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タタソールズ・ディセンバーセール結果報告

  • 2007年12月11日(火) 23時50分
 12月3日から6日までニューマーケットで行われていた、欧州最高のブリーディングストックセール「タタソールズ・ディセンバーセール・牝馬セッション」は、総売り上げが前年比4.9%アップの6950万ギニー、平均価格が前年比19.8%アップの91,205ギニー、中間価格が前年比23.3%ダウンの23.000ギニー、前年29.1%だったバイバックレートが今年は32.7%に上昇と、上向き下向きが入り乱れた指標となった。

 マーケットの中身を解析すると、トップエンドの市場は目茶苦茶に過熱。その一方で、中間以下の価格帯はいたって地味に推移し、見向きもされずにスルーされた馬も多かったため、バイバックレートの上昇につながった。

 すなわち、今季秋までの、2歳市場、1歳市場の傾向とは全く逆。秋以降にアメリカの繁殖市場で見られた傾向が、大西洋を渡って欧州にも引き継がれたわけである。資金力のあるバイヤーが、2歳市場や1歳市場では守っていた沈黙を、ここで一気に打破。予算を惜しまずに良血馬の収集に走った結果、上の方の価格帯が驚く様な活況を見せることになった。

 殊に、3608万ギニー(約87億円)という、1日の売り上げとしてはこれまでの記録を大幅に更新するヨーロピアンレコードを記録した2日目(12月4日)に展開されたトレードは、異次元としか言いようのないものだった。平均価格201,589ギニー(約4,868万円)というのは、セレクトセールでも見られたことの無い数字で、真っ当な経済活動を行っている馬主や生産者には、手の出しづらい市場となった。

 これだけの資金がいったいどこから流れてくるのか、少なくともキャピタルゲイナーやオイルダラーだけで成立するマーケットではなく、種々多様な資金がブラッドストック市場に投入されていることは間違いない。運用されようとしている資産なり準備資金なりがある時、その投下先として競走馬市場が有効に機能する産業構造が出来上がっていることを、心から羨ましく思う。

 最高価格は、初日に上場された5歳牝馬サトワクイーン。今季のG1オペラ賞勝ち馬というバリバリの女傑で、シェイク・モハメドの代理人ジョン・ファーガソン氏が、現役もしくは現役上がりの牝馬に支払われた金額としてはヨーロピアンレコードとなる340万ギニー(約8億2100万円)で購買した。

 シェイク・モハメドはこれ以外にも、昨年のG2チェリーヒントンS勝ち馬サンダーカミーロを320万ギニー、G1ヨークシャーオークス2着馬オーシャンシルクを同じく320万ギニー、今季の欧州チャンピオン・マンデュロの母マンデリヒトを300万ギニーで購入するなど、相も変わらぬ積極的な補強を行った。

 日本人によると見られる購買は、11-12頭だった模様。沸騰しきった市場に手を焼きながらも、少しでも良い馬を効率的にドラフトしようと奔走した結果、水準的には極めて高いレベルの牝馬が日本に渡ることになった。

 中でも、クイーンC勝ち馬イクスキューズの姉で、日本との相性抜群のシングスピールを受胎しているキッシュスターバーン(上場番号1914番)、BCターフ勝ち馬シロッコの姉にあたるショアー(上場番号2090番)、今季の欧州チャンピオン・マンデュロの母マンデリヒトの妹で、期待の若手種牡馬シロッコを受胎中のマンデルーシュ(上場番号2101番)、欧州のトップサイヤー・グリーンデザートを受胎中のブルーオアシス(上場番号2312番)、自身がイタリアとアスコットの準重賞2着馬で、1つ年上の姉にG3ソヴリンS勝ち馬プライドオブネイションがいるハイウェイトゥグローリー(上場番号2669番)などは、日本における馬産に大きく貢献しそうな血脈だけに、日本到着後にどんな種牡馬が配合されてどんな産駒が産まれてくるか、長期的にフォローしたいと思っている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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