スマートフォン版へ

ケンタッキーダービーの勢力分布 デルマソトガケは3番人気グループか

  • 2023年04月19日(水) 12時00分

新たな歴史が作られても不思議ではない


 4月15日にキーンランドで行われたG3レキシントンS(d8.5F)をもって、今シーズンのケンタッキーダービーポイント指定競走はすべて終了。5月6日にチャーチルダウンズで行われる第149回ケンタッキーダービー(d10F)へ向けた勢力分布が、ほぼ固まった。

 通算で190ポイントを獲得して首位に立ち、当日もおそらくは1番人気が予想されるのが、スーパーセイヴァーで制した2010年、オールウェイズドリーミングで制した2017年に次ぐ、3度目のダービー制覇を狙うトッド・プレッチャーが送り込むフォルテ(牡3、父ヴァイオレンス)だ。

 2歳秋に上場されたキーンランド9月市場ではブック4に振り分けられ、11万ドル(当時のレートで約1216万円)というお手頃価格で購買されたのがフォルテだ。2歳5月という早期デビューを果たし、3戦目となったサラトガのG1ホープフルS(d7F)を制し、G1で重賞初制覇を果たした。これを皮切りに、G1ブリーダーズフューチュリティ(d8.5F)、G1BCジュヴェナイル(d8.5F)とG1を3連勝。全米2歳牡馬チャンピオンの座についている。

 今季初戦となったG2フォンテンオヴユースS(d8.5F)を4.1/2馬身差で楽勝した後、本番前の最後の1戦とすべく出走したのが、4月1日にガルフストリームパークで行われたG1フロリダダービー(d9F)だった。12頭立ての11番と枠に恵まれず、前半は馬群の外をまわらされての9番手という苦しい展開となったが、そこから着実に末脚を伸ばして差し切り勝ち。能力の高さを改めて実証することになった。直近20年のケンタッキーダービー馬のうち、前走がG1フロリダダービーという馬は、他のどのダービープレップよりも多い5頭いる。

 しかも、その5頭はいずれも、フロリダダービーを勝って臨んだケンタッキーダービーを制しており、フォルテとしては非常に良い流れに乗って迎える本番となりそうだ。2番人気が想定されるのが、フォルテと同厩のタピットトライス(牡3、父タピット)である。お手軽価格だったフォルテとは対象的に、同じキーンランド9月1歳市場にて130万ドル(当時のレートで約1億4437万円)という高値で購買されているのが本馬だ。

 母ダンザトライスはG3グルーピードールS(d8F)3着馬で、母の4歳年下の半妹に18年の全米2歳牝馬チャンピオンのジェイウォークがいるという血統背景を鑑みれば、妥当な価格と言えそうである。2歳11月にデビュー。アケダクトのメイドン(d8F)を制しデビュー2戦目で初勝利を挙げると、続くガルフストリームパークの条件戦(d8F)も8馬身差で楽勝。

 3月1日にタンパベイダウンズで行われたG3タンパベイダービー(d8.5F)を制し重賞初制覇を飾ると、4月8日にキーンランドで行われたG1ブルーグラスS(d9F)も優勝。4連勝を飾るとともに、G1初制覇を果してケンタッキーダービーに向かうことになった。同馬に関しては、気がかりな点が2つある。

 1つは、数多の活躍馬を出している名種牡馬タピットが、ケンタッキーダービーを勝てていないこと。もう1つは、前走がブルーグラスSというケンタッキーダービー馬は、過去20年では2007年のストリートセンスただ1頭しかいないことだ。しかもそのストリートセンスはブルーグラスSで2着に負けており、ブルーグラスSとケンタッキーダービーの連覇となると、1991年にストライクザゴールドが果たして以来、30年以上にわたって絶えているのだ。

 もっとも、昨年のケンタッキーダービー勝ち馬リッチストライクも、前走がLRジェフルビーSというのは、1992年のリルイーティー以来の臨戦態勢だったから、ローテーションに関してはさほど気にする必要はないかもしれない。3番人気以下には、G1サンタアニタダービー(d9F)勝ち馬プラクティカルムーヴ(牡3、父プラクティカルジョーク)、G1アーカンソーダービー(d9F)勝ち馬エンジェルオブエンパイア(牡3、父クラシックエンパイア)、G2ルイジアナダービー(d9.5F)勝ち馬キングスバーンズ(牡3、父アンクルモー)らがひしめく中、そのグループの一角に食い込もうとしているのが、日本から参戦するデルマソトガケ(牡3、父マインドユアビスケッツ)である。

 前走のG2UAEダービー(d1900m)は、逃げて後続を5.1/2馬身突き放すというレース内容も出色だったが、勝ち時計の1分55秒81というのも極めて優秀だ。同じ日に行われたダート2000mのG1ドバイワールドCの勝ち時計が2分03秒25で、実に単純な机上の計算だと、デルマソトガケがあと100mを7秒44で走れば、ドバイワールドCの時計を上回ることになる。メイダンの路面とチャーチルダウンズの路面は近しいと言われており、デルマソトガケはチャーチルダウンズの馬場を上手にこなしてくれるはずだ。

 残された命題は、枠順と天候である。そこさえ恵まれてくれれば、新たな歴史が作られても、不思議ではないと見ている。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング