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昨年に続き今年も…移籍初戦の中央出身馬による南関クラシック奪取

  • 2017年05月29日(月) 18時01分
 中央競馬と地方競馬の競争力格差は、昨日今日に始まった問題ではない。にもかかわらず、地方側に関心を寄せる人々の間で、いわく言い難い反応を呼ぶ結果が、大井で昨年、今年と相次いで出た。昨年6月8日の第62回東京ダービー(2000m)と今年5月10日に行われた第62回羽田盃(1800m)である。両レースは南関東の3歳2冠だが、昨年の東京ダービーはバルダッサーレ、今年の羽田盃はキャプテンキングと、移籍初戦の中央出身馬が「勝ってしまった」のである。

教えてノモケン

▲昨年の東京ダービーを制したバルダッサーレ (撮影:高橋正和)


教えてノモケン

▲今年の羽田盃を制したキャプテンキング (撮影:高橋正和)


 羽田盃は1着賞金3500万円で、中央のユニコーンSなどと同額。東京ダービーは中央馬の出走できないレースとしては全国最高賞金で、中央のGIIIより概ね高い。規模や集客力の面で地方を代表する南関東の看板レースが、中央出身馬に簡単に席巻される現実は、ダートグレードの結果を見慣れた人にも受け入れ難いのだろう。

看板レース 移籍馬が席巻


 昨年のバルダッサーレは、中央の芝で10戦して勝てず(最高で3着)、ダートに矛先を向けると3月下旬に初勝利をあげ、500万条件も2戦目で脱出。2勝目は4月末で、馬主(伊達敏明氏)は地方の馬主でもあるため、大井の中道啓二厩舎に移籍。初戦の東京ダービーを7馬身差で圧勝したのだ。その後は1度も勝てていない。移籍2戦目のジャパンダートダービーで地方馬最先着の4着に入ったが、勝った中央のキョウエイギアとは1秒3差。昨秋からは地方馬限定重賞で2、4、3着。今年に入ってからは出走していない。

「追い打ち」(?)をかけたのが今年の羽田盃のキャプテンキング。5戦目で未勝利を脱出した後、2着1回を挟んで500万条件も通過し、2月にヒヤシンスSで5着。後にUAEダービー(GII)で2着と惜敗したエピカリスと0秒5差だから、中央に残っても不思議はなかったが、こちらは昨年のバルダッサーレより早い3月1日に移籍し、初戦の羽田盃は中央在籍時とは一転して逃げ戦法。南関東で重賞連勝中で2番人気に推されたヒガシウィルウィンの追撃を抑えて優勝した。

 この2戦が地方の関係者、特に厩舎人にとって痛いのは、「中央2勝馬>南関東クラシック」という図式が確認された点にある。ひとくちに中央2勝馬といっても、2勝目をあげた際の相手関係次第で雲泥の差がある。バルダッサーレが2勝目をあげた昨年4月30日の出走馬のその後を見ると、勝ち上がったのは4頭で、1600万条件に昇格した馬はゼロ。特に強い相手とは言い難い。面白いのは当時最下位16着だったベルゼブブで、その後の2戦も大敗した後、浦和に移籍。9月の戸塚記念(川崎)でバルダッサーレを3馬身差で抑えて逃げ切っている。あくまでも3歳春時点での比較だが、今年のキャプテンキングはバルダッサーレよりは上の部類に属し、羽田盃で1番人気に推されたのは当然と言えた。

手薄な番組が移籍の要因に


 中央2勝馬が賞金水準の高い南関東を目指す理由は、中央側の3歳ダート路線の番組の手薄さにある。重賞は6月のユニコーンSまでなく、オープン特別はヒヤシンスS、昇竜S、伏竜S、端午S、鳳雛S、青竜Sの6戦だけ。一方で 500万条件のダート戦は毎週のように行われるため、2勝馬の数が増えていく。そのため、ユニコーンSは毎年、抽選漏れが続出し、漏れた馬は直前まで1600万条件や、果てはオープンに属していた古馬と対戦する。ならば、相手関係が手薄な割に賞金の高い南関東に向かうのは、ごく自然な流れである。

 この問題は2010年のマカニビスティーの中央再転入を巡る一件で注目を集めた。矢作芳人厩舎所属だった同馬は3歳の10年1月に2勝目を挙げ、ヒヤシンスSでも5着に入った後、大井の松浦備厩舎に転入。特別戦を勝って羽田盃は2着と惜敗したが、東京ダービーは戸崎圭太を背に優勝。この結果、「転出先で2勝以上」という当時の中央再転入条件を満たし、矢作厩舎に戻ったが、目標のジャパンダートダービー(JDD)出走が、「中央再転入馬は最低でも1戦しないと、交流競走に出走できない」とする大井側の内規に抵触し、不可能となった。大井のこうした内規には意図のわかりにくいものが少なくないが、内輪の論理が優先したことは確かである。

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1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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