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【菊花賞】混戦必至の一戦で大輪を咲かすのは

  • 2022年10月22日(土) 12時00分

かつての菊花賞馬から見えてくるセオリー


 今から8年前、菊花賞馬に輝いたトーホウジャッカルは、2歳の夏に腸炎を発症し、一時は競走馬になれるか危ぶまれていた。ようやくデビューできたのがダービーの前日だったが、気難しい一面を見せて直ぐには勝てず、3戦目、4戦目と連勝してなんとか素質開花を感じさせていた。

 5戦目小倉の2000米で2着し、今後の糧になる筈と出走したのが神戸新聞杯だった。ここで格上挑戦ながら3着に入ったことで権利を得て本番にのぞみ、快挙につなげたのだった。

 しっかり折り合いをつけ、最後のひとふんばりで勝つことができ、デビュー149日の最速で菊花賞馬になり、酒井学騎手のクラシック初勝利にもつながっていた。

 今年は、春のクラシック二冠の連対馬が一頭も出走していないめずらしい最後の一冠になったことで、混戦必至となった。当然かつてのトーホウジャッカルのような馬をさがしたくなる。この種の菊花賞馬は、その後も生まれていて、この5年間に3頭も出ている。

 17年のキセキは、夏に2連勝し神戸新聞杯2着を経て大雨の中、不良馬場の決戦を制したが、春は賞金不足で皐月賞に出られず、ダービーに目もくれず休んだのが功を奏していた。

 18年のフィエールマンは、1月デビューで3戦2勝、7月のラジオNIKKEI賞2着で賞金を加算していたが、体力が走りに追いつかず回復に時間がかかるため休養、4戦目が本番だった。自慢の末脚、驚異の加速力で圧勝し史上最少キャリアでの優勝だった。

 そして3年前のワールドプレミアは、3月の若葉S2着の後骨折のため6ヶ月休養し、神戸新聞杯で復帰して3着に入り待望の晴舞台に登場していた。追えば追うほど伸びるというのが武器で本領発揮したのだが、キセキはルーラーシップ産駒でスタミナがあり、あとの2頭はいずれもディープインパクト産駒、総合力で優っていたと言える。

 今年のメンバーを見渡してみて、セオリー通り考えれば、トライアルを勝ったジャスティンパレスがディープの産駒。春の二冠は未熟さを暴露していたが、前走は精神的成長がうかがえ折り合いがついていた。これは圏内に入れておきたい。

 この神戸新聞杯組では3着のスクリーンヒーロー産駒ボルドグフーシュに奥を感じる。晩成タイプで使われて良くなるタイプだ。

 もうひとつのセントライト記念組からは、キタサンブラック産駒のガイアフォースを。2歳時にヒザを骨折、これがいい休養になり、戻って3月に初勝利という遅咲きだが、ひと月おきに走っていて7月に2勝目、そして前走がセントライト記念と真っ向勝負でパワーアップを感じさせている。

 そのトライアルで勝ちパターンに入りながらアタマ差2着が、ダービー3着馬のアスクビクターモア。長くいい脚の使えるディープインパクト産駒で、レースセンスが魅力だ。あとはドゥラメンテ産駒のディナースタを。

「天高く 馬肥ゆる秋 菊咲かす」

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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