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1歳牝馬の歴代ワールドレコード価格誕生

  • 2007年10月16日(火) 23時50分
10月9日から12日まで、英国のニューマーケットで開催された、欧州最高の1歳馬市場「タタソールズ・オクトーバーセール・パート1」は、ほぼ前年並みの売れ行きを示して幕を閉じた。

 市況は、総売上げが前年比17.9%アップの6492万ギニー、平均価格が前年の数字と100ギニーと変わらぬ127,298ギニー、中間価格が前年比2.4%ダウンの80,000ギニー、前年23.3%だった主取り率が今年は20.2%だった。
 
 今年はカタログに記載された馬が、前年より12%ほど多く、ある程度総売り上げが伸びることは折り込み済みだった。そんな中、前年と同水準の平均価格を維持し、なおかつ、主取率が向上したこの市況は、今年の1歳馬市場が世界的に縮小傾向にある中にあって、大健闘と言えるだろう。

 実は、市場開催前の関係者による予測は、もう少し悲観的なものだった。その主たる要因は為替レートで、御存知のように現在は英国の通貨である「ポンド」やEUの通貨である「ユーロ」が、極めて強い状態が続いている。欧州人にして見ると、米国の「ドル」はかつてないほど安い水準にあり、従って9月にケンタッキーで行われたキーンランド・セプテンバーセールでは、欧州人による非常に活発な購買が見られたのだった。すなわち、欧州人の「買い疲れ」が心配されていたのである。更に言えば、米国人にとって英国での買い物はかつてないほどの「割高感」があるわけで、米国人の「買い控え」も同時に懸念されていたのであった。

 それにも関わらず、市場として前年の規模を維持出来たというのは、上場馬の質が良かったからに他ならないと思う。最高価格は、最終日に登場した上場番号612番、父サドラーズウェルズ・母ブリジッドの牝馬だった。セール直前に行われた2歳牝馬によるアスコットのG1フィリーズマイルを勝ったリッスンの全妹という本馬。同じく姉にG1モイグレアスタッドS勝ち馬シーコヤーがいて、その子に仏オークスや愛1000ギニーで3着になったクイーンクレオパトラがいて、いとこにサフロンウォルデン、ドルフィンストリート、インサイトといったG1勝ち馬がいるというビカビカの良血馬だ。激しい争奪戦の末に、馬主のクレイグ・ベネット氏が250万ギニー(約6億3000万円)で購買したが、この価格は00年のキーンランド・セプテンバーで父ストームキャットの牝馬についた440万ドル(約5億2000万円)を上回る、1歳牝馬の歴代ワールドレコード価格だった。

 日本人によると見られる購買は6頭。叔母に英オークスのラヴディヴァインがいる牡馬(上場番号144番、父デインヒルダンサー)、叔父に英2000ギニー勝ち馬フットステップスインザサンドがいる牡馬(上場番号166番、父ロックオブジブラルタル)、今年のG1セントジェームスパレスS勝ち馬で、このあとBCマイルに参戦予定のエクセレントアートを兄に持つ牝馬(上場番号233番、父ファルブラヴ)、叔父に「神の子」と呼ばれた無敗のチャンピオン・ラムタラがいる牡馬(上場番号514番、父レッドランサム)、欧州のトップサイヤー・メディシアンの産駒で、馬体の良さが厩舎村で評判になっていた牡馬(上場番号594番、父メディシアン)、姉にG1フィリーズマイル2着馬トリートがいて、歩様の良さが際立っていた牡馬(上場番号653番、父ファルブラヴ)と、日本人によると見られる購買馬は極めて質の高いラインナップになっている。また、日本向きの馬ばかりが揃った印象があり、来年度のPOG指名ではぜひ御注目いただきたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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