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みんなの投稿コラム

語り継ぐこと

  • 2014年03月20日(木) 00時05分
  • 8

私が競馬を始めたときには、運よく競馬経験が豊富な上司に恵まれた。金曜日には土日のメインレースの展望を仕事後に延々と話し合った。
彼らは馬券で一攫千金というよりも、競馬を観戦してより感情を込めたいから馬券を買っているように私には感じた。

目をつぶれば、あのときの情景がすぐに出てくる。競馬初心者の私に彼らは本当に温かった。私が突拍子のない予想をいっても、「なるほどな〜」といってくれた。彼らの馬券談義も面白かったが、自身がリアルタイムで体験した競馬談義も面白かった。
「カブラヤオーのダービーが一番強い」と力説する者もいれば、「芦毛っていったら、俺のなかではオグリキャップよりタマモクロス」と比較していう者もいた。
みないい年をしたおじさんたちだったから、それぞれがあげた馬名をウンウンといいながら否定をせずに聞いていた。
私はひとりの帰り道で、こんな週末がいつまでも続けばいいのにな、と思っていた。しかし、会社員なので転勤、退職などで徐々に競馬談義するメンバーが減り楽しい時間はいつしかなくなった。私も日々の業務に追われて以前よりも人前で競馬に関して話す時間、余裕もなくなった。

そんな日々を送っていた私に疎遠になっていた中学時代の友人と偶然再会して話していると、つい最近競馬に興味を持ち始めているといってきた。
私は彼に、「競馬ならいくらか教えることができると思う」と伝えると、「じゃあ、今度の休みでも教えてくれ」といい携帯のアドレスを渡された。
後日、待ち合わせの喫茶店で私は彼に競馬の基礎知識を伝えた。すると彼は「芦毛で有名なオグリキャップ以外にも、芦毛で強い馬っているの?競馬初心者の俺はオグリキャップしか知らないから・・・・・・」と訊いてきた。
「芦毛っていったら、ぼくのなかではオグリキャップよりもクロフネの印象が強いね」
私が自分で何気なくいった言葉に懐かしい響きがして、ハッとした。そうか、次は私の番なんだ。「ところで芦毛なのに、なんでクロフネっていう名前がついたかっていうと……」

競馬という業界が縮小傾向にあり、一般のファンでしかない私に何ができるかわからなかった。しかし、自分の不器用な言葉でもいいから、ほんの少しでも競馬の魅力が誰かに伝わればいいと思う。語り継ぐこと、それは特別なことではなくて案外簡単なことなのかもしれない。

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