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【チャンピオンズC】レモンポップにふさわしい勝ち方だった

  • 2023年12月04日(月) 18時00分

秘める可能性に賭けた陣営の展望も見事だった


重賞レース回顧

チャンピオンズCを制したレモンポップ(c)netkeiba.com


 初距離1800m、中京に移って過去9回は良績のない最外枠、マイラー体型…などの死角がささやかれたが、それでも1番人気に支持されたレモンポップ(父Lemon Drop Kid)の快勝だった。

 調教方法を変え、挑戦に踏み切ったレモンポップの秘める可能性に賭けた陣営の展望も見事だったが、さまざまに考えられた戦法の中から「自分たちで主導権を握ってレースを作る」ことを実行した坂井瑠星騎手(26)の会心のGI制覇だった。

 決まり手のレース短評は「逃げ切り」となるが、別に何かから逃げたわけでもなく、チャンピオンらしく自らレースを主導し、そのまま先頭で押し切ってみせたのが今回のレモンポップ(坂井瑠星)にふさわしい勝ち方の短評と思える。

 体型から初距離1800mに不安があったのは陣営も認める大きな死角だったが、もっと厳しい流れだった東京ダート1600mの自身の前後半は「推定47秒3-48秒3」=1分35秒6(最後12秒4)。東京のマイルが大丈夫なら、他場の1800mはこなせる。

 さらに充実して圧勝した南部杯1600mの前後半は、後半加速の「推定47秒4-46秒4」=1分33秒8。死角はあっても、実際の坂井騎手の不安は小さかったと思える。

 今回の中京ダート1800mの前後半は「48秒8-(12秒1)-49秒7」=1分50秒6。

 前半1000m通過は平均的な60秒9。タフなダートコンディションのため(7Rの1勝クラスは1分54秒4)、さすがに後半は苦しかったが、それでも最後「37秒3-12秒6」。初の1800mとすると時計以上の完勝だった。

 レモンポップは父母両系ともに典型的な北米血統。スピードとパワーで押し切ることの多いアメリカンタイプには、シャープな体型も珍しくない欧州タイプより、いかにも短距離-マイラー型と映るパワー体型のトップホースがいる。

 レモンポップが距離延長に対する不安をかかえていたのは衆目一致だが、成長すると同時にそうは寸詰まり体型にも映らない身体つきになっていた。だから1800mをこなした。これで選択肢は広がったが、陣営の今後の目標は1600m前後中心のビッグレースと伝えられる。正解と思える。

 2着に突っ込んだのは12番人気の伏兵ウィルソンテソーロ(父キタサンブラック)。

 一連のレースからすると、もっと評価されても不思議ない7勝馬だったが、まだ重賞未勝利のテン乗り原優介騎手(23)とあって、人気の圏外だった。だが、出遅れて追い込み策に徹したとはいえ、上がり36秒6は断然の最速。人馬ともに見事な快走だった。この時計のダートGIにフロックはない。評価急上昇。

 3着ドゥラエレーデ(父ドゥラメンテ)は、まだダート経験2戦だけの3歳馬。こちらも全体の評価は低かったが、芝GIのホープフルSの勝ち馬であり、母マルケッサ(その父オルフェーヴル)は、有馬記念、菊花賞などのサトノダイヤモンドの妹(父は同父系)。タフな底力勝負が合っていた。ダート界の層は厚い。

 2番人気で10着だった3歳セラフィックコール(父ヘニーヒューズ)は、無敗の5連勝馬。秘める資質は文句なしだが、居並ぶダート界の古馬を前にして、パドックから若さを出し、まるで萎縮したかのように落ち着きを欠いていた。

 3番人気で11着に沈んだ4歳クラウンプライド(父リーチザクラウン)の凡走は予想外だったが、パドックの後半から妙にせわしない小脚になり、肝心な気力の充実が見られなくなっていた。「気持ちが入っていなかった(川田騎手)」のコメント通りだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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