成し遂げた数々の“偉業”に最大の賛美を
ジャパンCを制したイクイノックス(撮影:下野雄規)
4歳イクイノックス(父キタサンブラック)が、レース前に多くのファンが思い描いた通りのレース運びを見せて4馬身差の独走を決めた。
レースでの総獲得賞金が歴代1位の22億円強に達したこと、GI連勝が最多タイの6競走に到達したこと、単勝の配当が2006年のディープインパクトと同じ130円だったこと、2016年に勝った父キタサンブラックと父子制覇だったことなど、すでに伝えられた通りで、もう改めてイクイノックス賞賛の言葉は見つからない。
直線でC.ルメール騎手の左手のムチが挙がったように見えたが、あれは持ち替えただけで、実際にはノーステッキの圧勝だった。
レース展開(各馬の並び)からして、みんなの想像した通りだった。ハナを切ったのは快速パンサラッサ(父ロードカナロア)。引きつけて逃げてはパンサラッサではない。このパンサラッサ(吉田豊騎手)の先導は芸術に近いペースだった。
昨2022年の天皇賞(秋)で果敢に飛ばしたペースは前半1000m通過「57秒4」だった。このジャパンC2400mの前半1000m通過は「57秒6」である。これだけでも驚くべき酷似だが、天皇賞(秋)の自身の走破タイムは「1分57秒6」。今回、パンサラッサは2400mを同じペースで飛ばしたので残念ながら最後は失速したが、先頭で通過した2000m地点は「1分57秒7」である。予測された筋書き通りのジャパンCの演出を担当したのは、パンサラッサ(吉田豊)だった。
イクイノックスは、東京2400mの昨年の日本ダービーの走破時計が「2分21秒9」。
今回はもっと追えば短縮できただろうが、理想の安定した内容で「2分21秒8」だった。
中3週を問題なく克服したイクイノックスは、再び中3週になる有馬記念に出走するのだろうか。しばらくのあいだ未定となる。
2着した3歳リバティアイランドも、懸命に差を詰めようとがんばった4歳スターズオンアースも、同じドゥラメンテ産駒の牝馬。ともに東京2400mはオークス優勝につづき今回が二度目。パワーアップした能力を示すように、リバティアイランドは0秒6、スターズオンアースは1秒3も走破タイムを短縮している。たしかにイクイノックスには完敗だったが、イクイノックスを射程に入れて進む正攻法のレース運びで、期待通りの結果を出したから立派な内容だった。
4着ドウデュース(父ハーツクライ)、5着タイトルホルダー(父ドゥラメンテ)、6着ダノンベルーガ(父ハーツクライ)は、やや不満の残る内容だったところもあるが、3頭ともにほぼファンの支持順通りの着順。順当なレースだった。
11月12日の「エリザベス女王杯」も、上位6番人気までの期待馬が少し着順を変えただけで上位6着までを独占する珍しい結果だったが、この「ジャパンC」もまったく同じ。上位6番人気までの注目馬が上位6着までに並ぶ結果だった。とくにジャパンCは、せっかくの3連単的中がプラスとならなかった記者やファンがいっぱい出現したが、紛れの生じにくい厳しい展開になり、勝ったのはチャンピオン。みんな納得した。
日本馬断然有利になったジャパンCは、これで2006年のディープインパクト以降、日本馬が18連勝。かつ、日本馬が3着まで独占が実に17年も連続したことになった。
レースの中身は充実し、今年は売得金額も増えた。このことは喜ばしいが、各国のチャンピオン級が来日しないのは「地元の日本馬が強いから…」という理由だけではない物足りなさは、世界のビッグレースで、長いあいだジャパンCだけなのも事実だ。