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上昇傾向が見られている欧米供用種牡馬の2015年公示種付け料

  • 2014年12月03日(水) 12時00分


中でも突出した値上がりを見せたのが北米で供用されているタピット

 今年も残り1か月を切った今、2015年春に欧米で供用される主要な種牡馬たちの公示種付け料がほぼ出揃った。

 米国のリーマンショック、欧州の通貨危機など、経済的に多難な時代を経て、一般景気は徐々に回復しつつあると言われている中、種牡馬の種付け料にも上昇傾向が見られている。

 中でも突出した値上がりを見せたのが、北米のゲインズウェイファームで供用されているタピット(14歳、※年齢は全て2015年のもの、父プルピット)だ。2014年の段階で既に15万ドルと、最高クラスの種付け料が設定されていた馬だが、2015年はなんと30万ドル(約3563万ドル)に倍増されることになった。

 BCディスタフなどG1・4勝のアンタパブル(牝3)、ベルモントSなどG1・2勝のトナリスト(牡3)らを筆頭に、2014年も産駒が大活躍。11月23日の段階で収得賞金は1500万ドルを突破し、既に2007年にスマートストライクが作った北米種牡馬年間最多賞金記録を破ったのがタピットだ。当然のことながら、産駒の市場における売れ行きも絶好調で、今季ここまで北半球の1歳市場で購買された40頭のタピット産駒の平均価格が61万1125ドルという、凄まじい数字をマークしている。60万ドル以上で売れる公算が高いのであれば、30万ドルという種付け料も妥当ということか。ちなみにこの数字は、北米供用種牡馬としては09年にタピットの祖父エーピーインディに設定されて以来という高値である。

 北米ではこの他、14年も産駒のピースアンドウォーがG1アルシバイアデスを制した他、サマーフロントがG1シューメーカーマイル2着、G1エディーリードS2着などの活躍を見せたウォーフロント(13歳、父ダンジグ)が、前年と変わらぬ15万ドル(約1782万円)。

 ロクテがG1ガルフストリームパークターフS(セン4)を、コーフィークリーク(牝4)がG1ジャストアゲイムSを制するなど、今季も産駒が好調だったダーレーのメダグリアドロー(16歳、父エルプラド)が、2014年の10万ドルから2015年は12万5千ドル(約1485万円)に。

 スマートストライク(23歳、父ミスタープロスペクター)、キトゥンズジョイ(14歳、父エルプラド)、ディストテッドヒューモア(22歳、父フォーティナイナー)という、いずれもリーディングサイヤーになったことのある実績馬3頭が、それぞれ前年と同額の10万ドル(約1188万円)で横並びとなっている。

 2015年が初供用となる新種牡馬では、3歳時の2013年にG1トラヴァーズS、G1クラークHという2つのG1を制し、エクリプス賞3歳牡馬チャンピオンに選出されたウィルテイクチャージ(5歳、父アンブライドルズソング)が、3万ドル(約356万円)で最高価格となっている。

 また、本当の意味での新種牡馬ではないが、初供用となった2014年を愛国のクールモアスタッドで過ごし、2015年はケンタッキーのアシュフォードスタッドに移動し、北米では初供用となるデクラレーションオヴウォー(6歳、父ウォーフロント)に、4万ドル(約475万円)の種付け料が設定されている。

ヨーロッパで最も高い種付け料を設定されたのはドバウィーとフランケル

 ヨーロッパでは、ガリレオなど種付け料の公示がない馬を除けば、2015年に最も高い種付け料を設定されたのは、ダルハムホールスタッドのドバウィー(13歳、父ドバイミレニアム)と、ジャドモンドファームのフランケル(7歳、父ガリレオ)で、価格は12万5千ポンド(約2364万円)となっている。

 2014年も、ナイトオヴサンダー(牡3)がG1二千ギニーを制した他、現役に復帰したアルカジーム(牡6)がG1英チャンピオンSで僅差2着、更に香港調教馬ラッキーナイン(セン7)がシンガポールのG1クリスフライヤースプリントを制するなど、相変わらず産駒がグローバルな活躍を見せたドバウィー。前年の10万ポンドから12万ポンドに価格が上昇している。

 今季ここまで、ドバウィー産駒は欧州各地の1歳セールで10頭が購買されているが、平均価格はなんとギニー換算で65万5814ギニー(約1億3千万円)という常識破りの価格となっており、これを鑑みれば12万5千ポンドの種付け料はむしろ「控えめ」と言えるかもしれない。

 12万5千ポンドのもう1頭、フランケルの現役生活については、多くを語る必要はあるまい。初年度産駒が今年の春に誕生し、11月17日から愛国で行なわれたゴフス当歳市場で、父フランケル・母フィンスケールビオの牝馬が愛国当歳セール歴代最高額となる180万ユーロ(約2億6700万円)で購買されるなど、フランケルは既にマーケットにも大きなインパクトを残している。

 これに続くのが、フランケルと同じジャドモントで繋養されているダンシリ(19歳、父デインヒル)で、種付け料は10万ポンド(約1891万円)。2014年も、ミスフラン(牝3)がG1英千ギニー、ザフューグ(牝5)が牡馬を撃破してG1プリンスオヴウェールズSを制した他、フリントシャーがG1凱旋門賞で2着になるなどの活躍を見せたのを受け、前年の9万5千ポンドからわずかに値上げして10万ポンドの大台に乗ることになった。

 初年度産駒の3歳世代から、G1英オークスに加えてG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSを制したタグルーダ(牝3)、G1独ダービーを11馬身差で圧勝したシーザムーン(牡3)といった大物が出たシーザスターズ(9歳、父ケイプクロス)が、前年までの8万5千ユーロから2015年は12万5千ユーロ(約1855万円)に。カルティエ賞欧州年度代表馬のキングマン(牡3)、G1クイーンエリザベス2世Sなど英仏で3つのマイルG1を制したチャームスピリットらを輩出したインヴィンシブルスピリット(18歳、父グリーンデザート)が、前年の7万ユーロから10万ユーロ(約1481万円)に、それぞれ価格がアップしている。

 欧州供用の新種牡馬では、英国のジャドモントで種牡馬入りするキングマン(4歳、父インヴィンシブルスピリット)の5万5千ポンド(約1040万円)が最高額となった。2014年の成績6戦5勝。唯一の敗戦となったのが、馬群が内外に割れるというトリッキーな展開となったG1英二千ギニー(2着)で、勝利した4つのG1がいずれも完勝という成績から、種牡馬としても極めて大きな期待を寄せられている1頭だ。

 これに続くのが、母がG1・7勝馬ウイジャボードという良血馬で、英愛ダービーに加えてG1インターナショナルSを制したオーストラリア(4歳、父ガリレオ)の5万ユーロ(約742万円)となっている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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