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【特別インタビュー】復活「騎手・柴田未崎」(1)―引退に追い込まれた現実の厳しさ

  • 2014年02月19日(水) 18時00分
柴田未崎騎手
「騎手・柴田未崎」が帰ってくる――。
 15年間の騎手人生に一度ピリオドを打った柴田未崎(36)が、今年3月1日付で再び騎手として復帰することになった。競争が激化する日本の騎手界に新たなうねりを起こすことができるか。その覚悟を聞いた。

(取材・構成/島田明宏)



◆“JRA初の双子騎手”脚光を浴びた若手時代

 柴田未崎は、1996年、福永祐一、和田竜二、細江純子らと同じ「花の12期生」のひとりとしてデビューした。兄の柴田大知とともに「JRA初の双子騎手」として注目され、その年12勝をマークした。

 今振り返ると、何となく騎手になってしまったという感じがします。家の近くの宇都宮育成牧場で小学校5年生から中学校3年生まで少年団に入って乗馬をやっていたんです。そこの先輩だった小林淳一さん(元騎手・現競馬学校教官)が競馬学校に受かったとき、騎手という仕事があることを知って、それで競馬学校を受けたんです。

 兄の大知も同じコースを進んだ。ノルディック複合の荻原健司・次晴兄弟もそうだったが、何か飛び抜けたものを持つ双子というのはいろいろな能力が拮抗するようだ。柴田兄弟はともに学業成績がトップクラスだったという。

 騎手を目指すと決めたとき、大知と相談したりはしませんでした。言葉に出さなくても考えていることは同じ、ということがよくあるんです。競馬学校に入ってから、教官や職員がどっちが兄か弟かわからないというので、帽子にAとBって書かれちゃって(笑)。入ったばかりのころは競馬のことをほとんど知らなかったので、厩舎で育った福永(祐一)とか高橋(亮)とか和田(竜二)とかに話を聞いて、いろいろ覚えました。

 デビューしたころは、どのような夢や目標を持ち、どんな騎手になりたいと思っていたのだろうか。

 あまり具体的には考えていませんでした。騎手になれたこと自体が嬉しかったですし、レースに乗るのも楽しかったですしね。どういうジョッキーになりたいというイメージも持っていなかったのですが、目標としたのは的場均さんです。ぼくは高木嘉夫厩舎に所属していて、(的場均さんは)高木厩舎の馬によく乗られていたんです。実績も素晴らしいですし、厩舎関係者に対する人当たりもいい人だったので、そういうところも見習いたいな、と。

 デビュー2年目は18勝、3年目は19勝とまずまずの成績だったが、減量が外れた4年目は11勝、5年目からは勝ち鞍がひと桁に落ち込んだ。

 減量があったから乗せてもらっていたのに、そんなに気にしていなかったというか、考え方が甘かったですね。減量がなくなって初めて、1kg軽い斤量で乗れたことのありがたみがわかりました。1kgの違いは大きいですよ。実際馬に乗っていて、1kg軽いと、追えばグーンと伸びますからね。

柴田未崎騎手

◆障害に逃げてしまった自分

 平地での勝ち鞍が年間1勝となった2003年から障害での騎乗を始め、翌04年に障害初勝利を挙げた。

 あのときは、自分のどこが悪かったのかを考えず、障害に逃げてしまったんです。障害なら乗せてもらえるだろう、と。どうしたらまた平地で乗せてもらえるかを考えればよかったのですが、そうはしなかった。減量がなくなって同じような感じになった先輩方も見ていましたしね。

 初めて障害に出たときは、怖くて怖くてしょうがなかったです(笑)。でも、飛越が上手い馬に乗ると面白いんですよ。思ったところから踏み切ってくれるから楽しいですし。

 05年以降は平地での勝ち鞍がなくなり、その状況が引退までつづいた。相当なつらさや苦しさがあったのではないか。

 ほとんど諦めていました。障害はまず乗り替わりがなく、一頭の馬を仕上げれば、ずっと乗せてもらうことができる。それが楽しさでもあり、やり甲斐でもありました。平地で未勝利の馬でも勝つチャンスがあるのが障害なので、そういう面白さもありましたね。

 09年には平地、障害ともに未勝利に終わり、11年3月限りで鞭を置いた。33歳だった。

 体のどこかを痛めたりしたわけではなく、乗ろうと思えばいくらでも乗ることはできました。ただ、このまま乗っていても、しがみついているみたいでカッコ悪いな、という思いがありました。それ以上に大きかったのは、あのタイミングで辞めないと、調教助手の給与体系が変わって、収入が2割減になってしまうことでした。誰にも相談することなく、妻に報告したのも、辞めることを決めてからでした。

 騎手を引退した彼は、美浦・斎藤誠厩舎の調教助手となった。

 15年間騎手をやってきたのに、知らないことが多すぎて、最初のうちはついていくのが大変でした。飼料のことにしても、ケアの仕方にしても、事務仕事にしても、足手まといになってしまった。調教助手として働いたことによって、どれだけ多くの人が、どれだけの時間と労力をかけて一頭の馬を育てているのかを肌で学ぶことができました。

(Part2へ・文中敬称略)

応援メッセージ募集

今回出演した柴田未崎騎手への応援メッセージを募集します。いただいたメッセージは、柴田未崎騎手ご本人へお届けします。皆さまからの温かいご声援をお待ちしています。

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