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TCK女王盃展望&ニューイヤーカップ回顧

  • 2014年01月21日(火) 18時00分


◆TCK女王盃展望
(1月22日 大井 サラ4歳以上 牝馬 別定 JpnIII 1800m)

「TCK女王盃」は、平成10年に新設された牝馬GIII。当初しばらく地方勢健闘の歴史もあったが(トミケンクイン、ヤマノリアル、ベラミロードなど優勝)、近年はずっとJRA主導で落ち着いてしまった。レマーズガール、グラッブユアハート、さらにラヴェリータ、息の長い活躍をみせる女傑級が次々に出現したこと。元より大井1800mはオーソドックス、紛れの生じにくいコースであること。各年多少のレベル差はあるものの、総じて名牝が代わる代わる時代を築いてきたレースというべきだろう。

 そして今年はメーデイアだ。昨年このレースを皮切りに、地方牝馬G=5戦5勝。大井、船橋、川崎、金沢、距離を変え、舞台を変えての快挙だけに絶大な価値があり、同時に丸1年を通じ心身両面、一度としてブレなかった逞しさも牝馬とすると驚異に近い。ふり返れば昨年はJRA1600万を勝ち切れない状況で、戦前の評価、人気などレッドクラウディアに大きく引き離されていた。しかし結果はひと捲りの圧勝劇(5馬身差)。そこから一挙に頂点に昇りつめ、女王に君臨し続けたのはもちろん、常に攻撃的な競馬で能力と個性をアピールした。引退レース、ラストランがささやかれる今回(社台グループ牝馬は6歳春で繁殖入りの規定)、どんなパフォーマンスを見せてくれるか。ある意味、地方競馬が育てたシンデレラガール。思えばホクトベガのときがそうだった。地方担当記者にとっても、どこか“同朋”のような感慨が浮かんだりする。

 (1)…おおむね順当。1人気[2-6-1-1]。意外に取りこぼしが多い事実はあるが、それでも連対率8割だから合格点以上がつく。2人気[6-0-1-3]、3人気[0-2-2-3]。逆転があった年は“馬単”が好配当。

 (2)…JRA優勢。JRA=8勝、2着9回、3着4回。過去10年でワンツースリーが3度ある。一矢報いた形が、22年ユキチャン(川崎)、24年ハルサンサン(船橋)。3着まで拾うと、船橋2頭、大井2頭、川崎1頭。

 (3)…4〜6歳。5歳=5勝、6歳=3勝、4歳=2勝。この時点で完成期を迎えた馬に強みがある。2着数も加えると6歳(5)、4歳(5)が優秀。前年クイーン賞勝ち馬は抜群の実績があり、過去10年[4-1-1-0]。

 (4)…好位差し。逃げ=1、先行=9、差し=9、追込=1。逃げ切りは18年グラッブユアハート1頭だけで、それも当時は内枠から押し出されるように先頭、1000m通過63秒1のスローになったもの。好位〜中団からの差しが主流。

 ※データ推奨馬
 ◎アクティビューティ…昨暮れクイーン賞優勝。今回2番人気が予想される。7歳の年齢だけが微妙だが、父バゴ(凱旋門賞馬)、典型的な奥手血統と思えば相殺できる。好位から息の長い脚が使えるタイプ。鞍上・吉田隼人騎手とのコンビ[3-3-0-3]のハイアベレージ。

       ☆       ☆

 ◎メーデイア      57浜中
 ○アクティビューティ  56吉田隼
 ▲ビタースウィート   55佐藤博
 △カイカヨソウ     56御神本
 △ワイルドフラッパー  55ルメール
 △レッドクラウディア  55森
 △カラフルデイズ    56福永
  アムールポエジー   55岩田
  オメガインベガス   54石崎駿

 前述通りメーデイアは不動の中心でいいだろう。牝馬G5戦5勝。確かにどれも強い内容だが、川崎(1600m)、金沢(1500m)は道中行き脚がつくまでやや苦労した感もあり、対して大井1800m「TCK女王盃」「レディスプレリュード」はまさしく威風堂々、持ち前のパワーが100%生きている。他馬より1〜2キロ重い別定57キロも、力関係、自身500キロ超の馬格を思えばとるに足らない。通算9勝中7勝を浜中騎手であげている。

