イクイノックス、リバティアイランド級の活躍に期待
エリザベス女王杯を制したブレイディヴェーグ(c)netkeiba.com
ここまでのキャリア4戦だけ。重賞は未勝利。コースも距離も初めて。それでも断然1番人気に支持された3歳ブレイディヴェーグ(父ロードカナロア)の完勝だった。
当然、数々の死角はあったはずだが、5戦目で初挑戦のGIを制したブレイディヴェーグには、期待されていた通りの、あるいはそれを上回るくらいの素晴らしい資質が秘められていた。
まだ今回が5戦目。近年は、キャリアが浅い馬、予測できないスケジュールを強いられた馬など、誇る実績を持たない馬が次つぎとビッグレースを勝ち切る時代である。
ブレイディヴェーグ【3-2-0-0】には、来週のジャパンCに登場する【7-2-0-0】の4歳牡馬イクイノックス、牝馬3冠を含め【5-1-0-0】の3歳牝馬リバティアイランドに並びかけるくらい、このあとのさらなる成長と進撃に期待したい。
京都に戻ったので、アートハウス、伏兵ローゼライトの2頭が少し離すように先行したが、レースの流れは「前半61秒1-(11秒9)-後半59秒6」=2分12秒6。外回りの京都2200mに見られるスローに近いバランスだった。
人気の1頭ハーパー(父ハーツクライ)がいつもより前方の3番手、そのすぐ後にブレイディヴェーグ、府中牝馬Sでは後方に位置したルージュエヴァイユ(父ジャスタウェイ)も中位のインへ。出遅れたジェラルディーナ(父モーリス)以外は、みんなどういうペースになるのか、取るべきポジションを最初から分かっている。牝馬限定戦らしい難解な結果もありえたが、人気上位馬がこういう位置取りにおさまっては、レースは壊れない。1番人気馬から6番人気までの6頭が、上位6着までを独占する珍しい結果になった。
ほぼ予測された通りペースなので、この日の体調の良し悪しを含め、現在の能力通りの結果だったともいえる。ジェラルディーナは本来の能力全開とはいかなかったが、いつもパドックで落ち着かない仕草をみせるとはいえ、この日は最初からイレ込みに近い状態で発汗。懸念の出遅れが敗因というより、好調時のジェラルディーナではなかった。あの状態で差のない5着に押し上げたから立派だった。
勝ったブレイディヴェーグは、自在性を発揮して鞍上ルメール騎手の作戦通りのレース運び。目いっぱいに仕上げたが、キャリア4戦の馬とは思えない落ち着きがあった。距離は2400m級まで平気だろう。ルメール騎手がこの日の柔らかい馬場を心配していたように、良馬場の高速レースならさらに高い能力発揮があるはずだ。
2着ルージュエヴァイユは、松山騎手が人気のブレイディヴェーグを最初から射程に入れた位置。前回、ディヴィーナ(父モーリス)を上がり32秒7の切れ味でハナ差に追い詰めた切れ味は本物だった。祖母デインドリーム(独)は2011年、地元のバーデン大賞2400m(重馬場)を2分37秒52で独走のあと、凱旋門賞2400m(良馬場)では一転、10秒以上も速い2分24秒49の快時計で圧勝した。その片鱗を示す馬になりたい。
3着ハーパーは、理想の位置から切れ負けした印象があるが、難しい成長曲線を描くことが珍しくないハーツクライ産駒。ジリ脚ではなく、これから良くなる途上とみることができる。好馬体を誇るが、まだまだ若さの残る3歳馬の身体だ。
4着ライラックは惜しいというか、残念な4着だが、上がり34秒2は最速タイ。これまで早めに動いて結果が出たのは新馬戦だけなので、形を崩さず直線まで控えたのは作戦でもあるが、その直線、狭くなる不利が痛かった。
ゴール寸前、すごい勢い(上がり最速タイの34秒2)で伸びてきたサリエラ(父ディープインパクト)は、半兄サリオスと違って、体型はともかく、目黒記念の好内容が示すように2400-2500m級の方が合っているのかもしれない。