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「ファシグティプトン・サラトガ1歳セール」の上場馬出揃う

  • 2016年07月06日(水) 12時00分


サラトガセールと言えば名馬・名種牡馬が購買されてきた北米最古の歴史を誇るセール

 北米最古の歴史を誇るとともに、最高の品揃えを誇る1歳馬市場「ファシグティプトン・サラトガ1歳セール(8月8日・9日、ニューヨーク州サラトガ)」の上場馬が出揃った。

 サラトガセールと言えば、古くは北米における20世紀最強馬の1頭マンノウォーを筆頭に、レイズアネイティヴ、ナタルマ、ホイストザフラッグ、ダンジグといった名馬・名種牡馬が購買されてきたセールだ。そして最近では、北米に37年ぶりに出現した史上12頭目の3冠馬アメリカンフェイローが、2013年の当セールに上場されていた馬だった。

 そして今年も、サラトガセール出身の2頭のスーパーホースが、北米競馬界を席巻している。

 1頭は、2014年の当セールにて40万ドル(当時のレートで約4085万円)で購買されたソングバード(牝3、父メダグリアドロー)である。

 ここまでの戦績、8戦8勝。G1BCジュヴェナイルフィリーズ(d8.5F)を含めて、そのうち4勝がG1という同馬。そのいずれもが大楽勝で、2着に付けた差が最も小さかった時でも3.3/4馬身という、北米3歳牝馬世代で図抜けた実力を持つ女傑である。

 そしてもう1頭が、2012年のサラトガセールにて14万ドル(当時のレートで約1100万円)というお手頃価格で購買されたテップイン(牝5、父バーンスタイン)である。

 昨年秋のG1BCマイル(芝8F)で、欧州から遠征してきた強豪を含めて、牡馬の一線級を完封。今年6月には英国遠征を敢行し、ロイヤルアスコットのG1クイーンアンS(芝8F)で、再び欧州の精鋭を撃破して優勝。5つのG1を含めて重賞10勝、昨年秋から7連勝中という、芝1マイル路線の世界最強馬がテップインである。

 出身馬の成績がこれだけ良ければ、世界中からバイヤーが集まるのは必定で、これを見越してこのセールへの上場を希望するコンサイナーが多く、今年のカタログには前年の209頭を大きく上回る252頭が記載されることになった。

 数が多いだけでなく、上場馬の質も極上である。

 G1ベルモントS(d12F)3着馬ラニの父でもある、種付け料30万ドルというリーディングサイヤー・タピットの産駒が、牡馬8頭、牝馬5頭の、総勢13頭がスタンバイ。

 中でも、G1プライオレスS勝ち馬ハースマイルの2番仔となる牝馬(上場番号49番)、G1クレメントLハーシュS勝ち馬レディオヴフィフティの初仔となる牡馬(上場番号72番)、G1CCAオークスなどG1・4勝の実績を誇る名牝プリンセスオヴシルマーの半弟(上場番号164番)、G1ヒューマナディスタフ勝ち馬オービーケイの初仔となる牡馬(上場番号208番)らは、購買者たちの熱い視線を浴びることになりそうだ。

 種牡馬で言えば、今年2歳を迎えた初年度産駒が驚異のペースで勝ち上がっている、「史上最強馬」フランケルの産駒が2頭上場されるのも話題だ。

 中でも上場番号148番の牡馬は、G1BCジュヴェナイルフィリーズに勝ち、全米2歳牝馬チャンピオンとなったシービーワイルドの4番仔という超良血馬で、果たしてマーケットがどのような評価を下すか、極めて興味深い1頭と言えよう。

 将来の繁殖牝馬としての価値を含めて、大きな金額が付くことが確実と見られている牝馬2頭にも、注目が集まっている。

 1頭は、上場番号61番の父ゴーストザッパー・母アイヴァナヴィナロットの牝馬だ。この馬、前述した北米最強3歳牝馬ソングバードの半妹にあたる馬なのだ。母アイヴァナヴィナロットもG2ボニーミスS勝ち馬で、父ゴーストザッパーは全米年度代表馬の肩書を持つ馬である。

 注目牝馬のもう1頭は、上場番号122番の、父ウォーフロント・母プラムプリティの牝馬である。母の名を見て、海外競馬ファンならば既に感嘆の声をあげているはずだ。現役時代、G1ケンタッキーオークスを含めて2つのG1を制したのが母プラムプリティで、同馬の2番仔となるのが、欧米両大陸でG1勝ち馬を出しているトップサイヤーのウォーフロントを交配されて生まれた上場番号122番なのだ。

 この他、G1ブルーグラスS勝ち馬ダンスウィズフェイトの半弟(父アンクルモー、上場番号30番)、G1クラシコラスオークス勝ち馬ノーチスデローザの8番仔となる牡馬(父スキャットダディ、上場番号109番)、G1オグデンフィップスSなどG1・2勝馬カヴォーティングの半弟(父ザファクター、上場番号126番)、今季西海岸でG1サンタアニアH、G1ゴールドCアットサンタアニタSを制している、古馬戦線の強豪メラトニンの半妹(父ランアウェイアンドハイド、上場番号196番)、G1アッシュランドS勝ち馬ロサリンドの全弟(父ブロークンヴァウ、上場番号248番)なども、高値がつきそうな候補馬たちである。

 円高で購買の好機を迎えている日本人購買者の動向も含めて、サラトガセールは例年以上に見逃せないマーケットとなりそうだ。

 なお来週のこのコラムで、北半球1歳馬サーキットの欧州開幕戦となる、アルカナ・ドーヴィル8月1歳セール(8月14日〜16日)の展望をお届けする予定だ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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