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英国オークス、ダービーの前売り戦線に変動が

  • 2023年05月10日(水) 12時00分

アンティポストベットに大きな変化が


 5月最初の週末は、英国のオークスとダービーへ向けたアンティポストベット(長期前売り)に大きな変化が生じることになった。

 まず、6月2日(金曜日)に行われる牝馬のG1英オークス(芝12F6y)の前売り戦線に変動が起きたのが、5日(金曜日)だった。

 この日、ニューマーケット競馬場の第7競走に組まれていた牝馬限定のメイドン(芝10F)で、オッズ1.73倍の圧倒的1番人気に推されていたのが、マイケル・スタウトが管理するインフィニットコスモス(牝3、父シーザスターズ)だった。

 LRアフロディーテS(芝12F)勝ち馬ワリアの4番仔で、近親にG1プリンスオブウェールズS(芝9F212y)を含む7重賞を制したクリスタルオーシャンがいる牝系を背景に持つのがインフィニットコスモスだ。

 同馬は、昨年10月21日にドンカスターの牝馬限定メイドン(芝8F)でデビュー。シーオヴローゼスという馬に短頭差及ばず2着に敗退すると、この1戦だけで2歳シーズンを終えていた。

 初戦でこの馬を破ったシーオヴローゼスが、今季初戦となったG3ペネロープ賞(芝2100m)で2着に好走していたこともあって、5月5日のメイドンでは被った1番人気に推されたインフィニットコスモス。初戦に続いてライアン・ムーアが騎乗した同馬は、前半は10頭立ての3番手を追走。残り3F付近で鞍上がゴーサインを出すと反応良く加速し、残り2F付近で先頭に立つと、そこから後続を4.1/4馬身突き放して優勝。デビュー2戦目にして初勝利を挙げた。

 これを受け、ブックメーカー各社は英オークスにおける同馬のオッズを7〜8倍にカット。ほとんどの社が、オークス前売り1番人気に浮上させたのである。

 マイケル・スタウト師はレース後、次走は各地で行われるオークスプレップの1つになるとコメント。具体的には、5月17日にヨークで行われるミュージドラS(芝10F56y)が候補に挙がっている。

 牡馬のG1英ダービー(芝12F6y)の戦線に変動が起きたのが、翌6日(土曜日)だった。

 まずは午前中に、ゴドルフィンの主戦調教師の1人であるチャーリー・アップルビー師が、コメントを発表。この段階で英ダービーの前売り2番人気(オッズ11倍前後)に推されていたインペリアルエンペラー(牡3、父ドバウィ)が、ダービーを見送る公算大であることを明らかにした。

 ゴドルフィンによる自家生産馬で、牡馬を撃破したG1マンノウォーS(芝11F)を含めて3つの重賞を制したズコヴァの2番仔にあたるのがインペリアルエンペラーだ。母の3歳年下の半弟(インペリアルエンペラーの叔父)に、G1インターナショナルS(芝10F56y)など10〜12FのG1を4勝したガイヤースがいるという、豪華なファミリーを背景に持つ。

 同馬は、昨年10月1日にニューマーケットのメイドン(芝8F)でデビュー。6頭立ての3番手を追走した後、残り2Fで先頭へ。そこから鞍上のウィリアム・ビュイックが追い出すと、力強く脚を伸ばし、後続に3.1/2馬身差をつける快勝。この段階で既に、英国ダービーの有力馬の1頭に上げられていた。

 2歳時をその1戦だけで終えたインペリアルエンペラーについて、アップルビー師は、順調に冬を越えたものの、もう少し時間をかけて攻めていきたいとし、今季の当面の目標を、ロイヤルアスコット4日目(6月23日)のG2キングエドワード7世S(芝11F211y)か、7月2日にカラで行われるG1愛ダービー(芝12F)に置くことを明らかにしたものだ。

 さらに、ダービー戦線が様相を大きく変えたのが、6日の午後だった。

 ニューマーケットで行われたG1英2000ギニー(芝8F)に、オッズ2.625倍の1番人気に推されて出走したアイルランド産ディープインパクト産駒のオーギュストロダン(牡3)が、よもやの大敗を喫したのである。

 G1オペラ賞(芝10F)など8F〜10FのG1を3勝したロードデンドロンの初仔となる同馬。2歳だった昨年は4戦し、3.1/2馬身差で制したG1フューチュリティトロフィー(芝8F)など2つの重賞を含む3勝をマーク。シーズンオフの間、英2000ギニーの前売りでは有力馬の一角という評価だった一方、ダービーの前売りでは断トツの1番人気に支持されていた。

 ここを勝てば3冠も夢ではないと言われたのが、6日の英2000ギニーだったが、レース前半は馬群外側の中団後方を進んだオーギュストロダンは、残り3F付近から鞍上R.ムーアが追い出すも全く伸びず、14頭立ての12着に敗退してしまった。

 全くの凡走に終った要因の1つに挙げられているのが、ニューマーケットへの輸送過程だった。同馬を管理するエイダン・オブライエン厩舎は、競馬開催の当日朝に航空機を使ってアイルランドからニューマーケットに輸送するのがルーティーンだ。

 ところが、英2000ギニー当日はチャールズ国王の戴冠式にあたっており、様々な規制のため当日の輸送便を手配することが出来ず、オブライエン厩舎としては異例の前日輸送を行なっていたのである。

 実は、オブライエン厩舎から英2000ギニーに出走したもう1頭のリトルビッグベア(牡3、父ノーネイネヴァー)も、オッズ6倍の3番人気を裏切り最下位の14着に惨敗しており、普段は経験したことのない前日輸送が、2頭のパフォーマンスに大きな影響を与えたのではないかと見られている。

 英2000ギニーの結果を受け、ブックメーカー各社は英国ダービーの前売りオッズを大幅に修正。3倍前後だったオーギュストロダンのオッズを、6倍〜9倍に引き上げている。英2000ギニーが終わると、英国ダービーとオークスへ向けた前哨戦が各地で本格化するが、その推移を見守っていきたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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