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ドバイWCをはじめ日本馬が出走するドバイワールドCナイト4競走の見どころ

  • 2014年03月26日(水) 12時00分
ドバイ


◆タペタ適性も高そうなブライトラインで勝負になりそうなゴドルフィンマイル

 いよいよドバイワールドCナイトの開催が、来週末に迫った。先週は、日本馬が出走しないサラブレッド4競走の見どころをお届けしたが、今週は日本馬が出走する4競走を展望していきたい。

 まずは、ブライトライン(牡5、父フジキセキ)が出走するゴドルフィンマイル(G2、AW1600m)。

 ここは、11年〜12年シーズン、12年〜13年シーズンと、2季連続で南アフリカの年度代表馬に選ばれたヴァラエティクラブ(牡5、父ヴァー)と、昨年に続くこのレース連覇を狙うソフトフォーリングレイン(牡4、父ナショナルアセンブリー)という、南アフリカ調教馬2頭が、レイティング的に抜けた存在となっている。

 ヴァラエティクラブは、ドバイ初戦となった2月13日のG3ファイアブレークS(AW1600m)をあっさりと白星で通過し、タペタ適性を証明。その直後には、本番は距離不向きを承知でドバイワールドCに向かう可能性を陣営が示唆したが、続くG3バージナハール(AW1600m)で2着に敗れると、冒険はせずに確勝を期して適距離のこちらに廻ることを決めたものだ。

 一方、スーパーサタデー(3月8日)のG3マハブアルシマール(AW1200m)では9着に大敗したのがソフトフォーリングレインだったが、ここは、休み明け、距離不足、大外枠と、敗因がはっきりしている。管理するのはドバイを知り尽くす伯楽マイク・ドゥコックだけに、本番にはきっちりと仕上げてくるはずだ。

 2強の牙城が堅牢に見えるが一方、3番手以下は団子状態だ。おそらくは、昨季のG3UAEオークス(AW1900m)勝ち馬で、前哨戦のG3バージナハールを快勝したシュルク(眼う4、父イルーシヴクオリティ)が3番手評価となろうが、この馬あたりなら、過去の実績から類推するにタペタ適性も高そうなブライトラインで充分勝負になるとみる。

◆数が揃っただけでなく質も高い日本勢に、おおいに勝機のあるドバイデューティフリー

 続いて、ジャスタウェイ(牡5、父ハーツクライ)、ロゴタイプ(牡4、父ローエングリン)、トウケイヘイロー(牡5、父ゴールドヘイロー)の3頭が参戦するG1ドバイデューティフリー(芝1800m)。数が揃っただけでなく質も高い日本勢に、おおいに勝機のあるレースだ。

 昨年秋から、それまでとは見違えるような爆発力を発揮するようになったジャスタウェイは、4歳暮れに有馬記念でディープインパクトを破り、5歳春にG1ドバイシーマクラシックを制した父ハーツクライそっくりの成長曲線を見せている。天皇賞・秋や中山記念のレースを再現出来れば、ここでも最有力候補となろう。

 ロゴタイプの父ローエングリンは、G2中山記念、G2マイラーズCをいずれも2度ずつ制しているが、残念ながらG1には手が届かなかった馬である。そのローエングリンのベストパフォーマンスと言えば、4歳時に挑んだG1ムーランドロンシャン賞(芝1600m)における2着、G1香港マイル(芝1600m)における3着というのが衆目の一致するところで、「海外に強い」遺伝子を受けついでいるのがロゴタイプである。

 3月29日にはG1ドバイワールドC(AW2000m)に出走予定で、有力馬の1頭に挙げられているアキードモフィード(牡5)と、暮れのG1香港C(芝2000m)で大接戦を演じたトウケイヘイローも、能力の高さとアウェイでの強さを既に実証済みだ。

 上位独占も狙える情勢にある日本勢にとって、要注意の馬が2頭いる。

 1頭は、スーパーサタデー(3月8日)に行なわれた前哨戦G1ジェベルハタ(芝1800m)を制したウェルキンゲトリクス(牡4、父シルヴァーノ)だ。祖国南アフリカで4戦し、G1グレイヴィル2000(芝2000m)を含む4連勝。ドバイでも、初戦となった2月13日のハンデ戦(芝1800m)を白星で通過すると、前哨戦のG1ジェベルハタを快勝。ジェベルハタで戦ったのはそれほど骨っぽい相手ではなかったが、負け知らずで来ているポテンシャルはおおいに不気味である。

