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ネオリアリズムら遠征馬3頭と香港馬5頭の対決、QE2世C展望

  • 2017年04月26日(水) 12時00分


◆ワーザーが有力も、付け入る隙はある

 第43回クイーンエリザベス2世C(芝2000m)の発走が、今週(日曜日)に迫っている。今年のレースは、日本から参戦するネオリアリズム(牡6、父ネオユニヴァース)をはじめとした3頭の遠征馬を、香港馬5頭が迎え撃つ構図となった。

 4.1/2馬身差で制した昨年に続くこのレース連覇を狙うワーザー(セン5、父タヴィストック)が、レイティングの面でも2番手以下との間には5ポンドもの開きがあり、1頭抜けた存在となっている。昨年は、スタミナに長けたこの馬にお誂え向きの馬場(Yielding)になったこともあったが、パンパンの良馬場でも、他馬との間には2馬身以上の差があると見る。

 今季の同馬は、シーズン開幕直前にラチにぶつかるアクシデントがあって、これに端を発して右後肢の繋靭帯を傷め、シーズンの前半を休養。1月30日に戦線に戻って、ここが4戦目だから、シーズン終盤を迎えてなお、馬がフレッシュである。初戦のG1スチュワーズC(芝1600m)こそ6着に敗れたが、2戦目のG1香港ゴールドC(芝2000m)をきっちりと勝って3度目のG1制覇を果たしている。本番前の試走であることが「見え見え」だった前走G2チェアマンズトロフィー(芝1600m)の4着は、度外視してよいはずだ。

 従って、本命はこの馬で仕方がないと思う。では、他の馬には付け入る隙がないか、と問われれば、そんなことないというのが、現段階における筆者の感触である。

 根拠の1つは、前々走のG1香港ゴールドCにある。勝つには勝ったが、2着ブレージングスピードとは短頭差の接戦だった。故障明け2戦目だったから、致し方のない部分もあったが、この段階では、本来の姿にはまだ戻り切っていないという印象を持った。勝ち馬に3馬身及ばなかった前走も、もう少し接戦になってよかったはず。名将J・ムーアが、前走から3週間でピークに持ってくる可能性はおおいにあるし、あるいは、90%の出来でも勝つかもしれない。この原稿が皆様の目に触れる頃、筆者は現地に向かっているので、最終判断は馬を見てから決めたいと思うが、ライバルにも付け入る余地ありという前提で、ここから先を進めたいと思う。

 レイティング2位のシークレットウェポンから、7位のディクトンまでの6頭は、4ポンドのギャップの中にひしめき合う混戦となっている。昨年暮れのG1香港カップ(芝2000m)で、モーリスから3馬身差の2着となっているシークレットウェポン(セン7、父ショワジール)が、レイティング的には2番目となる。あのレースを再現出来れば、ここも好勝負が可能だろう。

 香港勢ではもう1頭、4歳世代のパキスタンスター(セン4、父シャマーダル)にも魅力を感じる。強烈な決め手を持った馬で、前々走の香港クラシックカップ(芝1800m)、でも、前走の香港ダービー(芝2000m)でも、メンバー中で最速の上がりを使って2着となっている。ただし、過去10年で地元の4歳馬による優勝は、11年のアンビシャスドラゴン、14年のデザインズオンローム、16年のワーザーと3度あるが、いずれも香港ダービーを勝っての参戦で、勝ちはぐったこの馬では少し足りない可能性はある。そして、出走メンバーを見渡すと、どう見てもこの馬向きの流れにはなりそうもないのである。

 では、誰が逃げて、どんな展開になるのかと言えば、過去において上の方のクラスのレースを逃げて勝ったことのある馬は、昨年8月のG2札幌記念(芝2000m)を逃げ切ったネオリアリズムの、1頭しかいないのである。そのネオリアリズムとて、逃げたのはデビュー以来その一戦だけで、典型的な逃げ馬では決してない。

 すなわち、テンからガンガン流れる展開になる可能性はほとんどなく、そうなると、好位で流れに乗ることが出来、しっかりとした末脚を繰り出せるネオリアリズムは、展開的にも浮上する1頭である。もちろん、この馬が逃げるケースもおおいにありそうだが、そのあたりは、手綱をとるマジック・マンの手腕に委ねるしかなさそうだ。

 フランスから参戦のディクトン(牡4、父ロウマン)は、G3勝ちまでの実績しかないが、昨年6月のG1仏ダービー(芝2100m)で、2016年の欧州最強馬アルマンゾルから3.1/4馬身差の3着に入っている。仮にアルマンゾルがこの顔触れに入れば、3馬身程度は優に抜け出すはずで、であるならば、ディクトンが仏ダービーのパフォーマンスを再現して、争覇圏に食い込んでもおかしくはない。

 同様の「机上の空論」は、オーストラリアから参戦のザユナイテッドステーツ(牡7、父ガリレオ)にも当てはまる。前走G1クイーンエリザベスS(芝2000m)が、芝の現役世界最強馬ウィンクスから6.1/4馬身差の4着で、仮にウィンクスがここにいれば6馬身差で勝っておかしくない。そうであるならばザユナイテッドステーツがここで上位争いをしても不思議ではないのである。

 27日に決まる枠順なども勘案した上で出す最終的な結論は、レース当日のネットケイバで発表させていただくので、そちらをご参照いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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