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【フトシのお湯レポ(最終回)】小牧騎手&高倉騎手が語る『逃げの極意、追い込みの極意』

  • 2017年04月25日(火) 18時01分
小牧太

「フトシのお湯レポ」もついに最終回。相変わらず競馬談義を繰り広げる二人ですが…


「フトシのお湯レポ」もついに最終回。美味しい料理とお酒を前に、相変わらず競馬談義を繰り広げる二人ですが、小牧騎手が強かに酔う前に、『逃げの極意、追い込みの極意』というマジメなテーマをぶつけてみました。まだまだ続く年の差対談、ファンには知りえない貴重なエピソードも満載です!
(取材・文/不破由妃子)


小牧さんの隣の枠は本当に嫌です(苦笑)

──最近、ファンのあいだでは、小牧さんは逃げ、高倉くんは追い込みのイメージが強いと思いますが、それぞれに極意があれば教えてください。

高倉 極意……ないっす(笑)。展開と、あとは馬がどれだけ走ってくれるか。僕はリズムを守って信じて乗っているだけです。最初から気張って「追い込んでやるぞー!」とは思ってませんからね。

小牧 でも、シンザン記念のキョウヘイは、わざとスタートを遅らせたんやろ?

高倉 ああ、そうです、そうです。未勝利戦は好位からの競馬で勝ったんですけど、小倉2歳S(4着)はペースが速くてついていけなくて。でも、そのときにすごくいい脚を使ってくれたんですよね。次の万両賞では、スタートが良かったので前に行ったら全然ダメで(8着)、次の千両賞の前に「先生、控えていったほうがいいかもしれません」とお話させてもらって。それで実際、後方からの競馬で2着にきたんです。だから、シンザン記念だけでいえば、決め撃ちしたようなところはありますね。

──もちろん一概には言えませんが、高倉くんはどちらかというと、ソロッとスタートを出すことが多いですよね。

高倉 そうかもしれません。

小牧 だから最後に“ズドン!”とくるんや。

高倉 極意とまではいいませんけど、終いの脚を生かしたほうがいいなと思う馬の場合は、ソロッと出して死んだふり作戦をするかも。それでくるかこないかは展開と馬の力次第ですけどね。

──では続いて、小牧さんの逃げの極意を。今年は例年にも増してスタートが決まっているような気がします。

小牧 そうやね。スタートは、馬ときちんとコンタクトが取れていることが大事やから、返し馬のあとに、あえて馬を促してバックさせたりする。

高倉 僕もそれはよくやります。ただ、僕の場合はスタートを見据えてというより、掛かる馬を一度下げることが多いですけど。

小牧 そういう意味合いもあるけど、俺が馬をバックさせるのは、ゲートのなかでトモを踏ん張れるようにするため。馬って前に前に行こうとするやろ? でも、スタートはやっぱりトモが大事。馬の重心がトモにないと、絶対にいいスタートは切れへん。

高倉 なるほど。あとは小牧さんの場合、ゲートを出た瞬間、叫ぶじゃないですか。あれも逃げの極意だったり(笑)。

小牧 「よっしゃ、出たぁー!」(笑)。ホンマは「もうたまらん! うれしい!」まで言いたい(笑)。そこまで言ったら、誰も競ってこうへんやろ?

小牧太

小牧「ホンマは『もうたまらん! うれしい!』まで言いたい(笑)」


高倉 いや、それでも僕は行きますよ。ただ、それ以前に絶対に笑っちゃう(笑)。それでみんなが引いてくれるんだったら、僕も「出たわー!」とか言ってみようかな。

小牧 いやいや、誰も競ってこうへんていうのは冗談で、俺は別に威嚇してるわけやないで。子供の頃、ずっと剣道をやっていたから、気合いを入れる場面ではついつい声が出てしまうねん。

