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力強いストライドで素晴らしい能力がみえた/阪神JF

  • 2017年12月11日(月) 18時00分


◆石橋脩騎手にクラシック制覇のチャンスが回ってきた

 来季に向けた世代最初のGIを制したのは、今年の新種牡馬オルフェーヴル産駒のラッキーライラックだった。

 年が変わって3歳になると、まだ新星が次つぎに出現する。また、敗戦を経験した馬が大きく変わりながら、勢力図はどんどん塗り替わるはずだが、2戦2勝の無敗馬が4頭いて、その4頭が上位4番人気までを占めた結果は、高い支持を受けた4頭が「1着(2番人気)、2着(3番人気)、3着(4番人気)、9着(1番人気)」だった。

 人気の中心ロックディスタウン(父オルフェーヴル)こそ崩れたが、評価された4頭のうちの3頭がその支持通りに、かつ、明確に標準以上の好記録「1分34秒3」で上位を独占したこの世代は、わかりやすい勢力図のベースが成立したと考えられる。

 けっして数字(人気という評価)にこだわるわけではないが、高い能力をもつ馬が結果を出しやすくなった現在の阪神コースになって以降、今回とほとんど同じように、「上位3着までを、上位4番人気以内の馬」が独占したケースが3回だけある。ウオッカの勝った2006年、ブエナビスタの勝った2008年、そしてソウルスターリングの勝った昨2016年である。

 正攻法の好位〜中位差しで、期待通りに抜け出し1分34秒3で快勝したラッキーライラック(父オルフェーヴル)は、(かなり)強気になっていい。流れが落ち着いたため前半800m「47秒7」は新コースになって12年、史上10番目の緩いペースだったが、1分34秒3の勝ちタイムは史上6位であり、ラッキーライラックの上がり「33秒7」は、勝ち馬12頭の中で史上トップである。素晴らしい能力がみえている。

重賞レース回顧

世代最初のGIを制したのは新種牡馬オルフェーヴル産駒のラッキーライラック(c)netkeiba.com


 石橋脩騎手(33)は、アルテミスSの快勝で高い能力に自信があった。一番スムーズに7〜8番手追走で流れに乗ったあと、少しかかり気味にロックディスタウンが外から動いて行ったが、それを横目に微動だにせずやり過ごした。直線は大事に外に回って上がり33秒7-11秒5。スマートに映る美しい体型のラッキーライラックだが、ストライドは力強い。陣営のクラシック展望は一段と輝きを増したことだろう。2つ目のG1を手にした石橋脩騎手に、いよいよクラシック制覇のチャンスが回ってきた。

 今年、これまでの自己年間勝利数を大幅に塗り替えているのが、10日終了現在「63勝」にまで伸ばした石橋脩騎手と、もう92勝に達した関西の和田竜二騎手(40)であることは知られる。ムチの使用制限(規則変更)により、騎乗スタイルが変化し勝ちクラがどんどん増えているのである。騎乗流儀に関することに外野は余計なことはいえないが、新人当時から「馬に負担をかけることなく、巧みに流れに乗れる」ことを多くの調教師が絶賛していたのが石橋脩騎手。ラッキーライラックでもまだムチが多いように感じられたから、渾身の人馬の闘志を呼び起こす、ビッグレースの勝利目前はともかく、さらにムチの回数が減るなら、依頼は増え、もっと勝てるレースが増えると思える。なぜなら、ムチの使用回数が制限されたら、2人は一気に20勝も、30勝も伸びたのだから…。

 ラッキーライラックは、その父オルフェーヴルは3冠馬。輸入種牡馬アイルハヴアナザー(米2冠馬)などの父として知られる母の父フラワーアレイは、真夏のダービー=トラヴァーズS勝ち馬。母方はステラマドリッド一族であると同時に、ハーツクライを送って評価の高まった牝系である。これで3戦3勝(重賞2勝)。牝馬でレースセンスが良すぎるから、完成度が高いなどと評されるが、2400mくらい平気な、クラシックでこその成長力がこの馬の真価と思われる。

 リリーノーブル(父ルーラーシップ)は、中1週のちょっときついローテーションだったが、馬なりで絶好の動きを示して評価急上昇。2連勝時と同じようにスムーズに流れに乗り、楽な脚いろで抜け出した。ルーラーシップ産駒は2歳戦でも好走するが、スピードレースだとちょっと切れ味に乏しい死角があり、初年度産駒の菊花賞馬キセキが示したように、マイルよりは距離が延びた方がいいところがある。だが、リリーノーブルのファミリーは祖母バプティスタの産駒も、3代母ビーバップ産駒もスピード豊かなマイラー系に近いので、牝馬リリーノーブルの場合は1600mの上がりの速いレースも大丈夫なのだろう。今回の日程はきつかったが、これで来季が楽になった。

 3着マウレア(父ディープインパクト)は、2013年の桜花賞馬アユサンの全妹らしいセンスが光った。490キロ近かったアユサンに比べると、450キロ前後の馬体は小柄ということになるが、まだ筋肉がつききっていない幼い面があるだけで、今年の人気上位馬には480キロ前後の馬が多かったが、レースになるとまったく見劣る面はなかった。

 ラッキーライラックと同じ位置で進んだが、直線、ちょっと狭いスペースに入りかけてしまったかもしれない。こういう惜しい3着はことクラシック路線の場合、賞金加算に結びつかないので、かなり残念。日程の組み方が難しくなる。

 人気のロックディスタウンは、サッと折り合えば別に外枠は不利ではなく(海外育ちの騎手は外枠を大きな不利と考えることが多いが…)、もまれずに好きな位置を確保できる場合もある。しかし、3カ月ぶりで、遠征競馬。レース前から少しカリカリしていた。前半息を入れたいところで行きたがってしまった。また、1800m→1800mと出発して、1600mのビッグレースに挑戦の手法はプラスを生むケースもあれば、逆の場合もある。

 ロックディスタウンがスピード色の濃いタイプなら(最初にスタミナを確認できるから)いいが、逆に中距離型の色彩が濃いと、今回はマイルにしては珍しいスローだったのに、それでも札幌2歳Sより前半1000m通過地点で2秒0前後も速いペースを要求されたことになった。ロックディスタウンは、人馬ともにリズムが崩れたのかもしれない。巻き返してくること必至の大変な素質馬だが、次にどういう距離のレースに出走するのか難しい。桜花賞を目ざすなら、当然、1600m戦となるだろうが…。ラッキーライラックにも該当するが、オルフェーヴル産駒は、崩れたあとが難しいかもしれないのである。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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