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「ダブリン・レーシング・フェスティバル」の開催を控えたアイルランド

  • 2024年01月31日(水) 12時00分

有力馬主夫妻があることを宣言し、関係者などを驚かせた


 アイルランドでは今週末の3日と4日、障害のビッグイベント「ダブリン・レーシング・フェスティバル」が、レパーズタウン競馬場で開催される。

 これを翌週末に控えた25日、アイルランドのある有力馬主が突如として「馬主業をやめる」と宣言し、関係者やファンを驚かせている。

 唐突な幕引きを宣言したのは、コールドウェル・コンストラクション社の名義で馬を所有している、アンディ(43歳)とジェマ(41歳)のブラウン夫妻だった。

 建設会社を興して若くして成功したブラウン夫妻が、ミース郡のロングウッドを拠点とするゴードン・エリオット厩舎を中心に、現役馬を持ち始めたのは、5年ほど前のことだった。以降、夫妻は今日まで、5つのG1を含む12もの重賞を制するという、馬主としては極めて稀れと言って過言でない成功を収めてきた。

 初めて持った大物が、20年10月にドーヴィル競馬場で開催されたアルカナ・オータムセールにて8万8千ユーロで購買していたフィルドール(父ドクターディーノ)で、この馬が21年11月28日にフェアリーハウス競馬場で行われたG3プライスブーストジュベイルハードル(芝16F)を制し、夫妻は初めての重賞を手にした。フィルドールはこれを皮切りに、3重賞を制する活躍を見せている。

 夫妻がさらに大きな喜びに包まれたのが、重賞初制覇からわずか1カ月後のことだった。20年8月のタタソールズ・アイルランド・ダービーセールにエントリーされるも、欠場となった後に、直接交渉で購買したマイティポッター(父マルタリーン)が、21年12月27日にレパーズタウン競馬場で行われたG1フューチャーチャンピオンズノービスハードル(芝16F)を制し、ブラウン夫妻はG1初制覇を果したのである。

 マイティポッターはその後、22年4月にパンチェスタウン競馬場で行われたG1チャンピオンノービスハードル(芝16F100y)、22年12月にフェアリーハウス競馬場で行われたG1ドリンモアノービスチェイス(芝19F165y)、23年2月にレパーズタウン競馬場で行われたG1ラドブロークスノービスチェイス(芝21F44y)を制覇。G1・4勝という極上の成績を残した。

 ブラウン夫妻の赤と白の勝負服を背にした最新のG1勝ち馬が、昨年12月27日にレパーズタウン競馬場で行われたG1フューチャーチャンピオンズノービスハードルを6.1/2馬身差で制したコールドウェルポッター(父マルタリーン)である。マイティポッターの全弟にあたり、21年6月のゴフスランドオーヴァー障害馬セールにて20万ユーロで購買されたコールドウェルポッターは、年が明けて6歳となった今年、チェルトナムフェスティバル初日に組まれたG1シュプリームノービスハードル(芝16F87y)へ向けた前売りで、オッズ11〜15倍の4〜6番人気に推されている。

 これほどの成功を短期間に収めたブラウン夫妻が、なぜ突然に馬主業からの撤退を決断したのか。

 歓喜の瞬間に数多く立ち会ってきた一方で、受け入れがたいほどの悲しみにも見舞われてきたことが、その背景にあった。

 前述したG1・4勝馬マイティポッターが、23年4月9日にフェアリーハウス競馬場で行われたG1ウイローウォームゴールドCチェイス(芝19F170y)に出走。チェルトナム競馬場のゴールドCも狙える逸材と言われ、ここでも1番人気に推されていたマイティポッターだったが、3番手を追走して迎えた第10障害で飛越に失敗して転倒。予後不良と診断され、安楽死処分がとられたのである。

 悲劇が再び夫妻を襲ったのが、今年の1月24日だった。ブラウン夫妻が所有し、G.エリオットが管理するディービークーパー(セン5、父ゲートウェイ)が、フェアリーハウス競馬場で行われたメイデンハードル(芝16F)に出走。ここまで2戦し、いずれも2着に健闘していた同馬は、2番人気に推されていた。だが同馬は、8号障害飛越後に急速に失速し、競走を中止。重篤な怪我を負ったディービークーパーもまた、安楽死処分となった。

 夫妻は、そのわずか2週間前にも、スムースプレイヤー(セン7、父ゲートウェイ)という所有馬をアクシデントで失くしていたことを、X(旧ツイッター)で公表。ブラウン一家は全員が大きな衝撃を受け、現実を受け止めることが困難になっている現状を綴った。こうして出した結論が、「エリオット調教師他、関係者の方々には心から感謝している」としながらも、「競馬から離れることを決めた」のである。

 コールドウェル・コンストラクション社が所有する29頭は、2月5日にタタソールズ・アイルランドが主催する「アンディ&ジェマ・ブラウン・ディスパーザルセール」に上場されることになった。

 全頭がノーリザーブで上場される29頭の中には、前述したG1フューチャーチャンピオンズノービスハードル勝ち馬コールドウェルポッターも含まれている。実はこの馬、ダブリンフェスティバル2日目(2月4日)に組まれたG1第50回ダービーセールノービスハードル(芝16F)にエントリーしていて、有力馬と目されていたのだが、残念ながらここを回避することになった。

 同馬が、誰の服色を背に3月のチェルトナムフェスティバルに臨むことになるのか、ディスパーザルセールの結果が注目されている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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