 もう1頭は、ドバイワールドC参戦の予定を本番8日前になって突然変更し、こちらに廻ることになったザフーガ(牝5、父ダンシリ)だ。3月15日に英国にあるオールウェザートラックのグレートリーズで追い切られた時の動きが、陣営にとっては満足の行くものではなかったようで、主戦場である芝のG1を狙うことになったものだ。牡馬の一線級を撃破したG1愛チャンピオンS(芝10F)を含む、3つのG1を制している実力は相当なもので、この馬にマックスの能力を発揮されると、日本馬にとって非常に厄介な相手となりそうだ。

◆ジェンティルドンナがマジシャン以外に遅れをとる光景は想像しがたいドバイシーマクラシック

 続いて、ジェンティルドンナ(牝5、父ディープインパクト)とデニムアンドルビー(牝4、父ディープインパクト)という、牝馬2頭が挑むG1ドバイシーマクラシック(芝2410m)。

 昨年のこのレースでは、セントニコラスアビーから2.1/4馬身差の2着に敗れているジェンティルドンナ。終始力んだような走りをしていたのは、休み明けだったのに加え、ドバイワールドCデー独特の雰囲気に気持ちが過剰に高揚したゆえであろう。本番前にひと叩きされ、ドバイの雰囲気にも慣れているはずの今年は、少なくとも昨年以上の競馬をしてくれるはずだ。

 最大の敵は、セントニコラスアビーと同じく、愛国のA・オブライエンが送り込んで来るマジシャン(牡4、父ガリレオ)となろう。昨年春のG1愛2000ギニー(芝8F)や、昨年秋のG1BCターフ(芝12F)で見せた末脚には、剃刀と鉈の切れ味を合わせ持った凄みと破壊力があり、あの剛脚を繰り出されると、JC連覇のジェンティルドンナと言えども太刀打ちするのは容易なことではなさそうだ。

 ジェンティルドンナに騎乗するライアン・ムーアは、昨年のBCターフでマジシャンの手綱をとっていた男で、敵を知る名手がいかにして乗るかが、勝負の大きな分かれ目になりそうである。

 マジシャン以外の顔触れに、ジェンティルドンナが遅れをとる光景は想像しがたい。 

 一方、ここまでの実績を考えると、デニムアンドルビーに昨年のジェンティルドンナと同様の期待をかけるのは、いささか可哀そうな気がしないでもない。だが実際に昨秋のジャパンCで、ジェンティルドンナとハナ差の競馬をしているのがデニムアンドルビーで、あのパフォーマンスを再現出来れば、世界をあっと言わせる場面もありそうである。

◆8頭前後が争覇圏にいる、史上稀に見る大混戦のドバイワールドカップ

 最後に、ホッコータルマエ(牡5、父キングカメハメハ)とベルシャザール(牡6、父キングカメハメハ)という、ダート路線の精鋭2騎が挑むG1ドバイワールドC(AW2000m)。

 日本代表馬にとって最大のファクターとなるのが、どちらかと言えば芝との互換性が強いとされているメイダンの「タペタ」を、いかにハンドリングするかであろう。2頭の中では、3歳時まで芝を主戦場とし、オルフェーヴルの3着となったG1日本ダービー(芝2400m)を含む複数の好走例があるベルシャザールの方に、より高い適性がありそうだが、こればかりはやってみないと判らないというのが正直なところである。

 同様の不安は、英国のブックメーカーが催す前売りで上位人気に推されている、昨年のG1英ダービー勝ち馬ルーラーオヴザワールド(牡4、父ガリレオ)、香港が誇る2トップのミリタリーアタック(セン5、父オラトリオ)とアキードモフィード(牡5、父ドゥバウィー)、欧州10F路線の実力馬ムカードラム(牡5、父シャマーダル)らにもあり、走法や血統から「タペタは大丈夫であろう」との推測があって人気になっているが、走ってみたら「からきし下手だった」という可能性もゼロではない。

 そうした芝の実力馬たちと、既にタペタ適性を実際に証明している昨年の2着馬レッドカドー(セン8、父カドージェネロー)、前哨戦G1アルマクトゥームチャレンジ・ラウンド3(AW2000m)の1・2着馬プリンスビショップ(セン7、父ドゥバウィー)、サンショウィーズ(セン4、父アショウィーズ)らとの比較は、実は非常に困難である。

 現段階では筆者も、ルーラーオヴザワールド、ミリタリーアタックといった芝馬を上位に見ているが、日本馬2頭を含む8頭前後が争覇圏にいる、史上稀に見る大混戦と言えそうである。



[海外馬全頭ガイド]ドバイワールドカップ編
[海外馬全頭ガイド]シーマクラシック編
[海外馬全頭ガイド]デューティーフリー編
[海外馬全頭ガイド]ゴドルフィンマイル編

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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