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「パーフェクト」な調教 破竹の勢いにあるコディーズウィッシュ

  • 2023年08月02日(水) 12時00分

実力と実績で競馬メディアのヘッドラインを飾る馬


 英国では今週、5日開催の間に3つのG1を含む13もの重賞が組まれた「グロリアス・グッドウッド(8月1日〜5日)」が進行中だ。各曜日とも見逃せないカードが満載だが、今週のこのコラムでは、週末の5日(土曜日)に米国ニューヨーク州のサラトガ競馬場で行われる開催の見どころをご紹介したい。ここも、3つのG1を含む4つの重賞が組まれた、豪華な開催なのである。

 中でも最も大きな注目を集めるのは、古馬によるダート9FのG1ホイットニーSだ。

 中心視されているのは、ゴドルフィンのコディーズウィッシュ(牡5、父カーリン)である。

 同馬と、ウォルフ・ヒルショホーン症候群を患ったコーディー・ドーマン君との交流譚は、つとに有名である。だが、最近のコディーズウィッシュは、そうしたエピソードではなく、その実力と実績で競馬メディアのヘッドラインを飾る馬になっている。

 G1ガゼルS(d9F)勝ち馬ダンスカードの4番仔として、18年5月3日にケンタッキーで生まれたのがコディーズウィッシュだ。ウィリアム・モット厩舎の一員となった同馬は、デビューが3歳6月まで遅れ、なおかつ初勝利をあげるのに4戦を要したため、未勝利を脱出したのは3歳の10月2日だった。JRAなら、3歳未勝利戦が既になくなっている時季である。

 だが、初勝利をきっかけに、コディーズウィッシュは別馬のように変身した。チャーチルダウンズ競馬場で、メイドンと2つのアローワンスを3連勝を果し、3歳シーズンを終えている。

 コディーズウィッシュの4歳初戦となったのが、3月12日にタンパベイダウンズ競馬場で行われたG3チャレンジャーS(d8.5F)で、重賞初挑戦となったここで、同馬は2着に健闘した。

 続いて出走したのが、5月7日にベルモントパーク競馬場で行われたG3ウエストチェスターS(d8F)で、ここを制した同馬は、重賞初制覇を達成した。

 続くチャーチルダウンズ競馬場のLRハンシンS(d8F)も白星で通過すると、モット師は同馬の次走に、8月27日にサラトガ競馬場で行われたG1フォアゴーS(d7F)を選択。未勝利時代には走ったことがあったものの、初勝利後は8F以上の距離を使われていただけに、1Fの距離短縮が懸念されたが、コディーズウィッシュはここも白星で通過。1年前には未勝利の身だった同馬が、初勝利から10カ月余りでG1勝ち馬の称号を手にするという、超速の出世を果すことになった。

 さらに、同馬の4歳最終戦となったのが、キーンランドを舞台としたG1ブリーダーズカップダートマイル(d8F)で、ここでも勝利を収めたコディーズウィッシュは、北米ダートマイル路線の頂点に立った。

 5歳となった今季も現役に留まった同馬。5月6日にチャーチルダウンズ競馬場で行われたG1チャーチルダウンズS(d7F)、6月10日にベルモントパーク競馬場で行われたG1メトロポリタンH(d8F)を、いずれも快勝。4歳5月から継続している連勝を、6に伸ばしている。

 破竹の勢いにあるコディーズウィッシュだが、G1ホイットニーSにおけるポイントは、9Fの距離にある。未勝利時代に経験して以来、2年ぶりに走る9Fをいかにこなすか。ここでも勝利を収めることが出来れば、ブリーダーズCでは昨年制しているダートマイルではなく、d10FのG1クラシックに挑む構想を、陣営は既に明らかにしている。

 前走から8週間のインターバルが空いたが、7月30日にサラトガ競馬場で、4F=48秒28、5F=61秒80、7F=1分27秒0の追い切りを消化。見守ったモット師は、「パーフェクトだ。完璧な調教というのがあるとしたら、今日の彼の調教が、まさにそれだ」と、絶賛している。

 G1ホイットニーSでコディーズウィッシュが相対するのは、昨年のG1ブルーグラスS(d9F)勝ち馬で、前走G1メトロポリタンHがコディーズウィッシュの2着だったゼンダン(牡4、父アップスタート)、7月8日にベルモントパーク競馬場で行われたG2サバーバンS(d10F)を制し、自身2度目の重賞制覇を果したチャージイット(牡4、父タピット)らになる。

 一方、ここを目標に調整されていた、G2アリシーバS(d8.5F)を含む重賞2勝馬スマイルハッピー(牡4、父ランハッピー)は、7月28日の調教後に、右前脚に挫跖を発症。ここは回避することになった。

 日本から、ウシュバテソーロ、デルマソトガケらが参戦の構えを見せているG1BCクラシックを占う、大きなヒントを与えてくれるであろう、5日(土曜日)のG1ホイットニーSに、ぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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