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【ヴィクトリアM】伏兵のテンハッピーローズが快走し大波乱 鞍上ともにGl初制覇

  • 2024年05月13日(月) 18時00分

人気を集めた2頭の巻き返しに期待


重賞レース回顧

ヴィクトリアMを制したテンハッピーローズ(撮影:下野雄規)


 波乱の珍しくない牝馬限定のGlとはいえ、伏兵14番人気のテンハッピーローズ(父エピファネイア)が快走して大波乱。1番人気のマスクトディーヴァ(父ルーラーシップ)も、2番人気のナミュール(父ハービンジャー)も連対から外れる結果となり、馬単30万3260円は、2008年桜花賞の33万4440円(レジネッタ、エフティマイア)に次ぐJRAのGlでは史上2位の高額配当となり、3連単もあとちょっとで100万円の大台に達するところだった。

 先週のNHKマイルCのアスコリピチェーノと同じで、1番人気のマスクトディーヴァに直線で大きなロス(不利)があったこと。また、2番人気のナミュールが出遅れるアクシデントがあったためで、多頭数の激戦ゆえの避けられない波乱ではあるが、ここにきて競走除外、中止、レースでの制裁が多発するなど、全体に危ない流れが関係していることも否定できない。

 今回の制裁はマスクトディーヴァのJ.モレイラ騎手の「十分な間隔がないのに先行馬を追い抜こうとしたこと」に対する戒告だった。制裁に相当するのは、たしかにモレイラ騎手のマスクトディーヴァではあるが、周囲の騎手もまったく関係ないとは言い切れず(人気馬の進路に対するマークが厳しくなるのは当たり前のことだが)、注目のビッグレースとすると、ちょっと後味の良くないレース直後ではあった。

 そのマスクトディーヴァだが、4コーナー手前からの反応が良くなく、東京新聞杯と同じで改めて東京コースに課題が残ることを示してしまったが、4歳馬ながらまだ今回が8戦目。大きなロスがあった後の加速など、全能力を発揮しての敗戦ではない。やがてまた東京コースのビッグレースに出走するはずなので、レース運びの進展を期待したい。

 一方、ナミュールの出遅れは、ゲート内で落ち着かなかった馬がいたため、スタートの瞬間のリズムが狂ってしまった印象がある。前後半「45秒4-46秒4」=1分31秒8の前半から厳しい高速レース。追い込み馬に不利のないバランスのように映るが、自身も楽に追走できたペースではなく、切れ味がなし崩しになってしまう出負けだった。ぜひ、巻き返したい。

 2強が崩れたとはいえ、テンハッピーローズは恵まれて快勝したわけではまったくない。ここまで1600mは[0-2-1-4]。一度も勝ったことはなく、最高時計は1分33秒4にとどまった。人気順と同じメンバー中14番目である。それを一気に1秒6も短縮して1分31秒8で勝ったからすごい。津村明秀騎手とのコンビは今回が6回目で通算[2-0-1-3]。左回りの東京巧者であるということは1400mに乗って分かっていた。

 後方寄りの中位の外につけて一度も馬群にもまれることなくスムーズにコーナーをクリアして、直線も外へ回ってそこから一直線。テンハッピーローズの真価を100パーセント活かし切っての勝利だった。デビュー21年目。ついに初Gl制覇に成功したのは、テンハッピーローズのデキの良さと、追い出してからの切れを確信していたからできたこと。もう、ローカル重賞の津村騎手ではない。

 2着したのも6歳のフィアスプライド(父ディープインパクト)。ルメール騎手が高速の流れに乗って、自身の中身は「57秒1-34秒9」=1分32秒0。改めてディープインパクト産駒の真価を見せつける中身の濃いレースだった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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