高倉 スタートから叫んでいるのは小牧さんくらいですからね。道中でも、ミルコか小牧さんか、みたいな(笑)。

小牧 そうそう。俺とミルコでいつも張り合ってんで。レース後、「コマキ、ゲンキネ」って言ってくるから、「アンタのほうが元気やん」て(笑)。まぁあんまり叫ぶと、ホンマに威嚇行為とみなされてしまうから気を付かなアカンねんけど。その点、高倉は静かやな。

高倉 僕はあんまり声は出しませんね。そういえば、小牧さんは出遅れたときも叫びますよね(笑)。

小牧 「あっ! 出遅れた!」

高倉 そうそう(笑)。その声が聞こえてくると、ついつい確認しちゃいますもん。だから、小牧さんの隣は本当に嫌です(苦笑)。僕が集中していると、「おい、緊張してんのか?」とか話しかけてくるし…。僕を出遅れさせようとしているとしか思えない!

小牧 違う、違う! 話しかけやすいヤツが隣にいると、ついつい喋りたくなってしまうねん。

──そういうことも含めて、小牧さんは本当に唯一無二の存在ですよね。このまま5年、10年、乗り続けてほしい!

小牧 10年後といったら60歳か。さすがに60歳までは絶対に乗ってないと思うわ。そうやなぁ、引退したら高倉のエージェントでもやるかな。敏腕やで!

高倉 いいっすねぇ。ぜひお願いします!

小牧太

高倉「いいっすねぇ。ぜひお願いします!」


小牧 前々から言うてるけど、俺は50歳までジョッキーを続けることが夢やってん。その夢が今年の9月に叶うわけやから、それからは夢の向こう側にいくわけやん。だから、トコトンまで自分をいじめようかなと思ってる。極限まで追い込んで、もう一切の悔いが残らんようにね。たぶん、今俺がやっていることは、高倉にも真似できへんと思うわ。

小牧太

小牧「極限まで追い込んで、もう一切の悔いが残らんようにね」


高倉 何度か一緒にホットヨガに行きましたけど、しんどくて続けられませんでしたもん。小牧さんが通ってるクラスって、けっこうランクが上ですよね。まずポーズができない(苦笑)。

小牧 俺ね、今そのホットヨガに週4回は行ってるからね。減量があるおかげやねんけど、今、2人のトレーナーに見てもらっていて、そのほかにジムで泳いでホットヨガに行って、週末は馬場を2周走って。それくらいやって、一生懸命お前らに追いつこうとしてるねん。高倉はトレーニングなんてようせんやろ?

高倉 してますよ! でも週に1回くらいです…(苦笑)。福永さんと同じトレーナーにお願いしていて、体幹トレーニングをしてます。昔はもっとしてたんですけどね。減量をする必要がないし、大きなケガをしたことがないので、そこまでトレーニングの必要性を感じていないというか。

──今でも十分ムキムキですものね!

高倉 昔はもっとムキムキでしたよ。1、2年目はそれこそ川須と二人で、暇さえあればトレーニングをしてましたから。ただ、だんだんやればいいっていうものじゃないなと思ってきて、今は必要性に応じてやってます。

小牧 高倉や川須と同じレベルの体になりたいから俺は頑張っているのに(苦笑)。でもまぁ、若いうちはそうかもしれん。実際に俺も、園田にいたころは調教の頭数が多いのもあって、馬に乗るだけでキープできていたし。今はとにかく、お前らに負けたくないねん。気持ちでは俺のほうが勝ってるで。

高倉 そんなことないですよ! 僕は内に秘めているだけです。

小牧 俺はやっぱり、もう一度GIを勝ちたいなぁ。高倉もGI勝ちたいやろ?

高倉 それはもちろんです!

小牧太

小牧「高倉もGI勝ちたいやろ?」高倉「それはもちろんです!」


小牧 ジョッキーにとっては、GIを勝つことが夢やもんな。もう一度勝てたら、それこそキッパリと「辞めます!」って言うかもしれん。

高倉 その気持ち、わかります。

小牧 なに言うてんねん。お前、まだ26歳やろ?

高倉 いやいや、僕にもそのくらいの気持ちがあるということですよ。それくらいGIを勝ちたいです!
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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