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ニューマーケット競馬場で注目が集まる無敗の4連勝馬

  • 2023年10月11日(水) 12時00分

世代のトップに躍り出たのは自家生産馬?


 7日(土曜日)にニューマーケット競馬場で行われた、牝馬限定のG1サンチャリオットS(芝8F)は、オッズ1.91倍の1番人気に応えてインスパイラル(牝4、父フランケル)が快勝。同馬の手綱をとったフランキー・デットーリ騎手は、ニューマーケット競馬場における通算勝利数が「500」の大台に到達した。

 チーヴァリーパークスタッドによる自家生産馬で、G1英1000ギニー(芝8F)2着馬スタースコープの4番仔となるのがインスパイラルだ。ジョン&セイディ・ゴスデン厩舎から2歳6月にデビュー。いきなり、G1フィリーズマイル(芝8F)を含む無敗の4連勝を飾り、世代のトップに躍り出た。

 その後、3歳時にロイヤルアスコットのG1コロネーションS(芝7F213y)、3歳時と4歳時にドーヴィルのG1ジャックルマロワ賞(芝1600m)を制している一方、圧倒的人気を裏切ってあっけなく敗退する場面も複数回見せてきた同馬。7日のサンチャリオットSは、馬群真ん中5番手で競馬をした後、中間地点通過後に馬群内に進路をとって進出。残り500mで先頭に立つと、ゴール前でもうひと伸びして後続に3.3/4馬身差をつける快勝。“On her day=(強い時)”のインスパイラルが、手の付けられない強さを発揮することを、改めてファンに印象付けた。

 引退へのカウントダウンがいよいよ最終章に入っている鞍上のフランキーは、ウイナーズサークルに戻ってくると、トレードマークとなっている「フライング・ディスマウント」を披露。競馬界のスーパースターによるこのパフォーマンスを、自分はあと何回目の前で見られるのか...、あるいは、これが最後の機会になるのではないか...と思うと、感慨が深まるのを禁じ得なかった。

 先週のブック1に引き続き、オクトーバーセールのブック2・ブック3が開催されるニューマーケットに、筆者は13日まで滞在を予定している。その13日にはニューマーケット競馬場で、フューチャー・チャンピオンズ・ウィークの初日が行われ、メイン競走として2歳牝馬のG1フィリーズマイル(芝8F)が組まれている。ここでのフランキーは、9月16日にリングフィールドで行われた条件戦(AW8F1y)を6.1/2馬身差で制し2勝目を挙げての参戦となる、マイケル・ベル厩舎のアンビエントアミーゴ(牝2、父ポストポーンド)に騎乗する予定だ。そこが、筆者がフライング・ディスマウントをイギリスで見る、最後のチャンスとなる。

 そして、フランキーにとってイギリスにおける最後の騎乗となるのが、10月21日にアスコットで行われるブリティッシュ・チャンピオンズ・デイだ。

 ここへ来て、ブリティッシュ・チャンピオンズ・デイにおけるフランキーには、強力な手駒が揃いつつある。

 メイン競走のG1チャンピオンS(芝9F212y)には、先週まで騎乗馬がいなかったのだが、7日(土曜日)の段階でフランキーの起用が決まったのが、ロヴァー・ヴェリアン厩舎のキングオブスティール(牡3、父ウートンバセット)である。

 今季初戦となったG1英ダービー(芝12F6y)で2着に好走した後、ロイヤルアスコットのG2キングエドワード7世S(芝11F211y)を制した同馬。その後は、G1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)3着、G1愛チャンピオンS(芝10F)4着と、大一番で健闘しながら大魚を逃してきた。キングオブスティールの鞍上はこれまで、馬主のアモ・レーシングと契約を交わしていたケヴィン・ストットが務めてきたが、愛チャンピオンSにおける騎乗ぶりに不満を抱いた馬主が、その段階でストットとの契約を解消。空席となったキングオブスティールの、G1チャンピオンSにおける騎乗者として、フランキー・デットーリに白羽の矢が立ったのである。

 フランキーは7日朝にニューマーケットヒースで、キングオブスティールと初コンタクト。8ハロンの調教を行ない、感触を確かめている。

 ブリティッシュ・チャンピオンズ・デイではこの他、G1ブリティッシュ・チャンピオンズ・スプリント(芝6F)で、このレースの連覇を目指すラルフ・ベケット厩舎のキンロス(セン6、父キングマン)、G2ブリティッシュ・チャンピオンズ・ロングディスタンスC(芝15F209y)で、ジョン&セイディ・ゴスデン厩舎のG1ゴールドC(芝19F210y)勝ち馬クラージュモナミ(セン4、父フランケル)に騎乗することが決まっているフランキー。これに加え、G1サンチャリオットSで5度目のG1制覇を果たしたインスパイラルが、馬の状態に問題がなければ、中1週でブリティッシュ・チャンピオンズ・デイのG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)に出走の構えを見せている。

 千両役者のフランキーが、イギリス最後の騎乗となるブリティッシュ・チャンピオンズ・デイでどのようなパフォーマンスを見せるか、今から非常に楽しみである。

 ブリティッシュ・チャンピオンズ・デイが終わると、フランキーはアメリカに移動し、11月3日と4日にサンタアニタで行われるブリーダーズCに騎乗することになっている。

 さらに、ブリーダーズCが終わるとオーストラリアに移動。フランキーは、11月7日にフレミントンで行われるG1メルボルンC(芝3200m)で騎乗する予定となっている。これまでは、そのメルボルンCが現役最後の雄姿になると言われていたのだが、ここへきてフランキーは、12月10日にシャティンで行われる香港国際競走において、前出のキンロス陣営から騎乗依頼を受けていることを表明。現役生活を12月10日まで継続する可能性に言及している。

 そうなると、12月10日のシャティン開催が、筆者にとって、フライング・ディスマウントを目の前に見られる、本当に最後のチャンスとなりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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