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大怪我からの復活を遂げたマーティン・ドワイヤー騎手が引退を発表

  • 2023年07月05日(水) 12時00分

マーティン・ドワイヤー騎手の活躍とは


 イギリスを拠点に32年にわたって騎乗を続けてきたマーティン・ドワイヤー騎手(48歳)が、7月2日、現役引退を表明した。

 ドワイヤーは昨年3月、ブライアン・ミーハン厩舎の調教に参加していた際に落馬。左膝の骨を骨折するとともに、十字靭帯を損傷する大怪我を負い、整形手術を受けていた。

 昨年5月の段階で、2022年シーズンの復帰を断念。2023年のシーズン中に戦線に戻るべく、懸命にリハビリに努めていた。だが、膝の状態は芳しくなく、今年5月に2度目の手術を敢行。術後の経過は良く、日常生活にはほとんど支障はないものの、プロ騎手として騎乗するレベルまでは膝の強度が戻らず、現役復帰を断念することになったものだ。

 本人によると、「乗り遅れそうなバスに向かって走っていくことは、まだ出来ない」そうで、今後もリハビリが欠かせない日々になるとのことだ。

 マーティン・ドワイヤーは、1975年6月28日にリヴァプールのエイントリーで生まれた。15歳の時に、名馬ミルリーフを育てたことで知られるイアン・ボールディング調教師のもとで見習い騎手として騎乗を開始。1993年7月9日に、ワーウイック競馬場で行われた3歳未勝利(芝8F)を、サスケハナデイズ(牝3、父チーフズクラウン)に騎乗して優勝。記念すべき初勝利をあげた。

 年間勝ち星が初めて2桁を超え、36勝まで伸びた1996年に、見習い騎手ランキング2位獲得。翌1997年10月11日、イアン・ボールディング厩舎のハルマヒラ(セン2、父ペターディア)に騎乗して、アスコット競馬場のG3コーンウォリスS(芝5F)に優勝し、重賞初制覇を果たした。この年は、年間勝ち星が57まで伸び、トップ騎手の仲間入りを果たしている。

 2002年には、年間勝利数が106と、自身初の100勝超えをマーク。そして、この頃から、騎手マーティン・ドワイヤーの名を飛躍的に高めてくれた馬たちとの出会いが、立て続けにあった。

 引退した父の跡を継いだアンドリュー・ボールディング調教師が管理するカジュアルルック(牝、父レッドランサム)に出会ったのが、2002年の春だった。まだ2歳だった同馬に、ドワイヤーはデビュー戦から騎乗。3戦目となったメイドン競争(芝8F)で初勝利を挙げると、次走はいきなりアスコット競馬場のG1フィリーズマイル(芝8F)に挑戦。ここで2着となって、翌春のクラシック候補に浮上した。

 翌2003年の春、ドワイヤーが騎乗したカジュアルルックはG1英オークス(芝12F6y)に優勝。ドワイヤーは、G1初制覇にして英国クラシック初制覇を成し遂げた。

 同じくアンドリュー・ボールディングが管理したフェニックスリーチ(牡、父アルハレス)との出会いがあったのも、同馬がまだ2歳だった2002年の春だった。フェニックスリーチとマーティン・ドワイヤーのコンビは、2003年のG1カナディアン国際S(芝12F)、2004年のG1香港ヴァーズ(芝2400m)、2005年のG1ドバイシーマクラシック(芝2410m)に優勝。2004年にはG1ジャパンC(芝2400m)にも参戦し、ゼンノロブロイの6着となっている。

 続いて出会ったのが、デヴィッド・エルスワーズ調教師が手掛けたパーシャンパンチ(父パーシャンハイツ)だった。3歳から10歳まで、ステーヤー路線で長く活躍し、たくさんのファンがいた同馬に、ドワイヤーが初めて騎乗したのは、パーシャンパンチが9歳の夏を迎えていた2002年8月だった。以降、このコンビは、連覇したG3ジョッキークラブC(芝16F)、G2グッドウッドC(芝16F)、G2ドンカスターC(芝18F)と、4つの重賞を手にすることになった。2004年4月28日、当時11歳となっていたパーシャンパンチが、アスコットのG3サガロS(芝16F45y)のレース中に心臓発作で急死するという悲劇的な最期を遂げた時も、鞍上にいたのはドワイヤーだった。

 そして、騎手マーティン・ドワイヤーにとってハイライトというべき出来事が起きたのが、2006年6月だった。マーカス・トレゴーニングが管理するサーパーシー(牡、父マークオブエスティーム)には、同馬のデビュー戦となった、2005年5月にグッドウッドで行われたメイドン(芝6F)から継続騎乗。無敗の4連勝でG1デューハーストS(芝7F)を制し、翌春のクラシック候補となった。

 3歳初戦のG1英2000ギニー(芝8F)では、ジョージワシントンの2着に屈し初黒星を献上したものの、続いて駒を進めたG1英ダービー(芝12F6y)をサーパーシーは見事に優勝。ドワイヤーはダービージョッキーの称号を手にしたのである。

 近年では、2021年のG1コロネーションC(芝12F6y)など3重賞を制したパイルドライヴァー(牡、父ハーバーウォッチ)とのコンビが有名だ。

 マーティン・ドワイヤーは、今後は競馬メディアの世界に転じる予定で、競馬チャンネル“Racing TV”での解説が、メインの業務となる模様だ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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