 ごく素直にアクティビューティ本線。対メーデイア3戦して2、2、2着。しかしライバル不在の前走クイーン賞は完璧な勝ちっぷり(2馬身差)で、その前JBCレディス、レディスプレリュードの内容からも徐々に差は詰まってきた。パワーアップした末脚。馬単の“ウラ”がどれだけつくか。好配当(10倍以上)なら買ってみる手はあると思う。▲ビタースウィートは勢いと瞬発力に注目した。転入3連勝、いずれも鮮やかな差し切りで鬼脚の言葉がぴたりとハマる。南関東の水が合った典型例。JRA実績(1700〜1800m3勝)からは今回条件も悪くない。カイカヨソウも右回り1800mは条件ベスト。もう一段成長する4歳馬で、初コンビ・御神本騎手の手綱にも興味がわく。レッドクラウディアは期待ほど成長が感じられず、それなら新顔ワイルドフラッパーのスピード能力、万能型カラフルデイズの器用さに食指が動く。

◆ニューイヤーカップ回顧
(1月15日 サラ3歳 定量56キロ 南関東SIII 1600m良)

 △(1)ファイヤープリンス  1分43秒2
 ○(2)パンパカパーティ     首
 ◎(3)ドラゴンエアル      11/2
▲(4)ブラックヘブン       首
 △(5)エイシンホクトセイ     4
 ……………
 △(6)リュウノファイト
  (9)キョウエイアドニス
 △   ジュリエットレター   競走除外

  単6610円 馬複3660円 馬単15150円 3連複6360円 3連単103000円

 伏兵ファイヤープリンスがクラシックに名乗りを上げた。スタートのタイミングが合わず前半は最後方。しかし行き脚がついてからの勢いは素晴らしく、道中外々を捲りあげ4コーナー3番手、直線いったん先頭に立ったパンパカパーティを最後のひと伸びでねじ伏せた。「完璧な出遅れで、普通ならそこで終わり。凄いエンジンを持っている。いい馬に乗せてもらった。先生(小久保調教師)とスタッフに感謝します」(見沢譲治騎手)。同騎手は15年ぶりの重賞制覇(平成11年桜花賞・ワンダールナ)。ただしかつては浦和リーディング上位争いの常連で、近年若手の台頭もあり、単に騎乗馬に恵まれなかった結果だろう。通算1427勝、51歳、35年のキャリア。記者自身思い入れが深いジョッキーの一人でもある。

 ファイヤープリンスは、オンファイア×コマンダーインチーフの大型牡馬。今回を含め[3-3-0-6]は数字上確かに地味だが、直線一気の大井2勝など潜在能力と個性はデビュー時から示してきた。オンファイアは全兄ディープインパクト。まだ大物こそ出ていないが、ある意味リーズナブル(種付け料など)な種牡馬といえ、地方競馬でブレイクしそうなムードはある。「元々能力は高い馬。今日はハミ(矯正)を変えて、その効果が出たと思う。自分の型(末脚勝負)を持っているし、今日の勝ちっぷりなら今後の期待も大きいです」(小久保智調教師)。手駒豊富な同厩舎、さまざま厩舎戦略はありそうだが、この日の内容からはファイヤーが一歩前進。すでに大井適性をみせているぶん「京浜盃=3月12日」が次走有力。そこで距離1700m(外回り)をどうこなすか。

 パンパカパーティは首差2着。「体質に弱い面が残り万全にはもう一歩」(小久保師)のコメントがあり、実際パドックなどどこか活気に乏しくみえたが、いざゲートが開くと持ったまま2番手、能力とセンスはさすがという印象だった。スピード、持久力、勝負根性、すべてバランスよく備えたタイプ。父ティンバーカントリー、むろんまだまだ成長する。期待したドラゴンエアル3着。終始気合を入れながらの追走で全体に余裕がなかった。ゴール際100m、先着2頭の真ん中で追いづらくなるシーンもあり、広いコース、右回り(大井)ベターかもしれない。ブラックヘブンも初コースが響いたか後手後手に回るレースぶり。上がり3F40秒2はメンバー中第2位で、こちらも大井クラシック路線で改めて注目する。道営実績だけ走れなかったエイシンホクトセイは少々太目(4キロ増)に映る体つき。次走が文字通り正念場だ。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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