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香港での雪辱を期すチャップルハイアム調教師

  • 2007年12月04日(火) 23時50分
 今週末は、シャティン競馬場を舞台とした香港国際競走が行われる。「マイル」に挑むコンゴウリキシオー、「カップ」に挑むシャドウゲイトとも、シャティンの芝に合いそうなタイプだけに、いずれも相手は強いが、良い競馬をしてもらいたいと思う。

 今年の香港国際競走でおおきな注目を集めている人物のひとりが、「マイル」にアルカジを出走させるピーター・チャップルハイアム調教師である。師にとってはほぼ4年振りの香港で、極東の地における忌まわしい過去を精算出来るがどうかを賭けての参戦なのだ。

 ピーター・チャップルハイアム師と言えば、弱冠28歳で開業。翌年、ロドリゴデトリアーノで英愛2000ギニー連覇、ドクターデヴィアスで英国ダービー制覇を果たし、天才調教師と言われた男である。その後も、タートルアイランド、ホワイトマズルなどの一流馬を手掛けた後、誘われるままに30代半ばに香港に移籍したのだが、香港における師の成績は惨憺たるものだった。競馬発祥の地・英国からやってきたダービートレーナーとして、大きな期待を背負って鳴り物入りでの移籍だったのだが、G1はおろか重賞も勝てず、クラス1と呼ばれる一番上のクラスのレースで1勝を挙げるのにすら、3年もの歳月を要したのである。

 英国と香港とでは、言うまでもなく馬を育てる環境に大きな隔たりがある。英国で日常的に利用していた坂路もプールも、香港にはない。気候も、英国に比べて香港は格段に暑く、湿度も高い。馬主の気質も、英国人と香港人では全く異なっている。つまりはそんな香港の環境に、チャップルハイアム師は全く馴染めなかったようで、4シーズンを終わったところで失意の帰国をしたのであった。香港において、ピーター・チャップルハイアムの名は、地に落ちたに等しいものであった。

 英国帰国後のチャップルハイアムが、師にとって2頭目の英国ダービー馬となるオーソライズドを今年手掛けたのをはじめ、再びトップステージで活躍をはじめたことは、皆さまも御存知であろう。香港から英国に戻った時の彼は、文字通りのゼロからのスタートだったわけで、わずかの間に見事に第一線へのカムバックを果たしたチャップルハイアムとは、やはり只者ではなかったのだ。

 そのチャップルハイアム師が香港マイルに送り込むアルカジとは、今年8月にカラで行われたG3フェニックススプリントで重賞初制覇を果たした、スプリンターである。前走はニューマーケットで行われた7FのG2チャレンジSに出て、2着であった。成績だけ見れば、距離1200mの「スプリント」向きの馬なのだが、そこはシャティン競馬場を良く知る師である。「ニューマーケットの7Fをこなした馬にとって、シャティンの1600mはぴったりなはず」と、こちらのレースを選択したのだ。

 ピーター・チャップルハイアム師にとって、4年越しのリベンジがなるかどうかに注目したい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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