昨年12月末の開幕以来、雨天によるコース冠水で通算11日間も開催が中止となっているカリフォルニアのサンタアニタ競馬場が、4月20日の冬春開催終了後にコースの全面的な改修を行うことを決定した。20日にカリフォルニア州競馬委員会が召集した専門会議によって決定されたもので、昨年秋に敷設されたばかりのサンタアニタの「クッショントラック」は、実用わずか半年で撤去されることとなった。
馬の脚元に優しく、従って故障も少なく、メンテナンスのためのコストも安く、なおかつ、全天候型のため気象によって状態が左右されにくいという「良いことずくめ」のため、世界各地で急速に普及。ごく近い将来、ケンタッキーダービーの舞台なるチャーチルダウンズにも導入されるのではないかと言われているのが、人工素材を使った競馬である。
ダート競馬から、人工素材を使った競馬へ。時代の潮流に乗って、州内の主要全競馬場に人工素材の導入に踏み切ったのがカリフォルニアで、「クッショントラック」を敷設したハリウッドパーク,「ポリトラック」を敷設した「デルマー」、「タペタフッティングス」を敷設したゴールデンゲートに続いて、「クッショントラック」を敷設した競馬がサンタアニタでスタートしたのが、昨年10月だった。
初お目見えとなった昨年の秋開催は、つつがなく無事に終了したのだが、昨年暮れからの冬春開催に入ると、大きな問題が発生した。ある程度以上のまとまった雨が降ると、馬場の排水システムが充分に機能せず、馬場が冠水するケースが頻発したのである。もっとも、この時季のカリフォルニアが多雨なのはもともと判っていたことで、馬場設計もこうした気候を想定してなされていたはずだったのだが、実際には機能しなかったのだ。サンタアニタの主催者は様々な応急措置を施しつつ対応してきたが、将来にわたって現状の馬場のまま開催を行うのは不可能との判断が下ったのが、20日に開かれた専門会議だった。
一部の関係者の間では、従来のダート馬場に戻すべきとの声も聞かれていたが、カリフォルニア州競馬委員会は、今後も人工馬場による競馬を継続することを確認。ただし、冬春開催が終了した後のサンタアニタに、どのブランドの素材を敷設するかは、今後専門家による検討を更に重ねた上で、決定されることになった。
競馬場が立地する地域の気象条件を鑑みた上で、構成要素の配合比率を変えなればならないとされる人工馬場。順調にスタートしたように見えるハリウッドパークの「クッショントラック」も、4月下旬にスタートする春夏開催では、従来のものよりはワックスの比率を大幅に増加させ、ゴムや繊維素材の比率も若干増やすことが検討されている。また、昨年夏の開催時に、朝の調教時と気温の高くなる午後の競馬開催時で、馬場の速さが大きく変わるという問題点が指摘されたデルマーも、今年の開催へ向けて、いかなるメンテナンスを行うのがベストかを検討しているところだ。
今年・来年と、史上初めてとなるブリーダーズCの2年連続開催が決定しているサンタアニタだけに、気候にあった素材の開発が急がれるところである。