スマートフォン版へ

見どころ満載の牡馬と牝馬の三冠初戦

  • 2023年05月03日(水) 12時00分

牝馬三冠初戦のG1英1000ギニー出走馬のファンからの支持


 牡馬のG1英2000ギニー(芝8F)を展望した前回に引き続き、今週は5月7日にニューマーケットで行われる牝馬三冠初戦のG1英1000ギニー(芝8F)の展望をお届けしたい。

 今週月曜日(1日)に設けられていた登録ステージで、22頭がエントリーを行なっている。

 ブックメーカー各社が3.0〜3.5倍のオッズを掲げて1番人気に支持しているのが、アイルランドを拠点とするタヒーラ(牝3、父シユーニ)である。

 アガ・カーン殿下の自家生産馬で、今年の7月には75歳となるダーモット・ウェルド調教師が管理するのが、タヒーラだ。20年秋にG1ヴェルメイユ賞(芝2400m)、G1オペラ賞(芝2000m)、G1BCターフ(芝12F)を3連勝したタルナワの半妹にあたる同馬。昨年7月にゴールウェイのメイドン(芝7F)を制してデビュー勝ちを飾ると、次走はいきなりカラのG1モイグレアスタッドS(芝7F)に参戦。

 中団で競馬をした後、残り300m付近から鞍上が仕掛けるとパワフルな末脚を繰り出し、残り120m付近で先頭へ。そこから2.1/4馬身抜け出して、2戦目にしてG1制覇を果たした。イギリス、フランス、アイルランドのどの国の1000ギニーに行くのか、ぎりぎりまで胸中を明かさなかったウェルド師が、ここを目指すことをようやく表明したのが、5月1日のことだった。いずれにしても、1000ギニーがシーズン初戦となることは、当初のプラン通りで、きっちり仕上がっての参戦となるはずだ。

 タヒーラが制したG1モイグレアスタッドSで、オッズ2倍の1番人気に推されていたのが、エイダン・オブライエン師が管理するメディテイト(牝3、父ノーネイネヴァー)だった。G1愛オークス(芝12F)勝ち馬チキータ、G1マッキノンS(芝2000m)勝ち馬マジックワンドらの従姉妹にあたる同馬。アルカナ8月1歳市場に上場され、36万ユーロ(当時のレートで約4720万円)でクールモアの代理人に購買されている。

 デビューが2歳の4月10日だったという仕上がり早の馬で、そこから8月20日のG2デビュタントS(芝7F)まで、3つの重賞を含む4連勝。G1モイグレアスタッドSで2着に敗れて連勝が止まった後、続くニューマーケットのG1チェヴァリーパークS(芝6F)でもレズーの2着に甘んじたが、2歳シーズンの最終戦となったキーンランドのG1BCジュベナイルフィリーズターフ(芝8F)を快勝。待望のG1初制覇を果たすとともに、8Fの距離に対応できることを立証した。

 タヒーラ同様、ここがシーズン初戦となるメディテイトが、オッズ4.5〜5.0倍のオッズで2番人気となっている。人気上位2頭がアイルランド調教馬であるのに対し、3番手グループを形成するのは、ドリームオブラヴ、ママズガール、リマーキーという、こちらはいずれもイギリスを拠点とする3頭である。

 ドリームオブラヴ(牝3、父シャマーダル)は、ゴドルフィンによる自家生産馬。ヨークのG2ミドルトンS(芝10F56y)を制した他、G1英オークス(芝12F6y)2着、G1独オークス(芝2200m)2着など、G1での入着が7度あったシークレットジェスチャーの4番仔となる。チャーリー・アップルビー厩舎から2歳10月にデビュー。ニューマーケットのメイドン(芝7F)で初戦勝ちを果たした後、同じくニューマーケットで行われたLRモントローズフィリーズS(芝8F)が3着。年明けの1月23日にドバイのメイダンで走った条件戦(芝1400m)が2着で、ここはそれ以来の実戦となる。

 4月19日にニューマーケットで行われたG3ネルグウィンS(芝7F)、4月22日にニューベリーで行われたG3フレッドダーリンS(芝7F)という、代表的な1000ギニーのプレップレースを制しての参戦となるのが、ママズガール(牝3、父ハヴァナグレー)とリマーキー(牝3、父キングマン)だ。

 LRローズボウルS(6F8y)勝ち馬マスターオブウォーの半妹で、ゴフスUK1歳市場にて3万5千ポンド(当時のレートで約542万円)で購買されたママズガールは、リチャード・ハノン厩舎から2歳10月にデビュー。ニューマーケットのノーヴィス(芝7F)で初戦勝ちを果たして2歳シーズンを終えた同馬の、今季初戦となったのがG3ネルグウィンSだった。オッズ17倍の7番人気と、ファンの評価は高くなかったが、道中は最後方を追走した後、ゴール前で飛ぶような末脚を見せて残り100mで先頭に立つと、そこから2.3/4馬身抜け出す鮮やかなパフォーマンスを見せている。

 一方、ジュリアン・リチャードワトソン氏のローンスタッドによる自家生産馬で、G3ランウェイズスタッドS(芝9F100y)2着など重賞入着を4度重ねたリガーデズの4番仔となるのがリマーキーだ。

 ラルフ・ベケット厩舎から2歳9月にデビュー。ソールズベリーのノーヴィス(芝6F213y)で初戦勝ちを果たして2歳シーズンを終えた同馬の、今季初戦となったのがG3フレッドダーリンSだった。こちらは、道中2番手追走から残り250mを切った辺りで先頭へ立つ競馬で、無敗の重賞制覇を果たしている。英国・米国でそれぞれ、牡馬と牝馬の三冠初戦が行われるという、競馬ファンにとって見どころ満載の週末を、皆様もぜひお楽しみいただきたい。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング