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ジャンタルマンタルの父パレスマリス 活躍馬を多く出す理由は“日本の芝への適性”にあり

  • 2024年05月06日(月) 18時00分

血統で振り返るNHKマイルC


【Pick Up】ジャンタルマンタル:1着

 父パレスマリスは、アメリカにおける8年間の供用で、BCジュベナイルターフ(米G1・芝8ハロン)を勝ったストラクター(レックススタッドで供用中)など4頭の北米重賞勝ち馬を出しました。しかし、全体的には低調な成績で、最終年の2023年の種付け料は7,500ドル(当時の為替レートで約100万円)。供用初年度が20,000ドルだったので、その半額以下まで落ち込んでいました。

 一方、日本ではわずか8頭の外国産馬・持込馬から5頭が勝ち上がり、うち2頭が重賞を勝っています。この驚異的なアベレージを偶然であると疑うことも可能ですが、日本の芝に適性があることは、アメリカにおける代表産駒が芝馬であることを考えても、まず間違いないところでしょう。

 現役時代はベルモントS(米G1・ダ12ハロン)、メトロポリタンH(米G1・ダ8ハロン)を制覇。その半弟にわが国で重賞を勝ったジャスティンパレス(天皇賞(春))とアイアンバローズ(ステイヤーズS)がいます。父の資質のなかに日本の芝への潜在的な適性が見て取れます。

 今年から日高町のダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスに移籍しました。昨年暮れにジャンタルマンタルが朝日杯FSを、今年1月にノーブルロジャーがシンザン記念を勝った効果で人気を博し、種付けを希望してもなかなか叶わないという状況です。おそらく繁殖牝馬の質も高いので、3年後にデビューする産駒はハイレベルでしょう。

 母インディアマントゥアナはレッドカーペットH(米G3・芝11ハロン)の勝ち馬。息子のジャンタルマンタルはその資質を受け継いで芝向きとなりました。朝日杯FSとNHKマイルCを双方制した馬は、グランプリボス(2011年)、アドマイヤマーズ(2019年)に次いで3頭目。操作性が高く、精神的な強さがあり、フィジカル面も抜群。この先いくつタイトルを上積みできるか楽しみです。

血統で振り返る京都新聞杯


【Pick Up】ジューンテイク:1着

「キズナ×シンボリクリスエス」は、ソングライン(安田記念2回、ヴィクトリアマイル)、アカイイト(エリザベス女王杯)といった活躍馬が出ており、これで3頭目の重賞勝ち馬となります。連対率27.5%、1走あたりの賞金額717万円は、キズナ産駒全体の19.5%、221万円を大きく上回ります。ニックスといえるでしょう。

 本馬は母の父がシンボリクリスエスで、なおかつサンデーのクロスを持つキズナ産駒なので、ソングラインと配合構成が似ています。

 3代母ツィンクルブライドは桜花賞2着馬。2代母ツィンクルヴェールはペールギュント(デイリー杯2歳S、シンザン記念)の全姉で、その孫(つまり本馬のいとこ)に南関東牝馬二冠を制したトーセンガーネット(浦和桜花賞、東京プリンセス賞)がいます。

 キズナ産駒の京都新聞杯勝ち馬、なおかつサンデー3×3といえば、アスクワイルドモアを思い出します。同馬は続く日本ダービーで12着と敗れました。本馬の「母の父シンボリクリスエス」は、レイデオロ、アドミラブル、オーソリティ、スキルヴィングなど、東京芝2400mの重賞で実績を残しています。適性面は申し分ないでしょう。

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【イルーシヴクオリティ】

 現役時代はアメリカで20戦9勝。G1では4着が最高着順でしたが、ポーカーH(米G3・芝8ハロン)を6馬身差で圧勝した際に、1分31秒63という芝8ハロンの世界レコード(当時)を樹立しました。

 ミスタープロスペクターの後継種牡馬のなかで屈指の良血馬であるゴーンウェストを父に持ち、母方にはノーザンダンサー、グロースターク、サーアイヴァーという名血を抱え、さらにはセクレタリアト≒サーゲイロード≒ナタシュカ3×4・3という優れた配合構成が相まって、種牡馬として大成功を収めました。2004年には北米チャンピオンサイアーの座についています。

 アメリカのダート競馬だけでなく、ヨーロッパ、オーストラリア、ブラジルの芝競馬でも自身のスピードを伝え、スマーティジョーンズ(ケンタッキーダービー、プリークネスS)、レイヴンズパス(BCクラシック、クイーンエリザベス2世S)、クオリティロード(米G1を4勝)、イルーシヴケイト(ロートシルト賞2回など欧州G1を4勝)など多くの活躍馬を出しました。母の父としてもノーネイネヴァー(モルニー賞)、ショウナンアデラ(阪神JF)など、優れた実績を挙げています。

 最良の後継種牡馬であるクオリティロードは、生涯に3つのトラックレコードを樹立し、とくに2010年のドンH(米G1・ダ9ハロン)で記録した1分47秒49は、べイヤー指数で「121」という破格の数値でした。

 日本ではレイヴンズパスの仔タワーオブロンドンがスプリンターズSを勝って種牡馬入りし、初年度産駒が今年の新馬戦でデビューする予定です。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「ホッカイドウ競馬で新馬戦が始まりました。新種牡馬の勝ち上がりはありましたか?」

 現時点で6レース行われています。勝ち馬とその父は以下のとおり。

4/17 1000m ゲクウ(父スズカコーズウェイ)
4/24 1100m ベラジオゼロ(父ホッコータルマエ)
4/25 1000m クインタ(父ディスクリートキャット)
5/1  1000m ウィルオレオール(父レッドベルジュール)
5/1  1000m ファストワン(父エスポワールシチー)
5/2  1100m エイシンキャプテン(父カレンブラックヒル)

 このうち、5月1日に勝ち上がったウィルオレオールが新種牡馬レッドベルジュール産駒です。

 レッドベルジュールは現役時代、デイリー杯2歳Sを含めて3戦2勝。「ディープインパクト×アンブライドルズソング」という組み合わせで、母方の奥にストームキャットを持つ配合は、コントレイルとまったく同じです。ウィルオレオールは父の初年度産駒17頭のうちの1頭で、青森県の風ノ丘ファームの生産馬です。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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