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【キーンランドC】ナムラクレアが重賞4勝目 祖母は二十世紀を代表する一族の牝馬

  • 2023年08月28日(月) 18時00分

ミッキーアイル産駒のGI初制覇が見えてきた


重賞レース回顧

1番人気ナムラクレアがキーンランドCを制す(撮影:高橋正和)


 圧倒的な1番人気に支持された4歳牝馬ナムラクレア(父ミッキーアイル)の、2021年小倉2歳S、2022年函館スプリントS、2023年シルクロードSに続く重賞4勝目だった。

 距離芝1200mには1分07秒1(北九州記念3着)を筆頭に、1分07秒台の快速記録が4回もある。逆に、今回のキーンランドCを中心に「1分09秒台-11秒台」の重馬場-不良馬場でも【2-1-0-0】。スピード型ながら馬場を問わない。

 ここまでの全5勝が1200mに集中し、1400m以上は【0-2-2-2】。スプリンターではあるが、4歳の今季はスピード能力だけでなく、好スタートから少し行きたがってなし崩しになり、もっとも苦しかったマイル戦のヴィクトリアマイル(東京)でも1分32秒9を記録。バテたから8着「0秒7差」という内容ではなかった。

 もともと3歳春の「桜花賞」に2冠馬スターズオンアースと0秒1差の1分33秒0がある。1200mベストは確かでも、いまなら1600mでも勝ち負けできるのではないかと思わせるほどの力強さだった。レース上がりは「11秒5-11秒8-12秒3」=35秒6。前半から折り合っていたこともあるが、残された記録は見た目以上の完勝だった。

 ナムラクレア(母サンクイーンII)は浦河町の名門谷川牧場の生産馬。3代母クドジェニー(父ミスタープロスペクター)は、輸入されて成功した凱旋門賞馬バゴ(産駒クロノジェネシスなど)の祖母でもある。また、フラワーCを制し直後の皐月賞で1番人気になった谷川牧場生産の牝馬ファンディーナ(父ディープインパクト)の3代母にもあたる。

 ナムラクレアから数えて5代母はノーザンダンサーの半妹で、ヘイローとはイトコ。そのイトコ同士の組み合わせの産駒がナムラクレアの4代母クドフォリ(1982)。谷川牧場を中心に数多くの生産牧場で、この二十世紀を代表する一族の牝馬は輸入されている。

 ナムラクレアの父ミッキーアイルは、いまや世界のディープインパクト直仔。ナムラクレアは重賞4勝馬。ミッキーアイル産駒はまだGI制覇に手が届いていないが、ナムラクレアによるスプリンターズS制覇が近づいた。

 果敢に先手を主張して2着に粘り切った8番人気のシナモンスティックは、2009年のNHKマイルCを10番人気で抜け出して完勝したジョーカプチーノ(父マンハッタンカフェ)の産駒。重馬場のためライバルの出足が鈍かったこともあるが、積極策と、コース取りが絶妙だった。今年2勝を中心に6戦すべて5着以内のしぶとさが身上。母の父は7番人気だったスプリンターズSの勝ち馬マイネルラヴ。3代母はスプリンターズSを2連覇したメイワキミコ。血統背景通りの快走だった。

 3着のトウシンマカオ(父ビッグアーサー)は、置かれずに好位を追走できたが、4コーナーで並んでいたナムラクレアの内で狭くなったのが不運。スムーズにスパートができずシナモンスティックの内に行かざるをえなかった。脚を余した印象が残った。

 4着シュバルツカイザー(父ダークエンジェル)は、今回は後入れの16番枠なので好スタート。勝ち馬とともに馬場のいい進路を選ぶことができたが、ゴール寸前まで続いた2着争いで一歩及ばなかった。今春から短距離1200m路線に転向して【2-1-0-2】。ただし、負けた3戦は「0秒2-3」差。もうひと回りのパワーアップが望めるはずだ。

 上位人気馬では、7着キミワクイーン(父ロードカナロア)は内の4番枠が大きな不利。
直線、内を狙うしかない形になっては苦しかった。

 8着ゾンニッヒ(父ラブリーデイ)は道中ちょっともまれたため、直線は外に出したがすでに手応え一歩。重馬場にまで悪化したのが痛かった。

 10着ナランフレグ(父ゴールドアリュール)は、重馬場だった2022年の高松宮記念を勝っているが、その時の勝ち時計は1分08秒3。今回は勝ったナムラクレアでさえ1分09秒9。同じ重馬場発表でも、あの時の中京より馬場の内側が悪すぎた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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