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ベテランの金星が光った上半期のGI競走

  • 2018年06月30日(土) 12時00分


◆コツコツと登り詰めて頂点に立った4人

 上半期のGI競走は、福永祐一騎手のダービー19度目の挑戦でつかんだ優勝や、宝塚記念の和田竜二騎手のGI7勝のテイエムオペラオー以来17年ぶりのGI勝利など、ベテランの金星が光っていた。ワグネリアンは5番人気、ミッキーロケットは7番人気で、いずれも戦況を見て取った好騎乗といっていい。ベテランと言えば、ヴィクトリアマイルの幸英明騎手も8番人気のジュールポレールの持ち味を巧く引き出していた。

 この3人に共通していたのが、いずれもが先行策ではなく、それでいていつでも交わしに行ける好ポジションにつけていたことだ。GI競走ともなれば、だいたいがよどみない流れになるから、この戦法が生きることが多い。そして、大切なのがその後のひと呼吸。ゴーサインを出したときには、進路がはっきり見えていなければならない。その為には、スタートを決めることだが、その点、ベテランはさすがに心得ていたと言っていい。

 こうした勝利の方程式にのっとって勝てるのがベテランなら、NHKマイルカップを勝った藤岡佑介騎手は、全くもってうれしいGI初優勝だった。強風吹く長い直線をびっくりする末脚で伸びてきたが、86度目のGI騎乗でつかんだ栄冠は予期せぬ、咄嗟の判断で生まれていた。思ったより行き脚がつかず、腹をくくって直線に賭けた結果が16頭ゴボウ抜きとなり、表彰式の後、「凄い脚でしたね」と声を掛けたら、「いやあ、びっくりしました」とさわやかな笑顔がかえってきた。

 この4人は、コツコツと登り詰めて頂点に立ったと言えるが、今週のラジオNIKKEI賞は、人馬ともにこれからという初々しさがある。いずれもが初重賞を狙う馬ばかりだが、騎手にも似たような事情が見えてくる。

 中で、ロードライトに騎乗する嶋田純次騎手にとっては、特に思い入れの強い一戦となっている。デビューした11年に民放競馬記者クラブ最優秀新人騎手賞を獲得したが、以後3度にわたる大ケガがあり、長いスランプの末に出会ったのがこの馬だった。ダッシュがつくようになり5戦目の今回は先行策で自在なレースが期待できる。初重賞制覇に向けどう戦うか、ローカルは特に若手の抬頭が楽しみだ。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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