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今年の英ダービーは特殊事情? 勝負の行方とは離れた部分にある3つの焦点

  • 2023年05月24日(水) 12時00分

英国民ならずとも大きな関心を寄せているチャールズ国王の動向


 今年で244回目の開催を迎えるG1英ダービー(芝12F6y)の開催が、来週の土曜日(6月3日)に迫っている。

 ディープインパクト最終世代の1頭で、シーズンオフの間はダービー前売り本命の座にありながら、3冠初戦のG1英2000ギニーで12着と大きく躓いたオーギュストロダン(牡3、父ディープインパクト)の巻き返しがあるのかどうか。

 現段階ではダービー未登録ながら、最重要プレップレースと言われるG2ダンテS(芝10F56y)で3着に入った日本産ハーツクライ産駒のコンティニュアス(牡3、父ハーツクライ)が追加登録してくるかどうかなど、日本の競馬ファンにとっても目が離せない状況にあるのが、今年の英ダービーだが、勝負の行方とは離れた部分で、大きな焦点となっているファクターが3つある。

 1つ目は、今月6日に戴冠式を終えたばかりのチャールズ国王が、エプソムダウンズ競馬場にお出ましになるかどうか。

 昨年9月にご崩御されたエリザベス女王は、ダービーデーのエプソム競馬場への臨場を年中行事とされ、お姿がなかったことはほとんどなかった。御母堂ほどには競馬への情熱が高くないと言われる新国王が、果たして競馬場にお越しになるか、英国民ならずとも大きな関心を寄せている。

 2つ目は、例年ならば午後4時30分頃に設定されているダービーの発走時刻が、今年は午後1時30分と、3時間余りも早められていること。

 理由は、同じ日の午後にウェンブリースタジアムで予定されている、FAカップ決勝戦との時間重複を避けるためだ。今年はマンチェスター・シティvs マンチェスター・ユナイテッドという顔合わせとなり、例年以上に盛り上がりを見せているのがFAカップだ。そのキックオフは午後3時予定だから、ダービー発走予定時刻の午後4時30分は、「マンチェスター・ダービー」がまさしく佳境を迎えている時間帯となる。

 放送局の問題もあって、英ダービーもFAカップも放映権を持っているのはITVだ。ITVはチャンネルを複数持っているため、2つのスポーツイベントを同時に放送することは不可能ではない。だが、 英ダービーとFAカップを「表と裏」でやるのは得策ではないとの判断をITVが下し、関係各所が調整した結果、ダービーの発走を3時間繰り上げることで決着を見た。

 ただし、開催日となると午前中からレースの施行がある日本と異なり、英国を含めた欧州諸国では、昼食後に第1競走の発走があるのが通例で、事実、昨年のダービーデーにおけるエプソム競馬場の第1競走は、午後2時に発走している。英ダービーの午後1時30分というのは、現地の関係者やファンにとっては、大きな違和感を覚える発走時刻なのだ。

 さらに、例えば愛国のエイダン・オブライエン厩舎は、ダービー出走馬を、拠点のバリードイルからエプソムダウンズに、当日朝に輸送するのがルーティーンとなっている。発走時刻が大幅に繰り上がる今年、慣例通り当日輸送で臨むかどうか、オブライエン師は今、思案を募らせている。

 3つ目のファクターは、動物愛護団体による妨害活動だ。

 4月15日にエイントリー競馬場で行われたG3グランドナショナルで、デモ隊がコースに侵入。障害の前に座り込むなどの妨害活動があった影響で、グランドナショナルの発走が15分ほど遅れた件は、皆様の御記憶にも新しいところだろう。

「アニマル・ライジング」と称するその団体は、その後、スコティッシュグランドナショナルをメイン競走とした4月22日のエアー競馬場や、5月6日にドンカスター競馬場で行われた開催にも姿を見せ、小規模の妨害活動を行なっている。その彼らが、英国における平地競馬最大の祭典であるエプソムのダービーデーで、再び示威活動を行うとの情報が流れているのである。

 コース内に人が侵入すれば、競馬の安全な施行がままならなくなるばかりでなく、状況によっては、馬たちが怯えたり、焦れ込んだりする要因にもなりかねない。主催者サイドは、例年以上に厳重な警備態勢で臨む予定だが、今年の英ダービーが無事に施行され、全馬が力を出し切るレースとなることを、切に願っている。

 なお、英ダービーは今年も、グリーンチャンネルの「All In Line〜世界の競馬(6月3日夜9時から夜10時)」で生中継される予定だ。日本の競馬ファンの皆様も、競馬発祥の地のダービーを、存分にお楽しみいただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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