2月12日(火曜日)、今年の北米2歳トレーニングセールの幕開けを飾る「OBSフェブラリー・セレクト2歳セール」が、フロリダ州のオカラで開催された。
指標を先に御紹介すると、総売り上げが前年比9.3%アップの1403万ドル、平均価格が前年比17.9%アップの157,640ドル、中間価格が前年比25.0%アップの125,000ドル。昨年29.9%だったバイバックレートが、今年は28.8%だった。ちなみに、平均価格、中間価格ともに、このセールとしては歴代のレコードを更新するものであった。
単刀直入に言えば、びっくりするほどの好景気だったのである。
御承知の如くアメリカは今、一般景気が相当に厳しい状況にあり、相次ぐ利下げをはじめとした景気対策が、政府や金融当局を主導にとられているところだ。そういう経済状況下であるゆえ、今回のセールを前にした市場関係者の予測も、楽観的なものではなかったのである。
ましてや今年のセールは、カタログに掲載された馬が169頭と、80年代半ば以降では最も上場馬が少なかったのだ。そんな中で「総売り上げ増加」という、誰もが予測していなかった好結果がもたらされたのである。
その原因はどこにあるのか。主催者は、今年から上場馬に対するアナボリック・ステロイドの使用が禁止され、セール後のテストでステロイドの陽性反応が出れば、購買を無効にすることが出来るルールが導入されたことを、その一因として挙げている。確かに、上場馬に対する薬物使用を厳しく取り締まることにしたことは、バイヤーに安心感を与えることにはなるが、しかし、だからと言って、それが市場に投資を呼び込む要因になったかと言うと、そこまでの効果があったかどうかは疑問と言わざるをえまい。
購買者のリストを見ると、市場に新たに参入してきたとおぼしき名前も少なくなく、結局は、競馬社会は一般景気とは異なるマネーフローを持っているとしか説明の付かない好結果と言えそうだ。
最高価格は、セールの冒頭に上場された父シルヴァーデピュティに牝馬についた、525,000ドル。実はこの馬、日本の現役馬で、昨年の函館スプリントSで2着となるなど、短距離戦線で活躍しているサープラスシンガーの、2つ年下の妹にあたる馬だ。2月3日に行われた1回めの公開調教で、1Fとしては最速タイとなる10秒フラットをマークし、厩舎村でも評判になっていた1頭だった。
セールで購買したのは、ニュージャージーに本拠地を置く代理人のバズ・チェイス氏だったが、実際の購買者はテリー・フィンリー氏とジョン・ウィリアス氏という二人の馬主で、本馬は両名による共同所有になるとのことだ。
なお、最終的な確認はとれていないが、日本人による購買馬はなかった模様。昨年から益々顕著になった外国産馬買い控え傾向は、ここでも継承された形となった。