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【秋華賞】傑出馬リバティアイランド 3冠制覇達成

  • 2023年10月16日(月) 18時00分

レースレーティング以上の能力


重賞レース回顧

秋華賞を制したリバティアイランド(撮影:桂伸也)


 ビッグレースで断然の人気馬が存在し、それが差し馬だったりすると予想外のスローの展開がある。今年は前後半の1000m「61秒9-59秒2」=2分01秒1(稍重)。2012年の3冠牝馬ジェンティルドンナの年が「62秒2-58秒2」=2分00秒4(良)だった。前半61秒9はそれに次ぐ史上2位タイの緩いペースとなった。

 スローに落ち込むと、思わぬ伏兵が上位に食い込むことがあるが、きわめて順当にリバティアイランド(父ドゥラメンテ)が快勝し、3冠制覇達成。上位5着までに食い込んだ馬はみんな人気上位馬だった。リバティアイランドが傑出した存在であるのは確かだが、差のない2着に押し上げたマスクトディーヴァ(父ルーラーシップ)以下の上位陣は、稍重馬場でこの流れのため走破時計は平凡でも、のちに示されるレースレーティング以上に能力を秘めているのではないかと思われる。

 リバティアイランドはこれで4つ目のGI制覇。早くも歴代の名牝に並びかける位置に上昇してきた。帰厩直後は500キロを超す馬体重。男馬のようにたくましさを増した馬体は、見方によっては中距離型でもマイラーに近いタイプにも映り、これからはあまり距離が延びないほうがいいのではないか。そんな関係者の見方もあったが、レース当日は全体に大きくなって迫力を増していたものの476キロ。

 全体のシルエットは、3歳戦だけでなく古馬になっても2400m級をこなした父ドゥラメンテ、さらにはその父キングカメハメハに良く似た印象を与えるようになった。古馬相手の2400m級も平気だろう。

 流れを読んで早めに4コーナー手前からスパートし、紛れを生じない確勝態勢に導いた川田将雅騎手(この日誕生日の38歳)は、武豊、福永祐一、C.ルメールに次いで4人目の3歳GI(7鞍)完全制覇となった。

 2着したマスクトディーヴァは、心配された前走の反動がないことを中間の長めからの調教で確認し、馬体重も前2戦と同じ444キロ。このペースで中団より後方追走は予定外だったと思えるが、リバティアイランドを射程に入れていた。

 だが、4コーナー手前から先に勝ち馬にスパートされ、外に出そうとして他馬と接触の不利もあった。上がり33秒5は勝ち馬の33秒6を上回っていたが、1馬身だけ及ばずの2着。前走の1800m1分43秒0は、上位がみんなJRAレコード級の高速馬場だけに過信できないところがあったが、夏を経ての充実は本物だった。まだ今回が5戦目。リバティアイランドを追い詰める形になったのだから、まだ良くなるだろう。

 ルーラーシップ産駒のGI、GII勝ち馬は、ほとんど母の父がディープインパクトか、サンデーサイレンスの男馬だったので、マスクトディーヴァ(母の父ディープインパクト)は注目のルーラーシップの牝馬でもある。

 3着ハーパー(父ハーツクライ)はまず崩れない。やや詰め甘い印象を残しての善戦止まりが連続するが、現在3連敗中の勝ち馬がすべてリバティアイランドだから仕方がない。春より鋭く映るシャープな体型になった。これからまだ成長するはずだ。

 4着ドゥーラ(父ドゥラメンテ)、5着モリアーナ(父エピファネイア)は、今回はワンパンチ足りない善戦にとどまったが、このあとまたリバティアイランドと対戦することになる路線とは限らない。GII、GIII重賞なら勝ち負けだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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