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ワクワクする3歳戦

  • 2023年09月21日(木) 12時00分
 9月18日、月曜日。真夏のような暑さのなか、セントライト記念が行われた。

 その発走間際になって、直線がかなり強い追い風になっていることに気がついた。どの馬も最後は流れ込むように走れるので、もっと早く気づいていれば、12レース中10レースで先行馬が馬券に絡むというこの日の傾向を味方につけて、いい思いをすることができたかもしれない。

 セントライト記念で圧倒的1番人気に支持されたソールオリエンスは、レーベンスティールに1馬身3/4離された2着に敗れた。直線入口でついていた差が、追い風の影響もあったのか、最後まで縮まることはなかった。それでも、今回は4コーナーで逆手前にならず綺麗に回っていたし、直線で左手前にスイッチしてからは、右手前に戻すことなく走り切った。まだこれがキャリア5戦目。道中、急がずにじっくり構えるレースをさせた結果のことだから、悲観する必要はない。10月22日の本番、菊花賞を楽しみに待ちたい。

 菊花賞の前にもうひとつ、出走メンバーを見ただけでワクワクが止まらなくなる3歳馬のレースがある。10月1日、日曜日に盛岡のダート2000mで行われる第36回ダービーグランプリである。

 目玉は、やはり、史上2頭目となる無敗の南関東三冠制覇を達成したミックファイアだ。過去6戦はすべて大井。7戦目のここが初めての他場となり、初めての輸送、そして初めての左回りとなる。

 先日インタビューした御神本訓史騎手によると、左回りを使うのは、陣営が、同じ左回りが舞台となるJRAのダートGI、フェブラリーSとチャンピオンズCを見据えてのことのようだ。

 これまでの6戦はすべて2着をコンマ5秒以上突き放す圧勝だったが、今回が初めての接戦になるかもしれない。

 そう思わせる相手の筆頭は、4月8日にアメリカ、サンタアニタパーク競馬場で行われたG1サンタアニタダービーでハナ差の2着に惜敗したマンダリンヒーローだ。ここがミックファイアとの初対決となる。

 筆者は1990年代半ばから武豊騎手らと毎年サンタアニタパーク競馬場を訪れていた時期があり、向こうの人馬のレベルの高さを嫌というほど見せつけられてきた。世界一サラブレッドの生産数の多いアメリカのメイントラックであるダートを舞台とした、G1中のG1のひとつと言えるサンタアニタダービーで、日本の馬が「勝つのではないか」と思われた僅差の2着になったとき、私は、喜びよりもまず、日本人としての誇らしさを感じた。

 そのマンダリンヒーローとこれまで3回対決して、3回とも2着に負かしているヒーローコールも登録している。ヒーローコールは南関東三冠初戦の羽田盃で単勝1.4倍の圧倒的1番人気に支持されたが、ミックファイアに6馬身離された2着に敗れ、主役の座を譲ることになった。ミックファイアとは2回戦って2回とも6馬身差をつけられたが、星の数よりメンコの数というやつで、JRAの中山を含む各地で場数を踏んできた強みが、初モノ尽くしのミックファイアとの差を縮める可能性は大いにある。ただ、前走の戸塚記念から間隔が詰まっているため、出てくるかどうか、動向を注視したい。

 これら3頭とも南関東の生え抜きということにも価値がある。JRAでは頭打ちだから地方に「降りてきた」というレベルでは通用しない「ダート新時代」に、すでに突入しているのかもしれない。あえて「降りてきた」とカッコでくくったのは、そう表現する南関東の関係者がいるからなのだが、それを死語にしてしまうだけの力が、これら3頭にはある。

 そしてもう1頭の注目株。史上7頭目のホッカイドウ競馬三冠馬となったベルピットの走りも楽しみだ。三冠はすべて圧勝で、通算10戦8勝2着2回と、高いレベルで抜群の安定ぶりを見せている。ミックファイアとの「三冠馬対決」は見モノである。

 10月1日は中山で第57回スプリンターズSがあるので、私は、盛岡には行けないかもしれない。時差があるものの、スルーセブンシーズが出走する第102回凱旋門賞もこの日なので、競馬ファンにはたまらない一日になりそうだ。

 秋の花粉症がキツく、目の痒みや眠気、倦怠感は春よりひどい。同じ症状のある方、何とか乗り切りましょう。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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