99年から続いていたホテル&カジノチェーンの「ルシアン・バリエール」とのスポンサー契約が今年一杯で切れ、動向が注目されていた凱旋門賞だったが、08年からの新規スポンサーに「カタール・レーシング&イクイストリアン・クラブ(QREC)」が決定。凱旋門賞の賞金が一気に倍増し、芝のレースとしては世界最高賞金を懸けて行われることが明らかになった。
中東のカタールは、首都のドーハに1周1600mの芝コースを備えた競馬場があり、生産も行っている国である。現状では、アラブのレースが7、8割を占めているが、今後はサラブレッド競馬の開催も徐々に充実させようとの目論見があり、世界の競馬サークルに広くその名をアピールする目的で、世界に冠たる凱旋門賞ウィークのスポンサーとして名乗りを上げることになったようだ。
凱旋門賞の主催者であるフランスギャロとQRECが結んだのは、08年から12年までの5年契約で、QRECは凱旋門賞だけでなく、アークウィークエンド全体を後援する。その一方で、アークウィークエンドでは08年からアラブ種のレースが複数催され、このうちの1つは「カタール・アラビアン・ワールドC」と称する、アラブ種世界最高賞金レースになる模様だ。
ドバイ同様にカタールでも、王族が生産や競馬に深く関わっており、財政的には潤沢な資金がある。それだけに、契約内容も超リッチなものとなっている。
例えば、07年には200万ユーロだった凱旋門賞の賞金総額が、08年には倍増の400万ユーロとなる。400万ユーロと言えば、現在の為替レートで換算して580万ドルになるから、賞金総額500万ドルのBCクラシック、ドバイデューティーフリー、ドバイシーマクラシックらを抜き去り、賞金総額600万ドルのドバイワールドCに次ぐ、世界第2の高額賞金レースとして行われることになるのだ。芝だけに限れば世界最高賞金だから、凱旋門賞はこれで名実ともに、芝2400m路線の最高峰の地位を手に入れたと言って良さそうだ。
この、「凱旋門賞に新スポンサー決定」の報を複雑な思いで受け止めたのが、英国の競馬関係者である。実は、英国最大のレース・ダービーや、上半期における芝12F路線の総決算キングジョージも、それぞれボーダフォン、デビアスとの契約が切れて、新規スポンサー獲得を模索している最中だったのだ。渉外能力という点で、フランスギャロとの差を歴然と見せつけられ、エプソムやアスコットの関係者は相当にショックを受けているであろう
いずれにしても、一段とスケールアップする08年の凱旋門賞が、今から楽しみである。