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好メンバーの集まったG3フライングファイヴ

  • 2007年09月04日(火) 23時50分
 2日(日曜日)にアイルランドのカラ競馬場で行われた距離5fの重賞フライングファイヴは、格付けはG3ながら、興味深い顔触れによって争われた。

 1番人気に推されたのが、シェイク・モハメド夫人のプリンセス・ハヤが所有する4歳馬ダンディーマン。今年6月に「グローバル・スプリント・チャレンジ」第3戦として行われた、ロイヤルアスコットのG2キングズスタンドSの2着馬で、前走8月23日にヨークで行われたG1ナンソープSでも3着に入っている、5fのスペシャリストである。

 2番人気が、昨年のG1スプリンターズSに来日し(5着)、日本の皆さまにもお馴染みのベンバウン(セ6歳)。過去2年連続でこのフライングファイヴを制している他、昨年暮れのG1香港スプリントでも3着となっている実績馬である。この馬は、3歳時にもフライングファイヴで2着となっているから、このレース4年連続の出走となった。

 3番人気になったのが、日本で走り、現在はアイルランドで種牡馬として成功しているシンコウフォレスト産駒のモスヴェイル。もともとはタタソールズのオクトーバーセールで3万5000ギニー(約900万円)という廉価で購入されていた馬が、4歳10月にG3ベンティンクSで3着に入った10日後に開催されたタタソールズの現役馬セールに上場され、26万ギニー(約6800万円)という、元値の7倍以上の価格でトレードされて話題となった馬だ。翌5歳時には、ロンシャンのG2グロシェーヌ賞をはじめ3つの重賞を制し、G1アベイユ賞でも3着となっているから、高額で買ってくれた新馬主に充分に報いる成績を挙げていると言ってよいだろう。また、6歳になった今年の春には、5月31日にサンダウンで行われたG2テンプルSで2着となった後、中2日(2週ではありません、2日です!)のローテーションで、ドーバー海峡を隔てたフランスのG2グロシェーヌ賞に出て3着に入るという、タフネスさも見せていた馬である。

 G3でこれだけのメンバーが集まるというのは、それだけ欧州におけるこの路線の層が厚く、充実した戦線が展開されている証拠だろう。短距離路線の魅力は、マイル以上の路線に比べて、1頭の出走回数が圧倒的に多いことで、G1級であろうがしょっちゅう使ってくることも、G3にこれだけのメンバーが集まる理由だ。欧州5f路線には、8月23日に英国のヨークでナンソープSというG1があって、それが夏の大きな山場となるのだが、これが終わると次の山は10月7日にロンシャンで行われるG1アベイユ賞になる。この間は中5週だから、マイル以上の路線ならトップホースの多くはナンソープからアベイユへ直行ということになるだろうが、スプリンターたちはレース間隔をこれほど空けることはないから、このフライングファイヴや、9月16日にロンシャンで行われるG3プティクヴェール賞、9月22日にニューバリーで行われるG3ワールドトロフィーのいずれか(あるいは2戦)に使ってくることが多いのだ。

 日本も短距離路線が更に充実すれば、新潟のG3アイビスサマーダッシュあたりももっと面白いメンバーになって、短距離路線の人気が高まることになると思うのだが。

 さて、フライングファイヴの結果はと言えば、勝ったのはベンバウンで、このレース3連覇を達成。1歳時にタタソールズ・オクトーバーセールでわずか1万4000ギニー(約360万円)で購買された馬が、既に日本円にして1億2000万円以上の賞金を収得してるのだから、偉いものだ。

 ベンバウンは現在のところ、スプリンターズSに登録して選出馬となっているが、ぜひ今年も来日し、昨年以上のパフォーマンスを見せて欲しいものである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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