息が入りすぎるほど楽なペースになった
菊花賞を制したドゥレッツァ(撮影:下野雄規)
圧勝したのは5連勝で「菊花賞」を制したドゥレッツァ(父ドゥラメンテ)だったが、レース直後の印象は、鞍上C.ルメール騎手(44)の痛快なレース運びにライバル16頭が完全に翻弄(ほんろう)されてしまったのではないか、だった。
最外の17番枠から互角の好スタートを決めると、少し行く気になったドゥレッツァを抑えることなくハナへ。意表をつかれたパクスオトマニカ、リビアングラスが競り合うことなく控えると、前半1000mは「60秒4」。
そのあと長距離戦のパターン通り中間の1000mは一気にペースが落ちて「64秒1」。一旦、インの3番手に下げ先行の2頭にハナを譲ると、息が入りすぎるほど楽なペースになり自身の中盤1000mは前と差があるので「64秒8前後」と推定される。レースの終盤の1000mは「58秒6」。ドゥレッツァ(ルメール騎手)自身の最後の1000mはおそらく58秒を切り、推定「57秒9」前後に達していた。
直線が平坦の京都に菊花賞では、スローだと最後の1000mが59秒前後にペースアップすることは必ずしも珍しくなく、超スローだった1996年はレースの終盤1000mが「58秒1」だった。勝ったダンスインザダークの上がりは3000mの菊花賞なのに「33秒8」である。ドゥレッツァの終盤1000m57秒9は猛然と伸びたダンスインザダークには及ばないものの、そうは差がないのではないかと思える。
中盤がかなりスローになった結果、13着のウインオーディンまで各馬の上がりは34-35秒台だった。この上がりの速いレースで、最後は3馬身半も抜け出したドゥレッツァの素晴らしい能力だけが光った。
2着タスティエーラ(父サトノクラウン)、3着ソールオリエンス(父キタサンブラック)は、もちろん結果論で、2頭ともに勝ち馬を讃える側に回るしかないが、レースの流れにまったく乗れなかったというより、中盤に13秒台のラップが2回も生じている。そのため前半1600m通過「1分39秒4」の超スローに陥ったあたりで、たとえ少しでも順位(位置)を上げていたなら…の悔いが残ったのではないか。
人気のソールオリエンスは、J.モレイラ騎手騎乗のタスティエーラを射程に入れてマークするレースになるのはレース前から予測された。そのタスティエーラは皐月賞、日本ダービーと違って考えられた好位追走のレース運びではなかったのが、大きな誤算だった。ともに最後は伸びながら、逆にドゥレッツァ(ルメール騎手)に突き放されているのだから仕方がない結果であり、完敗を認めるしかないが、中盤を超スローに落とす、かなり古典的な戦法にはまってしまった物足りなさは残った。
菊花賞では、春のクラシック不出走馬の勝ち馬が誕生するケースが増えているが、21世紀になった2001年以降、3冠馬3頭「2005年ディープインパクト、2011年オルフェーヴル、2020年のコントレイル」を含めて、春のクラシック出走組の菊花賞制覇は「11回」。逆に春の2冠ともに不出走馬が「12勝」となって再び逆転した。
春のクラシック1冠馬同士の対決は23年ぶり。近年、こういう2頭の菊花賞での対決はなかったが、ともに敗れて21世紀に移って以降、菊花賞を制した2冠馬は2012年のゴールドシップだけの歴史が続くことになった。
種牡馬ドゥラメンテ(その父キングカメハメハ)産駒は、秋華賞のリバティアイランドと連続してGI制覇。ここまで3世代の産駒だけで(Jpn1を合わせ)、7頭のGI勝ち馬が計13勝を記録したことになった。大変な記録である。残るのは2歳世代と、1歳馬。さらに増えるだろう。