欧州2400m路線の締めくくりとなる凱旋門賞(10月7日、ロンシャン)。今年は12頭前後という手頃な頭数で争われることになりそうだ。
英国のブックメーカー各社のオッズを見ると、英国ダービー馬オーソライズド(牡3歳)が2.25倍のオッズで1番人気。愛ダービー馬ソルジャーオブフォーチュン(牡3歳)が3.5倍から4倍のオッズで2番人気。パリ大賞典の勝ち馬ザンビジサン(牡3歳)が5.5倍のオッズで3番人気と、上位人気を3歳勢が独占。古馬を代表するキングジョージ勝ち馬ディラントーマス(牡4歳)は8倍前後のオッズで4番人気と、予想外とも言える低評価に甘んじている。
この前評判を生んだ根拠の1つが、8月21日にヨークで行われたG1インターナショナルSにあるように思う。このレース、オーソライズドが勝って、1馬身差の2着がディラントーマスという結果だったが、内容は着差以上にオーソライズドの完勝だった。ここでの斤量は、古馬のディラントーマスが9ストーン5ポンド(約59.4kg)で、3歳のオーソライズドが8ストーン11ポンド(約55.8kg)で、2頭の斤量差は3.6kgだった。凱旋門賞における3歳と古馬の斤量差は3.5kgで、インターナショナルSとほとんど変わらないことから、ディラントーマスがオーソライズドを逆転するのは難しかろうとの見方が一般的になったと思う。
それでは、1番人気のオーソライズドが磐石の本命馬かと言うと、実はそうでもないというのが筆者の見方である。オーソライズドにとって最大の死角は、コース経験がないことだ。昨年ディープインパクトが遠征した際に散々書かれたことなので、御記憶の方も多いと思うが、ロンシャンというのは初コースの馬が戸惑うことが多い、トリッキーなコースと言われている。地元調教馬ザンビジサンが、この競馬場で既に3戦。愛国調教馬のソルジャーオブフォーチュンですら、既に2戦を経験しているのと比べると、未経験のオーソライズドはいかにも不利。しかも、これまでの6戦で唯一の右廻りだったサンダウンのエクリプスSで敗戦を喫しているという点も、懸念材料である。鞍上の名手フランキー・デトーリが、オーソライズドの持つ爆発的な瞬発力を活かすためにどんな乗り方をするかが、今年の凱旋門賞を左右する最大の焦点となりそうだ。
正直に言って驚かされたのが、前哨戦のニエユ賞におけるソルジャーオブフォーチュンの勝ち方である。不良馬場の愛ダービーを9馬身差で圧勝し、「道悪の巧いスタミナ型」と見られていたこの馬が、レースレコードで快勝。まさしく今、充実期を迎えていることを窺わせる内容だった。
そのニエユ賞では1番人気を裏切り3着と敗れたザンビジサンだが、97年のパントルセレブルや、04年のバゴのように、ニエユ賞での敗戦を糧に本番で巻き返した馬は少なくない。ニエユ賞当日は明らかに太めだったが、9月29日にシャンティーで行われた1週前追い切りで抜群の動きを披露したように、ひと叩きされた効果は明らか。7月にパリ大賞典を制した時の切れ味を取り戻しているとしたら、ニエユ賞でソルジャーオブフォーチュンとの間についた2.1/4馬身の差は、逆転してもおかしくないと思う。
この1年、ここだけに目標を絞って調整されてきたかに見えるマンデシャ(牝4歳)も、決して侮れない存在だ。牝馬の優勝は93年のアーバンシー以来途絶えているが、2着が牝馬というケースは過去10年で4度もあるという事実を忘れてはなるまい。
いずれにしても、見応え充分の凱旋門賞になりそうだ。