、全日本2歳優駿2着)が出ていたぐらい。母の父として、キラリと光る成績を残していたわけではない。

 エピファネイアの活躍にしても、日米の両オークスを勝った母シーザリオの力であり、スペシャルウィークのブルードメアサイヤーとしての優秀さを証明するものではないとみていた。

 今夏、ピークトラムが新潟2歳Sで3着、9月に入ってマイネグレヴィルが札幌2歳Sで2着に入り、従来とはやや異なる展開を見せたが、そのまま消えていく馬も多い2歳の重賞である。とくに注目はしていなかった。しかし、これはその後に起こる大噴火の予兆だった。

 次々週、ユールシンギングがセントライト記念を勝って、母の父として初のGII勝ち。さらに翌週には、エピファネイア(神戸新聞杯)、ヴェルデグリーン(オールカマー)がダブルのGII勝ちを飾った。8月までGII勝ち馬が1頭もいなかったのに、9月の重賞でいきなり3頭も誕生したのである。

 しかも、ユールシンギングの母ジョリーノエルは条件馬、ヴェルデグリーンの母レディーダービーに至っては未勝利馬。名牝のシーザリオとは月とスッポンの差がある。そんな母からもGII勝ち馬が誕生したのだから、これはもうスペシャルウィークのブルードメアサイヤーとしての優秀さを、素直に認めるしかない。

 自身が競走時代に見せたスタミナと成長力を、母系からうまくサポートする力を持っているようだ。エピファネイアの菊花賞はもちろんのこと、名牝ブエナビスタの仔のデビューも楽しみになってきた。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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