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絶対的存在不在で混戦模様/黒船賞

  • 2017年03月13日(月) 18時00分


歴戦の古豪や新興勢力が集結


 3月14日(火)の『第19回黒船賞(JpnIII・1400m)』は高知競馬場で行われる唯一のダートグレード競走。歴戦の古豪やここをきっかけにステップアップしたい新興勢力が集結。過去5年では2012年・13年・14年がセイクリムズン、2015年・16年がダノンレジェンドと連覇が続いていましたが、今年は絶対的な存在が不在。混戦が予想されます。

 今回はレース史上唯一、地方所属馬としてこのレースを制した1998年『第1回黒船賞』の覇者・リバーセキトバの思い出を振り返りましょう。

史上唯一、黒船賞を制した地方所属馬であるリバーセキトバ


 1990年生まれのリバーセキトバは父マルゼンスター、母サンコートクイーン、母父イングリッシュプリンス。1992年12月中山・芝1200m戦でデビューすると1996年6歳春(当時の表記7歳)までJRAで41戦5勝とタフに走り続け、同年5月に船橋・川島正行厩舎に移籍。移籍初戦をいきなり制すると2戦目に挑戦したかしわ記念でも3着に健闘。この年は盛岡・南部杯にも出走してホクトベガの6着など重賞戦線で活躍。

 船橋所属で17戦したあと1997年7月7歳(当時の表記8歳)で高知に移籍し、ここでも初戦を制すると2戦目も連勝。その後も好成績を続け、1998年、8歳(当時の表記9歳)の3月に四万十川特別を快勝。地元の代表馬としていよいよ3月24日『第1回黒船賞』を迎えます。

 高知競馬初のダートグレード競走。文字通り黒船のように襲来したJRA勢は根岸S(1996年)、ガーネットS(1997年)、群馬記念(1997年)を制したストーンステッパー。根岸S(1994年)、ダービー卿チャレンジトロフィー(1996年)、セントウルS(1996年)、さきたま杯(1997年)の勝ち馬で芝もダートもこなすフジノマッケンオー。皐月賞やダービーにも出走したドージマムテキ。12歳(当時の表記13歳)の古豪ミスタートウジン。さらに地方勢も全日本サラブレッドCを制した笠松のトミケンライデンなど第1回にふさわしい豪華メンバーが揃いました。そんな中、リバーセキトバは9番人気。

 レースはドージマムテキ、トミケンライデン、地元高知のマルカイッキュウらによる激しい先行争いが続き縦長の展開。3コーナーにさしかかった時、外から進出するリバーセキトバ。直線でも勢いは止まらず一気に先頭に立つとそのまま後続を引き離してゴール!2着フジノマッケンオーに付けた差は2馬身1/2。JRA勢を撃破し高知競馬に新しい歴史を刻んだリバーセキトバと北野真弘騎手。競馬場は大きな歓声に包まれました。あの日競馬場にいた人々にとって、その記憶は大切な宝物に違いありません。

 その後2002年、12歳まで現役を続け通算144戦18勝で引退。同年3月に土佐黒潮牧場に移動し余生を過ごすことになります。土佐黒潮牧場は高知競馬場から車で30分ほどの高知県須崎市にある海と山に囲まれた場所。「セキトバくん」と呼ばれ、牧場の方々の愛情に包まれ幸せに過ごしていたリバーセキトバ。2013年5月に23歳で他界するまで多くのファンが訪れていました。

2012年5月。土佐黒潮牧場の馬房にて


 第1回をリバーセキトバが制して以降、2着には大井のナショナルスパイ(2001年)、川崎のロッキーアピール(2006年、前年は3着)、3着には高知のメイショウタイカン(1999年)、笠松のレジェンドハンター(2001年)、高知のライジングハント(2002年)、兵庫のタッチダウンパス(2003年)、兵庫のホクザンフィールド(2004年)、愛知のキングスゾーン(2007年)、高知のフサイチバルドル(2009年)、兵庫のタガノジンガロ(2015年)が来ていて地方勢も活躍していますが勝ち星は無く、リバーセキトバの偉大さが際立ちます。今年も混戦ムードではありますが、やはりJRA勢が上位を占めそうです。

2009年3月。リバーセキトバと筆者



10歳馬・ドリームバレンチノに注目


 それでは今年のJRAからの出走馬5頭をご紹介しましょう。

 注目は10歳の古豪ドリームバレンチノ。黒船賞は2014年2着、2015年2着、2016年4着で今回4回目の挑戦。昨年9歳でダノンレジェンド、ノボバカラ、コーリンベリーらを相手に東京盃を制覇。12月の兵庫ゴールドトロフィーでも2着になるなど衰え知らず。スプリント王者ダノンレジェンドが引退し、今年のメンバーなら十分上位が狙える存在です。

昨年、東京盃を制した古豪・ドリームバレンチノ(2016年東京盃優勝時、撮影:高橋正和)


 昨年2着のニシケンモノノフ。続く京都・天王山S(OP)1着、プロキオンS2着、テレ玉杯オーバルスプリント4着、カペラS2着と安定して上位争いを演じ、12月の兵庫ゴールドトロフィーで待望の古馬重賞初制覇を果たしました。その後根岸S5着、フェブラリーS5着と馬券圏内に来ていませんがGIメンバー相手に掲示板確保は立派。当然今回は主役の1頭。

昨年の黒船賞2着馬ニシケンモノノフ(2016年すばるS優勝時)


 重賞での弔い合戦が続くゴールドアリュール産駒のグレイスフルリープ。昨年8月の佐賀・サマーチャンピオンを制して重賞ウイナーの仲間入り。前走・根岸S9着は気になりますが、ゴールドアリュール産駒のパワーがここも炸裂するでしょうか?

ゴールドアリュール産駒のグレイスフルリープ(2016年ポラリスS優勝時)


 キングズガードは昨年1000万下から準オープン、栗東S(OP)まで3連勝。重賞初挑戦のプロキオンSでノボバカラの3着となり、エニフS(OP)1着。グリーンチャンネルC(OP)でカフジテイクの2着、武蔵野S4着、根岸S4着。フェブラリーSは11着に敗れましたが、初めての地方競馬参戦でさらなる飛躍を目指します。

オープン特別を2勝しているキングズガード(2016年エニフS優勝時)


 最後に紹介するのは勢いのある5歳馬ブラゾンドゥリス。昨年は着実にクラスを上げてオープン入り。重賞初挑戦だった武蔵野Sは12着でしたが、その後オープン戦で2着、3着、2着。2月の前走・バレンタインSでついにオープン勝ち。父ノボジャックは2001年と2003年の黒船賞勝ち馬。親子制覇を目指します。

バレンタインSを制してここに臨むブラゾンドゥリス(2017年バレンタインS優勝時、撮影:下野雄規)



 地方勢から注目はトウケイタイガー。昨年のNAR年度代表馬ソルテの全弟という同馬は昨年秋に園田競馬に移籍後、5戦4勝。前走の園田ウインターCでは2着のドリームコンサートに5馬身差をつける圧勝で重賞初制覇と勢いに乗っています。昨年ダートグレード競走を2勝した川原正一騎手騎乗なのも心強く、JRA勢に立ち向かいます。

 4回目の挑戦のドリームバレンチノ。昨年2着の雪辱を果たしたいニシケンモノノフ。そこに黒船賞初参戦のメンバーが加わってどんなレースになるのか?春のダート短距離戦線を占う意味でもぜひ『第19回黒船賞』にご注目ください!

※次回の更新は3月14日(火)18時。船橋で行われる「ダイオライト記念」のコラムをお届けします。



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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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