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今年のオブライエン軍団のタレントは? 3歳クラシックへ向けた前哨戦が開幕

  • 2023年04月05日(水) 12時00分

いよいよ動き出したヨーロッパの3歳世代


 芝の平地シーズンが開幕したばかりのアイルランドで、早速、2日(日曜日)にレパーズタウン競馬場で、3歳クラシックへ向けた前哨戦が3レース行われた。

 それぞれのレースで1番人気に推されていたのは、いずれも、ライアン・ムーアが騎乗する、エイダン・オブライエン調教師の管理馬だったが、タレント揃いのオブライエン軍団の中では「Bチーム」、もしくは「第2集団」に属すると見られていた馬たちだった。

 2日のレースは、今年のオブライエン軍団全体の水準はいかばかりなものか、「Bチーム」から「Aチーム」にランクアップしていく馬は現れるのか、そのあたりを見極めるのがポイントだった。まず最初に組まれていたのは、2000ギニーを目指す牡馬によるG3バリーリンチスタッド2000ギニートライアル(芝7F)だった。ここでオッズ1.62倍の1番人気に推されていたのが、ハンスアンデルセン(牡3、父フランケル)である。

 LRロージズS(芝5F)を制した他、コーンウォーリスS(芝5F)3着などの実績を残したシャドウハンターの2番仔で、タタソールズ10月1歳市場にて45万ギニー(当時のレートで約7377万円)で購買されたのがハンスアンデルセンだ。2歳6月にデビューし、7月にカラのメイドン(芝7F)を制しデビュー2戦目で初勝利をあげた。だが以降は、カラのG2フューチュリティS(芝7F)が2着、同じくカラのG1ナショナルS(芝7F)が5着という成績で、2歳戦を終えていた。

 2000ギニートライアルにおけるハンスアンデルセンは、5頭立ての4番手を追走。残り500m付近から鞍上が軽く促すと、鋭く反応した同馬が一気に歩度を伸ばし、直線残り275m付近で先頭に立つと、最後は2.1/2馬身抜け出して優勝を飾った。

 同馬の今後についてオブライエン師は、「春の大きな目標は、G1仏ダービー(芝2100m)に置いている。その前に、仏国か愛国の、どちらかの2000ギニーを使うことになると思う」とコメントしている。

 続いて行われたのが、1000ギニーを目指す牝馬によるG3バリーリンチスタッド1000ギニートライアル(芝7F)だ。ここでオッズ3倍の1番人気に推されていたのが、ネバーエンディングストーリー(牝3、父ドバウィ)だった。クールモアによる自家生産馬で、G1ベルモントオークス(芝10F)勝ち馬アテナの初仔となる同馬。2歳5月という早期デビューを果たし、2歳時は6戦。6月にカラのメイドン(芝7F)を制しデビュー2戦目で初勝利をあげると、続くレパーズタウンのG3シルヴァーフラッシュS(芝7F)を制し重賞初制覇。

 その後は、ドーヴィルのG2カルヴァドス賞(芝1400m)3着、カラのG1モイグレアスタッドS(芝7F)4着、ロンシャンのG1マルセルブーサック賞(芝1600m)3着と、一線級を相手に好戦するも、ひと息足りない競馬を続けた。

 1000ギニートライアルでのネバーエンディングストーリーは、前半は10頭立ての6〜7番手を追走。4コーナーから鞍上が追い出すと着実に末脚を伸ばし、残り120mで先頭に立つと、2.1/2馬身抜け出して優勝。危なげのない競馬で今季初戦を飾った。

 レース後にオブライエン師は、「まだ冬毛が抜けきっておらず、明らかに仕上がり途上。今日のところはこんなもの」とコメント。次走は、仏国か愛国の、どちらかの1000ギニーになるとの見通しを示している。

 3つの3歳トライアルのうち最後に行われたのが、ダービーを目指す牡馬たちによるG3バリーサックスS(芝10F)だった。ここでオッズ1.8倍の1番人気に推されていたのが、アレクサンドロポリス(牡3、父キャメロット)だ。

 G1パリ大賞(芝2400m)やG1セントレジャー(芝14F115y)を制したキューガーデンズの甥にあたり、タタソールズ10月1歳市場にて24万ギニー(当時のレートで約3961万円)で購買された同馬。昨年9月6日にゴールウェイのメイドン(芝8F123y)でデビュー。ここを制して1戦1勝の成績で、2歳シーズンを終えていた。シーズンオフの間、ダービーの前売りで上位人気に顔を出していた同馬の今季初戦とあって、ファンの大きな注目を集めての出走だったが、残念ながら期待に応えることは出来なかった。

 3番手外目で競馬をしたアレクサンドロポリスは、残り3F標識を過ぎた辺りでムーアの手が動き出すと、一旦は反応して伸びかけたが、残り1F付近で馬が苦しくなったか、左右にヨレる仕草を見せ、そこからは伸びず、勝ち馬から4.1/2馬身差の3着に敗退。勝ったのは、道中最後方から追い込んだホワイトバーチ(牡3、父ユリシーズ)だった。ホワイトバーチはクラシック未登録で、陣営は今後、馬の状態を見ながら、追加登録を行うかどうかの決断を下すことになる。

 一方、アレクサンドロポリスについてオブライエン師は、「今日は馬がフレッシュすぎた。これを使われて良くなるだろう」とコメント。次走は5月7日に同じくレパーズタウンで行われるG3愛ダービートライアルS(芝10F)になる予定だ。

 ということで、4月2日の競馬を終えて、オブライエン軍団の中でBチームからAチームに昇格した馬はおらず、2000ギニーはリトルビッグベア(牡3、父ノーネイネヴァー)とオーギュストロダン(牡3、父ディープインパクト)、1000ギニーはメディテイト(牝3、父ノーネイネヴァー)、ダービーはオーギュストロダンが、軍勢の旗頭という構図は変わらなかった。

 いよいよ動き出したヨーロッパの3歳世代。これから毎週のように各国で行われるプレップレースに、ぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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