10月5日(金曜日)、ニューマーケット競馬場で、イギリスにおける2歳牝馬女王決定戦的位置付けにあるG1チェヴァリーパークSが行われ、日本で生まれ日本で走りフランスで種牡馬入りしたディヴァインライト(その父サンデーサイレンス)を父に持つナタゴラ(牝2歳)が優勝。来年の牝馬クラシックを目指す有力馬の一角に浮上した。
フランスのトップトレーナー・パスカル・バリーが管理するナタゴラは、今年5月、デビュー2戦目のシャンティーのメイドンで初勝利を挙げると、ロンシャンの準重賞、メゾンラフィットのG3ボワ賞、同じくメゾンラフィットのG2ロベールパパン賞と4連勝。続くドーヴィルのG1モルニ賞では2着に敗れたものの、勝ったのが来年の牡馬クラシックで有力視されているマイボーイチャーリーで、牝馬としてはこの世代でも屈指の実力の持ち主と目されていた。
それが証明されたのがG1チェヴァリーパークSで、初めての英国遠征を克服してG1初制覇を達成。大手ブックメーカーは来年の1000ギニーへ向けて、ナタゴラを11倍から13倍のオッズで3ー5番人気に掲げることになった。
ナタゴラの父ディヴァインライトは、社台ファームの生産馬で、現役時代は伊藤正徳厩舎の所属馬として26戦。重賞は勝てなかったが、GI・高松宮記念2着、GII・マイラーズC2着などの成績を残した。サンデーサイレンス系種牡馬全盛の昨今ではあるが、この程度の成績では日本で種牡馬として成功するのは難しい。一方、サンデーサイレンスの血の優秀性は世界的に知れ渡っており、引き合いがあってフランスに渡ったディヴァインライト。その1年目の産駒から、G1勝ち馬が出現したわけである。
筆者は8月にドーヴィルのモルニ賞に出走した際にナタゴラを見る機会があったが、サンデーサイレンスらしい細身で足長の馬を想像していたら、全く違っていた。むしろどっしりと重量感のある馬体は、母の父リナミックスが強く出ている感じで、道悪にも関わらず2着に頑張ったモルニ賞のレース振りにも、こうした馬場に滅法強いリナミックスの影響を感じさせた。しかし、チェヴァリーパークSで2着馬フリーティングスピリットと叩き合って首差先着したレース振りは、明らかにサンデーサイレンスの闘志を感じさせるもので、来年のクラシックが非常に楽しみになった。
ちなみに、ナタゴラの1つ下の妹で、ディヴァインライト同様にフランスで繋養されているアグネスカミカゼを父に持つ牝馬が、10月23日に行われるアルカナ・ドーヴィル・イヤリングセールに上場予定で、にわかに大きな話題となっている。また、ナタゴラの母レイナミクサが、ディヴァインライトを受胎した状態で12月にドーヴィルで行われるアルカナ・ディセンバーセールに上場を予定しており、これも世界各国から集まるバイヤーの注目を浴びる存在となりそうである。