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欧米で新種牡馬“ノーネイネヴァー”が抜群の出足

  • 2018年05月23日(水) 12時00分


◆母ムラヴカの牡馬はPOGでも要注目!

 今週末の日本ダービーが終わり、6月に入ると日本でも2歳戦がスタートするが、ひと足早く2歳戦がスタートしている欧州で、抜群の出足を見せている新種牡馬がノーネイネヴァーである。

 20日(日曜日)に愛国のナース競馬場で行われたLRアイリッシュEBFフィリーズスプリントS(芝5F)を産駒のサーヴァラン(牝2)が制し、早くもステークス勝ち馬を送り出したノーネイネヴァーは、翌21日(月曜日)に英国のカーライル競馬場で行われた未勝利戦(芝5F)で産駒のコスミックロウ(牡2)が初勝利を挙げ、父にとって5頭目の勝ち馬となった。

 この5頭の中には、5月3日に米国のベルモントパークで行われたメイドン(ダート5F)でデビュー勝ちを果たしたメイネヴァーノー(牝2)が含まれており、期待通りの多才さを発揮している。そして、仕上がり早の仔を出すと見られていたノーネイネヴァーではあるが、開幕から2か月も経っていないこの時期に、既に5頭もの2歳勝ち馬を送り出すというのは、期待以上のハイペースと言えそうだ。

 ノーネイネヴァーは、先週のこのコラムで『2歳セールにおいて特需が起きている』とご紹介した、スキャットダディの直仔である。亡き父の有力な後継馬と目されているからこそ、父のように芝・ダートを問わず活躍馬を出すことを期待されていた。すなわち、既にして欧米両大陸で勝ち馬を出したことは、ノーネイネヴァーにとっておおいに意味あることなのだ。ちなみに、LRアイリッシュEBFフィリーズスプリントSの3着馬スキッタースキャッター(牝2)と4着馬ソーパーフェクト(牝2)はいずれも、ノーネイネヴァーの父スキャットダディの最後の世代となる2頭だった。

 ノーネイネヴァーは米国産馬。母キャッツアイウィットネスは、2歳10月にフージエールパーク競馬場のメイドン(d5.5F)を制し、デビュー6戦目に初勝利を挙げたが、その後は勝つことができず、4歳春まで走って12戦1勝の成績を残して引退し、繁殖入りしている。ノーネイネヴァーはその2番仔だ。母の半兄にG3アクアクH(d9F)勝ち馬キャッツキャリアがいて、祖母コミカルキャットの兄弟にも2頭の重賞勝ち馬がいるから、超一級とは言えないまでも、そこそこの血統背景を持っているキャッツアイウィットネスの2番仔は、当歳秋にキーンランドの11月市場に上場され、17万ドル(当時のレートで約1360万円)というまずまずの価格で購買されている。

 ところが、その10か月後、キーンランド9月1歳市場に上場された同馬は、9万5千ドル(当時のレートで約760万円)という、当歳時の半値近くまで価格を落として転売されている。ピンフックだったとした大失敗となったわけだが、おそらくは、1歳時には馬の形が崩れていたのであろう。アイスワインステーブルと、クールモアのポール・シャナハン氏の夫人による共有馬となって、ウェスリー・ワード厩舎に入厩した同馬には、ノーネイネヴァーという馬名が与えられ、2歳4月に早くもデビュー。キーンランドのメイドン(AW4.5F)を2馬身差で制してデビュー勝ちを飾ると、次走は英国のロイヤルアスコットに遠征し、G2ノーフォークS(芝5F)に参戦。アスコットにおける5Fコースの2歳馬によるトラックレコードを樹立して優勝し、重賞制覇を果たした。

 この段階で、J・マグナー、M・テイバー、D・スミスという、クールモアグループの「ザ・シンジケート」がノーネイネヴァーの権利の半ばを買収。マグナー夫人の服色を背に出走したドーヴィルのG1モルニー賞(芝1200m)でも勝利を収め、3連勝でG1制覇を果たした同馬は、この年の仏国2歳牡馬チャンピオンに選出されている。

 ここまでお読みいただいておわかりのように、仕上がり早でスピードがあったのがノーネイネヴァーで、だからこそ産駒も、2歳の早い時期から活躍馬が出ることが期待されていたのだった。3歳時もロイヤルアスコット参戦が予定されていたが、故障でかなわず、この年も3戦したのみで、G3ウッドフォードS(芝5.5F)で勝利した他、G1BCターフスプリント(芝6.5F)とG2スウェイルS(d7f)で2着となって、通算6戦4勝、2着2回の成績で現役生活を終えている。2015年に、2万ユーロ(当時のレートで約270万円)という種付け料が設定されて愛国のクールモアスタッドで種牡馬入りし、2016年生まれの初年度産駒は89頭が血統登録されている。

 昨年欧州で開催された1歳市場には、このうち64頭が上場され、58頭が購買されて、90%を越える高い売却率をマーク。平均価格もギニー換算で10万8385ギニー(約1673万円)と、種付料の6倍以上を記録したから、マーケットにおける産駒の評価は上々だったと言えよう。

 昨年の1歳市場で購買された58頭のノーネイネヴァー産駒のうち、最も高額の85万ギニー(当時のレートで約1億1780万円)で購買された、母ムラヴカの牡馬は、実は日本人による購買で、昨年12月8日に日本に到着している。同馬は、2014年のG1モルニー賞勝ち馬ザワウシグナルの半弟で、つまりは牝系からもスピードがあって仕上り早という形質を受けついでいる公算の大きな個体だ。

 欧州でロケットダッシュを決めたノーネイネヴァーの産駒で、G1勝ち馬の弟という母ムラヴカの牡馬は、まだ間に合う方には、POG指名馬の一角に加えることを、強くお勧めしたい1頭と言えよう。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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