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春のオーストラリア最強馬決定戦 注目を集めるロマンチックウォリアー

  • 2023年10月25日(水) 12時00分

G1コックスプレートが開催


 春のオーストラリアで中距離王者決定戦的位置付けにあるG1コックスプレート(芝2040m、ムーニーバレー競馬場)の開催が、今週土曜日(28日)に迫っている。

 春のオーストラリア競馬と言えば、抜群の知名度を誇るのがフレミントン競馬場を舞台としたG1メルボルンC(芝3200m)で、賞金額の面でも、街ぐるみの盛り上がりという点でも、メルボルンCはコックスプレートを遥かに凌駕する。

 しかし、メルボルンCは距離が、近代競馬の主流からすると長すぎる3200mで、しかもハンディキャップ戦だ。条件的に「最強馬を決める一戦」とは言い難いのが実情である。これに対し、コックスプレートは距離が2040mで、斤量は「馬齢重量」だ。舞台となるムーニーバレー競馬場のトラックは形状がかなり特異で、最強馬決定戦の舞台として必ずしも最適とは言えないのだが、それでも、競走馬としての能力値を策定するという意味では、コックスプレートこそがその機会であるというのが、大方の見るところである。

 コックスプレートは、遠征費用を全て主催者が負担する「招待競走」だが、残念ながら今年は日本調教馬の出走はない。ほぼ同じ日程で、東京競馬場を舞台とした2000mのGI天皇賞(秋)が組まれているので、この路線のトップホースがこの時季に日本を留守にするのは、なかなかに難しい。それでも、路面や馬場の形状を鑑み、天皇賞(秋)よりはコックスプレートに適性があると判断できる馬の遠征があってもおかしくはなく、実際に2019年にはリスグラシューが鮮やかな競馬を見せてコックスプレートに勝利している。来年以降は、ここに挑む日本馬が現れてほしいものである。

 その、日本馬がいない今年のコックスプレートで、大きな話題となっているのが、香港から遠征しているロマンチックウォリアー(セ5、父Acclamation)だ。

 アイルランド産馬で、祖母がカナダのG1EPテイラーS(芝10F)勝ち馬フォークオペラという血統背景を持つ同馬は、タタソールズ10月1歳市場に上場されたところ、香港ジョッキークラブに30万ギニー(当時のレートで約4430万円)で購入されている。

 ダニー・シャム厩舎から21年10月にデビュー。無敗の5連勝で、香港4歳3冠初戦の香港クラシックマイル(芝1600m)を制する快進撃を見せた。ちなみに、このうち4戦で手綱をとっていたのは、J.モレイラ騎手である。

 続く4歳3冠2戦めの香港クラシックカップ(芝1800m)で4着に敗れて連勝が止まったが、その後は香港ダービー(芝2000m)、G1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)を連勝。香港チャンピオンアワードでは、最優秀中距離馬と最優秀4歳馬のダブルタイトルを獲得した。

 翌22/23年は6戦し、G1香港カップ(芝2000m)、G1クイーンエリザベス2世Cを含む3勝をマーク。敗れた3戦も全て2着を確保し、100%の連対率を誇った。年度代表馬に選ばれてもおかしくない成績だったが、このシーズンも3つのG1を手中にしたゴールデンシックスティという怪物がいたため、年度代表馬にはなりそこね、このシーズンは最優秀中距離馬のタイトルのみを手にしている。

 こうして迎えた今季、陣営がシーズン序盤の目標として照準を絞ったのが、コックスプレートだったのだ。同馬は、9月16日に香港を出国。日本から遠征しているブレークアップも入厩したウェリビー競馬場に入り、入国検疫を行ないつつ調整につとめた。

 ロマンチックウォリアーのオーストラリア初戦となったのが、10月7日にフレミントン競馬場で行われたG1ターンブルS(芝2000m)で、オッズ2.45倍の1番人気に推された同馬は、3〜4番手を追走。3〜4コーナーでペースが上がると置かれ気味になり、一旦中団まで下がったが、そこから粘り強く伸びて、勝ったゴールドトリップ(牡6)から4馬身差の4着でフィニッシュした。

 休み明けを使われた効果は絶大で、その後は調教の動きも目に見えて良化。23日(月曜日)には、レースでも手綱をとるJ.マクドナルド騎手が騎乗して、ムーニーバレー競馬場でレースコース・ギャロップを敢行。調教後、マクドナルド騎手は状態の良さに太鼓判を押した。

 ブックメーカーによる前売りを見ると、前走に続いてコックスプレートでも、ロマンチックウォリアーが1番人気に推される公算大だ。

 強敵となるのは、G1ターンブルSで自身2度目のG1制覇後、21日のG1コーフィールドC(芝2400m)は3着だったゴールドトリップ(牡6、父Outstrip)、G1アンダーウッドS(芝1800m)、G1マイトアンドパワー(芝2000m)と、コーフィールドでG1連勝中のアリゲーターブラッド(セ7、父オールトゥーハード)、10月14日にロイヤルランドウィック競馬場で行われたG1キングチャールズ3世S(芝1600m)の1、2着馬ファンガール(牝5、父Sebring)とミスターブライトサイド(セ6、父Bullbars)あたりだ。

 アジア代表のロマンチックウォリアーがどのような競馬をするか、今週土曜日はオーストラリアの競馬にご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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