スマートフォン版へ

音速の貴公子(サイレンススズカ)

  • 2013年12月02日(月) 12時00分
サイレンススズカ

サイレンススズカ



◆敵なしの傑出したスピード

 散華。仏教の言葉らしいが、むしろ私たちには、若くして戦死することの美化表現としてなじみ深い。

 競走馬にも散華がある。天性のあふれんばかりの資質を開花させ、さあこれから頂点をめざすというときに、レース中の事故で命を絶つ。戦死と同じある。たぐいまれなるスピードを披露したサイレンススズカも、そんな悲運の名馬の1頭だった。

 デビューは1997年2月。牡馬クラシック第1弾の皐月賞に間に合うか微妙なデビューだったが、調教では抜きん出た1番時計。未出走馬とは思えぬスピードに、記者たちが「遅れてきた大物」と騒ぎ始めていた。

 確かにデビュー戦は7馬身の圧勝。その能力が“最高級のベンツ”と確信した陣営は、2戦目に皐月賞トライアルの弥生賞を選んだ。ところが、発走前にゲートを出てしまい、大外枠へ。これに動揺したのか、いざゲートが開くと10馬身の大出遅れ。それでも追いついたが、最後は力尽きて8着に敗れた。

 キャリアの浅さを露呈したサイレンススズカは、ゲートの再試験と20日間の出場停止を命じられる。皐月賞出走は絶望となったが、それでも3戦目は2着に1秒1差の大楽勝。やはり能力が違っていた。続くプリンシパルSも勝利して、クラシック第2弾の日本ダービーに出走する。

 しかし騎手との折り合いを欠き、9着に敗退してしまう。スタミナの温存を意識して、行きたがるのを抑えたのが裏目に出てしまった。陣営はこの馬の傑出したスピードを生かすには、逃げに徹したほうがいいと判断。3歳の秋までは不完全燃焼の競馬が続いたが、4歳になるとこの逃げに磨きがかかり、破竹の快進撃が始まる。

名レースとして名高い98年毎日王冠

名レースとして名高い98年毎日王冠


 後続がついて行けず、みんなバテてしまうのだ。中山記念で初重賞勝ち。続く小倉大賞典、金鯱賞をレコードで連勝。7月の宝塚記念で5連勝を飾るとともに、初GI制覇を成し遂げた。秋は毎日王冠が始動。59キロの重い斤量を背負いながら強豪を退けて6連勝。もはや敵はどこにもいなくなった。

 そして迎えたのが1998年10月、運命の天皇賞・秋である。単勝1.2倍の断然人気。名手の武豊を背にスタートから快調に飛ばし、3コーナーの手前で早くも2番手に10馬身、そこから3番手までが5馬身、後続はまだその後ろ。テレビカメラを最大に引かねばならないほどの大逃走劇だった。

 だが、それこそがサイレンススズカの持ち味。スピードは増すばかりで、後続をさらに引き離そうとする。スタンドからやんやの喝采がわき起こり、そのままゴールまで突っ走るかに見えた。

 と、突然、サイレンススズカがスピードダウンし、競走を中止をした。左前脚の手根骨を粉砕骨折したのである。やがて3本脚で立ち、骨折した脚をぶらぶらさせる痛々しい姿が、場内テレビに映し出された。スタンドは一転して悲鳴と化した。すぐさま獣医師が駆けつけたが、手術の施しようがない重傷で、そのまま安楽死の処置が取られた。

 栄光のレースをほぼ手中に収めながら、音速の貴公子サイレンススズカは、かくして4歳の若さ、まだ志なかばで散華したのだった。それが天命であったかのように。(吉沢譲治)

◆レース詳細
1998年11月1日
第118回 天皇賞・秋(GI) 東京/芝左 2000m/天候:晴/芝:良

1着 オフサイドトラップ 牡8 58 柴田善臣 1:59.3
2着 ステイゴールド   牡5 58 蛯名正義 1.1/4
3着 サンライズフラッグ 牡5 58 安田康彦 3

中止 サイレンススズカ  牡5 58 武豊

◆競走馬のプロフィール
サイレンススズカ(牡5)
父:サンデーサイレンス
母:ワキア
騎 手:武豊
調教師:橋田満(栗東)
馬 主:永井啓弍
生産牧場:稲原牧場

50万DL突破!伝説の名馬に挑め!

50万DL突破!伝説の名馬に挑め!

50万DL突破!伝説の名馬に挑め!
 爽快!競馬パズルゲーム「パズルダービー」、50万DL突破!

「パズルダービー」はマッチ3形式(同じ色を3つ揃えるブロック消し)のパズルと競馬が融合し、伝説の名馬のシナリオに挑戦する競馬パズルゲームです。レースでは、ディープインパクトやオルフェーヴルなど名馬のシナリオを完全再現。競馬ファンなら感動再び、競馬を知らない方はパズルを楽しみながら、競馬の魅力を知っていただけます。

 登場する名馬は700頭以上。また、週末に開催される中央競馬とのリアル連動イベントや各種キャンペーンも満載です。この機会に是非お楽しみください!

「嗚呼、愛しき名馬たち〜netkeiba 名馬列伝〜」では、記録と記憶に残る伝説の名馬の足跡をプレイバック。名馬たちが繰り広げた伝説の数々が蘇ります!

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング