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【古川吉洋×藤岡佑介】人生で一番悔しかったテイエムジンソクでの敗戦──クセ馬職人として生きるモチベーション/第3回

  • 2023年07月26日(水) 18時01分
“with佑”

▲「クセ馬に乗りたい」その理由とは?(撮影:山中博喜)


昔から、クセが強く乗り難しい馬の調教に数多く騎乗してきたという古川吉洋騎手。年齢を重ねた今でも、「乗りやすくて走る馬」より「癖があって走る馬」を欲しがってしまうそうで…。

古川騎手とコンビを組みダート戦線で活躍したテイエムジンソクは、まさに癖があって走る馬。テイエムジンソクと挑んだレースでの裏話や、これからも“クセ馬職人”にこだわる理由についてお話ししてくれました。

(取材・構成=不破由妃子)

「扱いやすい。俺が乗る馬ちゃうわ」生粋の“クセ馬職人”


──ここまでお話を伺って思うのは、古川さんは生粋の職人さんですね。

佑介 古ちゃんは昔からそうです。僕がデビューした頃から、「追い切りには乗り役を乗せたいけど、たぶんクセが強くて乗り切れへん」とか言われている馬は、全部古ちゃんが乗っていたイメージです。

古川 佑介が乗っていたサンディエゴシチー(2009年札幌2歳S)も、俺、何回か乗ったな。佑介に「この馬は噛むようになるから、平日にしっかり乗っておいたほうがいいぞ」って言ったような気がする。

佑介 そうでしたね。北海道にきたら、調教で自分が乗り切れない馬を古ちゃんに乗ってもらったりしてた。「この馬、どうしたらいい?」とか「大丈夫かどうか、一度乗ってみてください」とか。若い頃から、そうやって何度も教えてもらいましたよね。古ちゃんは、とにかく引き出しがめっちゃ多いから。

古川 それだけ数多くのクセ馬に乗ってきたということ。

──以前、古川さんに取材をさせていただいたときも、クセ馬たちの面白エピソードをたくさん聞かせていただいて、すごく印象に残っています。ブルーフェアプレーとか…

古川 ああ、いたね。右にグルグルしたり、左にグルグルしたり、立ち上がったり、横っ飛びをしたり。普通はどれかひとつなんだけど、あの馬は全部やる馬だった(笑)。

──新潟で植木を飛び越えて、事務所に入っていこうとした馬も(笑)。

古川 覚えてる(笑)。新潟でもそういう馬がいたけど、函館でも事務所のガラスの寸前まで行った馬がいたなぁ。

佑介 年齢を重ねた今となっては、できれば癖がなくて走る馬に乗りたいですよねぇ。

古川 いや…。「癖があって走る馬」にはけっこう乗ってるけど、一昨年マイラーズCを勝ったケイデンスコールは、乗りやすい、扱いやすい、しかも走るという三拍子そろった馬で…。

“with佑”

▲2021年のマイラーズCを古川吉騎手とのコンビで制したケイデンスコール(C)netkeiba.com


──前日に岩田(康誠)さんが騎乗停止になり、急きょ乗ることになったレースでしたよね。

古川 そうです、そうです。重賞を勝ったのは久しぶりだったので、それはとてもうれしかったんですけど、レースが終わったあと、厩舎の人に「走る、乗りやすい、扱いやすい。この馬、俺が乗る馬ちゃうわ」って、普通に自分から言ってた(笑)。

佑介 欲しがってるし(笑)。

古川 そう、欲しがってたわ(笑)。ごく自然に「俺が乗る馬じゃないなぁ」と思ったんだよね。

(武)豊さんに「ごめんなさい!」アウォーディーに突っ込んでいった“クセ馬”テイエムジンソク


──ちなみに、「癖があって走る馬」というと?

古川 テイエムジンソクは、そういうタイプでしたよ。とにかく初めて行く場所がダメな馬で。2018年のフェブラリーS(2番人気12着)が初めての東京だったんですけど、返し馬でみんな左に行くところ、ひとりで反対方向に行っちゃって。ラチに激突する寸前でギリギリ止まったんだけど、危うくレース前に終わるところでしたよ。

“with佑”

▲フェブラリーSで返し馬に向かうテイエムジンソク(ユーザー提供:風来坊主さん)


 前の年のチャンピオンズC(1番人気2着)も初めての中京で

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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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