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非サンデーサイレンス系種牡馬の活躍(村本浩平)

  • 2017年10月24日(火) 18時00分


◆重馬場も苦にしなかったパワーは「武器」になる

 前回のコラム(生産馬を仕上げる社台グループの技術とノウハウ)で書かせてもらったディアドラの初重賞制覇と、3歳世代の活躍によっても証明されたノーザンファーム早来の牝馬育成厩舎の躍進だが、その後、ディアドラは見事に秋華賞を優勝。管理をしていた佐藤厩舎は初重賞制覇から、一気に初GI制覇の喜びを味わうことになった。

 佐藤洋輔厩舎長とはレースの後で話す機会があったのだが、育成厩舎のスタッフや牝馬厩舎を束ねる日下和博調教主任だけでなく、「ディアドラに関係したみんなとのチーム力があったからこそ、秋華賞を勝てたのだと思います」と管理をする橋田厩舎、そして、中間の調整を行ってきたノーザンファームしがらきスタッフへの感謝も語っていたのが印象的だった。

その佐藤厩舎長は、「ディアドラのように大きなタイトルを勝てる馬を送り出せたことで、更にこの活躍に続く馬を送り出さなければとの思いが強くなりました」とも話していたが、その言葉は来年デビューを迎える2歳馬たちが体現してくれるに違いない。

 その佐藤厩舎長とはディアドラの父であり、これが産駒初のGI勝ちとなったハービンジャーについても話をする機会があった。ディアドラ自身は2歳7月のデビューから、この秋華賞までの14戦をほぼ休み無く戦ってきたように、牝馬とは思えないほどのタフさを持った馬でもあるが、育成調教を行ってきた頃から健康優良児であり、何よりも走りや気持ちにも「安定感」があったと話す。

 2歳馬の取材においては「軽さ」、もしくは「柔らかさ」などの言葉を用いて、その馬の未来を表現することがある。ただ、ディアドラに用いられた「安定感」という言葉は、スタミナ色が強いか、もしくはダートも苦にしないようなパワータイプの競走馬に用いられることが多い。

 しかし、育成スタッフから聞くハービンジャー産駒の印象としては「安定感」、もしくは「しっかり」といった言葉が用いられることが多いように思える。これは札幌や函館といった洋芝、もしくは坂のある中山といったパワーを必要とされる条件で、産駒が活躍していることと決して無縁では無いのだろう。

 現在のリーディングサイアーは、芝のグレードレースにおいて圧倒的な成績を残しているサンデーサイレンス系種牡馬によって、ほぼ寡占されている。しかし、このカテゴリーで真っ向から渡り合っている代表的な種牡馬がキングカメハメハ、それに続くのがハービンジャーである。

「軽さ」や「柔らかさ」を武器に、芝のレースでは驚異的な切れを見せるサンデーサイレンス系種牡馬の産駒たちであるが、ハービンジャーの産駒たちも「安定感」が確かな末脚へと繋がっている印象を受ける。この秋華賞では3着にもハービンジャー産駒のモズカッチャンが入っているが、サンデーサイレンス系種牡馬、特にディープインパクト産駒の好走が目立っていた秋華賞において、ハービンジャー産駒の2頭が複勝圏内に入ったことが、今後の競馬界にどんな流れをもたらしていくのだろうか。それは来年以降のPOGにも深く関係していきそうな気がしてくる。

 そんなことを書いていたら菊花賞ではルーラーシップ産駒のキセキが、父に初重賞と初GI制覇を同時に授ける勝利をあげた。ルーラーシップもハービンジャーと同じように、産駒たちは芝の中長距離を中心としたレース選択をされているが、ここに割って入ってくるのが、やはりサンデーサイレンス系種牡馬の産駒たち。

 超が付く重馬場の中で行われた今年の菊花賞は、勝ち時計や上がり3ハロンのタイムが示すように、これまでの菊花賞とはまた違ったレースと言える。それでもキセキがこのレースで証明したスタミナと、重馬場も苦にしなかったパワーは、サンデーサイレンス系種牡馬にはあまり見られない「武器」でもある。

 ハービンジャーはディアドラが3世代目の産駒で、ルーラーシップ産駒はキセキの世代が初年度産駒。2頭共に今後、更に育成や調教、何よりも配合における特徴を掴んでくることで、更に種牡馬成績を上げてくることは間違い無い。来年の春のクラシックでもこの2頭の産駒や、初年度産駒を送り出したロードカナロア、ノヴェリスト、エイシンフラッシュのような非サンデーサイレンス系種牡馬の産駒たちが、サンデーサイレンス系種牡馬の産駒がひしめき合う18頭のゲートの中に、どれほど入ってくれるのか注目したい。

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