ヨーロッパの牝馬戦線で、熱い戦いが展開されている。
先週の日曜日(7月29日)にフランスのドーヴィルで行われた、牝馬限定の距離1600mのG1アスタルテ賞。イギリスとアイルランドの1000ギニーを制したフィンスケールビオこそ、馬場の悪化を嫌って回避したものの、仏1000ギニーでそのフィンスケールビオを破って優勝したダルジナ、独1000ギニーを9馬身差で圧勝した後、ロイヤルアスコットのG1コロネーションSに駒を進めて2着(3着ダルジナ)と健闘したマイエマ、英1000ギニーの3着馬で、その後ニューマーケットのジュライ開催を舞台に行われた牝馬限定のG1ファルマスSで古馬勢を破って優勝したシンプリーパーフェクトなど、3歳世代を中心に興味深いメンバーが顔を揃えた。
勝ったのは、地元フランスの3歳牝馬最強マイラー・ダルジナ(父ザミンダー)だった。2着に、仏1000ギニーの前哨戦G3ラグロット賞で、ダルジナの僅差の2着になった実績のあるミスヴィンスキー(父は、現在日本で供用されているストラヴィンスキー)が入り、3着がシンプリーパーフェクトと、上位は3歳世代が独占することになった。ちなみに、マイエマは7着に敗れている。
ダルジナを所有するアガ・カーン殿下の令嬢プリンセス・ザーラ、ダルジナを管理するアラン・ロワイヤデュプレ調教師は、いずれも昨年のマンデシャに続いてこのレース2連覇。ダルジナは今後、そのマンデシャも制したロンシャンの2000mのG1オペラ賞を、秋の大目標とするようである。
一方、そのマンデシャが出走を予定しているのが、今週土曜日(8月4日)にイギリスのグッドウッドで行われる、牝馬限定の距離9f192yのG1ナッソーSである。
3歳だった昨年、アスタルテ賞(1600m)、オペラ賞(2000m)に加えて、ヴェルメイユ賞(2400m)も制して、距離別3階級制覇をなし遂げたマンデシャ。今季初戦のG2コリーダ賞を快勝した後、G1サンクルー大賞でも5歳牡馬のマウンテンハイの2着と健闘(ちなみにマウンテンハイは、秋の目標をジャパンCに置いている)。その後キングジョージ出走も取り沙汰されたが、結局牝馬限定のナッソーSに矛先を向けることになったものだ。
ここで「ストップ・ザ・マンデシャ」を企てるのが、ライトシフトとピーピングフォウンという、3歳牝馬中距離路線の2トップである。
2歳9月に、デビュー3戦目のメイドンで初勝利を挙げるや、4連勝で英オークスまで突っ走りクラシック制覇をなし遂げたライトシフト。管理するヘンリー・セシルが、7年振りのG1制覇に感涙にむせんだ光景は、感動的であった。
一方、今年5月にデビュー4戦目で初勝利を挙げると、いきなり愛1000ギニーに挑んで3着となったピーピングフォウン。その後連闘で臨んだ英オークスでライトシフトの2着に健闘した後、古馬相手のプリティーポリーSでG1初制覇。勢いに乗って挑んだ愛オークスでも、ライトシフトに3馬身半の差をつける完勝を演じ、今や3歳牝馬ナンバーワンの地位を手に入れかけている。
この3頭の激突は、結果次第では凱旋門賞のオッズにも大きな影響を及ぼしかねず、日本のファンにとっても必見の戦いとなりそうだ。