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英国を襲った暴風雨 影響は競馬開催にも…

  • 2024年01月10日(水) 12時00分

障害の名門厩舎も被害


 2024年最初のこのコラム、まずは、大変遅ればせながら、能登半島地震で被災された皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

 年明け早々、天候不順のために競馬サークルが大きな影響を受けたのが、競馬発祥の地・イギリスだった。

 1月6日(土曜日)、ロンドンの中心部から見て南西25キロほどの地点にあるサンダウン競馬場では、総賞金10万ポンドのユニベット・ベテランズ・ハンディキャップチェイスをメイン競走とした開催が予定されていたが、前日朝の段階で早々に中止が発表された。

 理由は、大雨によるコースの冠水だった。

 イギリスではクリスマス明けから、「ヘンク」と名付けられた強烈な低気圧が居座り、各地を暴風雨が襲来。一時、ユーロスターが全面運休になるなど、市民生活に大きな影響が出ていた。

 サンダウン一帯も例外ではなく、競馬場もそれなりの対応をして6日の開催に備えていたが、追いうちをかけたのが、4日(木曜日)午後から5日(金曜日)にかけて地域一帯を襲った、34ミリの大雨だった。5日朝の段階で、スティープルチェイス用コース、ハードル用コースとも、随所が冠水。その後の24時間で劇的な改善は見込めないとして、この段階で6日の開催中止を決めたものだ。

 2024年になってからの中止は、2日のフェイクナム競馬場、3日のフォスラス競馬場とハンティンドン競馬場に続き、6日のサンダウン競馬場が4開催めだった。さらに週が明けても、8日(月曜日)にスコットランドのエア競馬場で予定されていた開催が中止に追い込まれている。

 また、差し迫った競馬開催は予定されていないものの、ウースターシャーのウースター競馬場、ウォリックシャーのストラトフォード競馬場なども、コースが完全に冠水する被害に遭った。

 さらに、大雨の洗礼を受けたのは競馬場だけではなかった。英国南西部サマーセット州のディッチートにある、ポール・ニコルス厩舎の一部が水に浸かったのが、4日(木曜日)夜のことだった。

 ポール・ニコルスと言えば、英国で障害のチャンピオントレーナーになること14回、チェルトナムゴールドC4勝を含めて3500勝以上の勝ち星をあげているという、大御所中の大御所である。

 現在も、昨年のチェルトナムフェスティバルでG1ゴールデンミラーノーヴィスチェイス(芝19F168y)を制したステージスター(セン8)、G1スパノーヴィスハードル(芝23F213y)を制したステイアウェイフェイ(セン7)、12月30日にニューバリーで行われたG1チャローノーヴィスハードル(芝20F118y)を制したキャプテンティーグ(セン6)など、トップホースたちが綺羅星の如く並ぶスター軍団である。

 近隣を流れる川の堤防が崩れたのが4日の夕方のことで、あふれ出た水がニコルス厩舎の敷地内に侵入。敷地の中でも最も低地にあるハイブリッジという名称の厩舎では、馬の膝下まで水嵩が増す事態となった。

 こうなる危険を想定していたニコルス調教師は、アシスタントのチャーリー・デイヴィーズ、ヘッドラッドのクリフォード・ベイカーらとともに、日没後も厩舎に滞在。ハイブリッジに入っていた6頭を、他の建物に移動したのが、夜10時30分のことだった。

 ニコルス師によれば、木曜日に降った雨は「これまで経験したことがないほど、激しいものだった」とのこと。ニコルス師がディッチートを拠点とするようになったのは1991年だったが、30年を超える歳月の中で、厩舎が冠水したのはこれが2度目のことだったそうだ。

 幸いなことに、翌5日(金曜日)朝までに水は引き、この日の調教は滞りなく行うことが出来た。

 イギリスでは、障害シーズンのハイライトとなるチェルトナム・フェスティバルの開催を3月12日〜15日に控え、競馬ファンがおおいに盛り上がる季節を迎えている。天候に左右されるのは、屋外スポーツである競馬の宿命ではあるが、少しでも良いコンディションで競馬開催が行われていくことを祈っている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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