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日本産馬は9頭登録、2017年英国ダービー第一次登録

  • 2015年12月16日(水) 12時00分


ミッキークイーンやハクサンムーンの弟も登録

 2017年の6月3日にエプソムで第238回行われるG1英国ダービー(芝12F10y)へ向けた第1次登録が12月2日に締め切られ、2014年に生まれたサラブレッド416頭が登録を済ませたことが明らかになった。

 初年度産駒がいよいよ来年デビューを迎えるフランケル産駒が24頭登録された他、英国クラシックの中でダービーだけ勝っていないエリザベス女王が、父ガリレオ・母メモリー(競走名コールトゥマインド)、父シャマーダル・母フリーヴァーズ(競走名フロンティスピース)の2頭を登録するなど、様々な話題に満ち溢れている中、日本産馬が9頭も登録されたことが関係者の注目を集めている。

 このうち5頭は、日本の競馬と馬産との関係を深めているシェイク・ファハドのカタール・レーシング所有馬で、5頭はいずれも2014年のJRHAセレクトセール当歳セッションにおける購買馬である。

 父ヴィクトワールピサ・母チリエージェの牡馬は、門別の白井牧場の生産馬。G2セントウルSをはじめ1200m以下の重賞を3勝した他、G1スプリンターズS2着、G1高松宮記念2着などの成績を残しているハクサンムーンの半弟にあたる。セールにおける購買価格は4600万円だった。

 父ディープインパクト・母ケイアイガーベラの牡馬も、同セールにおける6600万円での購買馬。こちらは新冠の隆栄牧場の生産馬で、レコードで制したG3プロキオンS(d1400m)を含めてダート1200m〜1400mの重賞を2勝したケイアイガーベラの初仔にあたる。

 父ディープインパクト・母ミュージカルウェイの牡馬は、G2ドラール賞(芝1950m)を含めて3つの重賞を制した他、牡馬に混ざってG1香港カップ(芝2000m)3着の成績があるミュージカルウェイの5番仔。そして、今年の2冠牝馬ミッキークイーンの全弟にあたる馬だが、この馬が購買された2014年7月の段階でミッキークイーンは未出走で、殿下が購買した後に牝系の価値が急上昇することになった馬である。余談になるが、殿下が2014年のセレクトセール1歳セッションにて最高価格の2億6千万円で購買した父ディープインパクト・母リッスンの牡馬も、購買後に1つ年上の全姉タッチングスピーチがG2ローズSに勝ちG1エリザベス女王杯で3着に入る出世を遂げている。ファハド殿下はなかなかに「持ってる」人物のようだ。本馬も2014年のJRHAセレクトセール当歳セッションに生産者のノーザンファームから上場され、セッション3番目の高値となる1億8千万円で購入されている。

 父キングカメハメハ・母ピースオブワールドの牡馬は、静内の千代田牧場の生産馬。G1阪神ジュベナイルフィリーズ(芝1600m)など2重賞を制して最優秀2歳牝馬に選出された馬で、本馬はその8番仔にあたる。セールにおける購買価格は4700万円だった。

 父ディープインパクト・母ルンバブギーの牡馬は、静内のタイヘイ牧場の生産馬。2歳オープンクラスのさざんかS(芝1400m)を含めて3勝を挙げたタイガーストーンの半弟で、近親にG1天皇賞・春の勝ち馬スズカマンボがいる牝系の出身。セールにおける購買価格は3500万円だった。

 父ディープインパクト・母ピーピングフォーンの牡馬を登録したのが、総勢で59頭と馬主別では最も多い数の1歳馬を登録した、アイルランドのクールモア・グループ(本馬の登録名義は、パートナーの一人であるマイケル・テイバー氏)である。母ピーピングフォーンもクールモア・グループの所有馬として現役生活を送り、G1愛オークス(芝12F)、G1プリティポリーS(芝10F)などを制し、欧州牝馬チャンピオンの座に就いた活躍馬である。2番仔からG2コヴェントリーS(芝6F)3着、G2ジュライS(芝6F)4着などの成績を残したサージョンホーキンスが出たピーピングフォーンを日本へ送り、ディープインパクトを交配されて生まれた日本産馬は、母の4番仔となる。本馬を管理することになるのは言うまでもなく、エイダン・オブライエン調教師である。

 残る3頭は、日本の馬主さんによる登録馬だ。

 父ルーラーシップ・母ダンスザクラシックスの牡馬は、アイルランドを拠点に走りG3バリーサックスS(芝10F)2着、G3チェスターヴァーズ(芝12F66y)3着などの成績を残したコールトゥバトルの半弟。祖母ヘッドインザクラウズがアスコットのG3プリンセスロイヤルS(芝12F)勝ち馬で、母の全兄にG1セントレジャー(芝14F132y)を制して欧州チャンピオンステイヤーに選出されたミレナリーがいて、母の父がサドラーズウェルズ、祖母の父がレインボウクエストという、ヨーロッパのクラシック血脈を色濃く保有する馬である。本馬は生産者のノーザンファームから2014年のJRHAセレクトセール当歳セッションに上場され、カレンの冠でお馴染みの馬主・鈴木隆司氏に7000万円で購買されている。

 父スクリーンヒーロー・母グローリサンディの牡馬、父アイルハヴアナザー・母タイキシャインの牡馬の2頭を登録したのが、ビッグレッドファームの岡田繁幸氏である。

 母グローリサンディの牡馬は、新冠の中本牧場の生産馬で、現役時代は地方競馬で53戦し14勝を挙げた他、G3エーデルワイス賞(d1200m)3着の成績を残した母の6番仔にあたる。1つ年上の全兄ウインオスカーが、今年6月に阪神の新馬(芝1600m)でデビュー勝ちし、5か月半の休養を挟んで出走した11月23日の秋名菊賞(500万下、芝1400m)でも2着となり、今週末のG1朝日杯FS(芝1600m)に登録している。父スクリーンヒーローは、G1・3勝のモーリスを筆頭に、今季既に4頭の重賞勝ち馬を出し、「今が旬」の種牡馬である。

 母タイキシャインの牡馬は、門別の山際辰夫さんの生産馬。祖母タイキトゥインクルがG3マーメイドS(芝2000m)の3着馬で、叔父にG3富士S(芝1600m)3着、G3東京新聞杯(芝1600m)3着などの成績を残したヒットジャポット、近親にG2マイラーズC(芝1600m)2着、G3ダービー卿CT(芝1600m)2着などの成績を挙げたタイキブライドルらがいる牝系を背景に持つ。父アイルハヴアナザーは2012年の北米3歳2冠馬で、現在は岡田氏のビッグレッドファームで供用され、今年の1歳が初年度産駒となる期待の新種牡馬である。

 いささか先の長い話となるが、2017年の英国ダービーを目指す日本産馬たちの戦いに注目していきたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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