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【ネヴァブションのドラマ・第二章】3世代6頭に託された夢――『オーナーの懐の深さに助けられた馬』青木孝文調教師 (後編)

  • 2018年03月02日(金) 18時01分
ノンフィクションファイル

▲ネヴァブションの担当厩務員から産駒の管理調教師に 決意を語る青木孝文調教師


多くのファンに愛されたネヴァブションが、一昨年の冬、突然天国へと旅立った。残された産駒は3世代6頭。担当厩務員だった青木孝文調教師と廣崎利洋オーナー、奇跡ともいえるめぐり合わせで再び動き始めたネヴァブションのドラマは、2018年、産駒のデビューという大きな局面を迎えようとしています。青木師のインタビュー(3/1前編、3/2後編)、廣崎オーナーのインタビュー(3/8前編、3/9後編)、そして産駒の貴重な動画を踏まえ、奇跡のドラマをお届けします。

(取材・文=不破由妃子)



(前回の続き)

数少ない産駒を預けてくださることに涙が出ました


 名バイプレイヤーとして高い人気を誇ったネヴァブションだが、ご存じの通りGIは未勝利。父マーベラスサンデー、母パールネツクレース(母父ミルリーフ)という地味な血統でもあり、通常であれば、種牡馬への道は拓けない。

「本来なら、ブションのような馬が種馬になるなんてあり得ないこと。それが可能になったのは、廣崎(利洋)オーナーだったからです。廣崎オーナーじゃなかったら、絶対に種馬になんてなれなかった。なにしろ種付け料は受胎条件で10万円ですからね。そこにビジネスは一切存在しない。オーナーの懐の深さに助けられた馬ですよ」

 2015年に生を受けた初年度産駒は1頭(アスクヴション・母エスピヨン)。その馬の預託先は、すでに栗東の中内田厩舎に決定していたが、青木は2016年に生まれる予定の産駒がいることも、当然ながら知っていた。以前から「調教師としてネヴァブションの子供を手掛けることがひとつの夢」と語っていた青木だけに、合格すると同時に行動に出た。

「僕は一介の調教助手でしたから、当然オーナーの連絡先は知らなかったので、レッツゴードンキなどの育成牧場の社長さんにお願いして、ブション産駒を生産した牧場の社長さんに連絡を取っていただいたんです。ドンキも生産された清水牧場さんなんですが、そこには廣崎オーナーがよくいらっしゃるということで、今度は清水社長からオーナーに『青木という調教師がいて、彼がブションの子供をやりたいと言っている』と伝えていただいて。

 その後、オーナーに初めて直接ご挨拶したのが、忘れもしない2016年5月15日。オーナーの所有馬であるストレイトガールが、ヴィクトリアマイルを連覇した日のお昼でした。そのときにオーナーが、『(ネヴァブションの件は)わかっているから。頑張って』と言ってくださったんです。

 8月にはオーナーとお電話でお話をさせていただく機会があり、そこで改めて『ブションの娘、頼んだよ』と言っていただいて。その前に、『オーナーが青木さんのところに預けるって話していましたよ』と清水牧場の社長さんから聞いてはいたんですけど、オーナーから直に確定をいただけてホッとしたのを覚えています。

 僕からお願いしたとはいえ、数少ない産駒を本当に預けてくださるなんて、オーナーの粋な計らいには涙が出ました。もう感謝しかありません」

 お互いに立場は変わったものの、こうしてかつてのパートナーと再タッグを組むことが決定した青木。しかし──そのパートナーであるネヴァブションの死は、まさにその矢先の出来事であった。

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