秋に向けて大きな展望の広がる、スケールあふれる「新星」が出現した。2戦2勝で挑戦のロックドゥカンブ(父レッドランサム)は、ちょっともたついて置かれた前回とは一変、先行集団の前につけるとペースの上がった3コーナー手前から自分でスパート。正攻法のレース運びで楽々と後続を完封してみせた。着差は1馬身半でも、ゴール前はまだまだ余力十分。期待以上の完勝だった。
南半球生まれとあって52kgの軽ハンデに恵まれてはいたが、たとえ54〜55kgでもレース内容はおそらく同じだったろう。ファミリーもかなり魅力的で3代母ゲイリー(父サーゲイロード)は、ファインモーション、種牡馬ピルサドスキー兄弟の3代母でもある。母方に配されてきた種牡馬は、フェアリーキング…エラマナムー…。底力、成長力に期待もできる。父レッドランサム(その父ロベルト)は、この父系にしてはあまりスタミナに富む産駒を送っていないが、2400m級程度ならまず問題はない。
夏は休ませたあと「秋の路線はまだ決めていない」というが、ひょっとすると3歳秋のファインモーションのような快進撃をみせてくれるかもしれない。
2着以下は、小回りの福島1800mのフルゲートとあって、また急激に内寄りの芝が傷んできたため、コース取り、枠順などが大きな明暗を分けることになった。2着に突っ込んだ14番人気の伏兵スクリーンヒーローは、終始インを通ってコースロスを防ぎ、直線もまた外に出るスペースはなかったため、思い切って内をついたのが正解。人気薄の気楽な立場もあったが、コース得を最大限に生かした好騎乗だった。
クランエンブレム、ハイソサエティーの人気馬2頭は、ともに内の「2枠」だったためなかなか外に出せず、クランエンブレムはずっともまれ通し。またハイソサエティーは勝負どころから外を回って差す形を取らざるをえなかったが、とくに大きな不利があったわけではなく、最後は「底力」不足を感じさせた。勝ったロックドゥカンブがスケールの違いを見せつけただけに、余計に迫力不足を思わせた。人気を集めたのはいかにも平坦に近い小回りの1800m向きのイメージが強かったからだが、馬場が急に痛んできたこと以上に、勝ち馬が強すぎたので非力感を与えてしまった。
牝馬で56kgのハンデを課せられたイクスキューズの小差3着は立派。スクリーンヒーローと同じように内からスルスル進出、最後までバテなかった。イクスキューズが善戦したため結果としてハンデ56kg(実質は58kgの意味)は妥当だったことになるが、ゴールドアグリの2歳初期の重賞を評価されての57kgはどう考えても不利なハンデだったろう。これはハンデキャッパーもつらいところで、この時期に3歳同士の限定重賞を「ハンデ戦」にするのはあまり意味のないことではないか。そんな声が改めて多くのファンや関係者から聞かれた。たしかに、ウオッカ級の馬が出てくる重賞ではないのだから、ハンデ戦にする意味は著しく乏しいように思える。